静岡県と山梨県 ライバル同士が手を組む展開/地銀の再編 | 上下左右

上下左右

台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

静岡県と山梨県と言えば富士山を巡る対立関係で有名ですが、ソニー生命保険の「47都道府県別生活意識調査」(2019年12月)によると、山梨県民の33%が静岡県をライバルとみなし、静岡県民はさらに多い38%が山梨県をライバルと考えているそうです。
私も2年前は仕事でよく山梨へ行きましたが、同僚が現地の方の前で『富士山の裏』と言ってしまい、凄い目で睨まれていました。なお富士山の山頂付近は県境が決められておらず、どちらも絶対に譲れないものがあるんだろうなと思う次第です。

そんなライバル関係にある両県ですが、静岡県内最大の地銀である静岡銀行山梨県内唯一の地銀である山梨中央銀行が業務提携を発表しました。
両銀行は来年度に予定されている中部横断自動車道の全面開通を見すえ、2019年7月からNEXCO中日本を加えた3社で地方創生を目的に協業に取り組んでおり、この度締結された包括的業務提携「静岡・山梨アライアンス」はその一環と言えるでしょう。

また菅総理が「地銀は多すぎるのではないか」と発言したことから地銀再編に注目が集まっていますが、両銀行は今回の業務提携は菅政権や監督官庁の指導によるものではないと発表しています。実際に菅政権発足からの期間を考えるとあまりに早すぎる動きですので、この発表自体はそのとおりなのでしょう。
しかし菅総理の発言の背景には経営に苦しむ地銀の拡大があり、今回業務提携を発表した静岡銀行も「地方銀行が置かれている経営環境を踏まえると、各銀行が創意・工夫しながら、さらに新たな事業領域の拡大といったものをしていかなければならない。」と地銀業界が順調ではないことを理由に挙げていますので、根底は共通しています。
日本全体の地銀の状況は、連結純利益では2020年3月期で4期連続の減益で、本業の預金を集めて融資を行うことで得られる業務純益に至っては、4割の地銀が赤字に陥っています
地銀困窮の主な要因として政策金利の低下による利ざやの減少が挙げられますが、コロナショックにより政策金利が引き上げられるのは更に先伸ばしになるのは確実であり、例えば第一生命が企業年金(確定給付年金)の金利を1.25%から0.25%へと一気に引き下げることを発表するなど、地銀に限らず金融機関は対処に迫られています。

金融機関の体力はほぼ経営規模とイコールですので、小さな地銀はますます経営が苦しくなり、生き残りをかけた方策を迫られることになります。そして地銀の再編もこれまで以上に進んでいくことになるでしょう。