令和2年6月の実質賃金は▲1.9%(速報値)/家計収入は+15.6% | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

本日、6月の毎月勤労統計調査の結果が公表されました。本記事も先月の過去記事と合わせてご覧いただければと思います。
なお本日は同じく6月の家計調査の発表もありましたので、合わせて分析したいと思います。

6月は何と言っても多くの企業のボーナス月ですのでコロナショックにより相当程度賃金が下落するかと予想していましたが、思いの外影響は小さかったようです。
また労働者1人あたりの給与は3ヶ月連続で減少していますが、勤労世帯(2人以上の家計)の収入は特別給付金の影響で+15.6%と、ボーナス月で分母が大きくなるにも関わらず非常に大きな増加率となっています。

<毎月勤労統計調査の概要>
常用雇用者:前年同月比+0.6%
現金給与総額(名目賃金):同▲1.7%
消費者物価指数:同+0.1%
実質賃金:同▲1.9%
との結果です。

<雇用者数>
4.5月と同様、総務省の労働力調査では労働者は前年比で大きくしていましたが、厚生労働省の毎月勤労統計調査では常用雇用者は増加しており、非常用雇用者=不定期労働者がそれだけ減少したことが伺える内容になっています。とは言え一般労働者(≒正規雇用・フルタイム労働者)は大きく増加しており、正規雇用のニーズの根強さは伺えます。

<一般労働者の給与>
・所定内給与:+0.6%
・所定外給与(≒残業代):▲24.6%
・特別に支払われた給与(≒ボーナス):▲2.4%
先月同様に残業代が大きく減少し、いわゆる夏のボーナスも減少した結果、給与が減少しました。6月は緊急事態宣言下にあった前月と違ってそれなりに仕事量もあったはずですが、1人あたりの所定内労働時間が前月の▲7.6%から▲2.5%へ増加しており、また休業者の大幅減=職場復帰がありましたので、残業に頼らずとも必要労働力はカバーできたものと思われます。


ボーナスについても1ヶ月前には大手で▲6%という報道がありましたが、結局は▲2.17%で収まったようです。もっとも、コロナショックが本格的に影響してくるのは冬のボーナスかと思われますので、12月は大幅減を覚悟する必要があるでしょう。

<パートタイム労働者の給与>
固定給ではなく時間給で働いている方が多いと思われるパートタイム労働者ですが、総労働時間が▲13.4%も減少した前月と違い、今月の総労働時間は▲6.3%にとどまりました。なお労働時間が減少した一方で支給総額は+0.6%と僅かながら増加しており、時間給はコロナ禍においても下がっていないことが分かります。有効求人倍率は下がっていますが、賃金の低下にはそうそう繋がらないものと見られます。

<職種の分析>
運輸・郵便業  :▲10.8%
複合サービス事業:▲8.3%
飲食サービス業等:▲6.6%
製造業     :▲6.1%

給与低下の職種ワースト3は前月と変わりません(飲食サービス業等が1位から3位になってはいます)が、製造業が前月の▲4.5%から▲6.1%と悪化しています。製造業は就業者が800万人超で日本全体に及ぼす影響が大きく、また7月以降は非正規労働者が大量に雇い止めされる懸念もありますので、特に注視していく必要があります。

<勤労世帯家計(2人以上)の収入>
実収入  :+15.6%(6ヶ月連続の増加)
世帯主収入:▲2.7%(6ヶ月ぶりの減少
配偶者収入:+4.2%(9ヶ月連続の増加
特別収入 :1824.4%
との結果です。世帯主の収入は今年の1月から5月まで増加を続けていましたが、6月はボーナスの減少が響きマイナスとなりました。そして今月の特筆すべきは言うまでもなく、1人あたりの10万円の特別給付金による特別収入の増加です。特別収入は何と前年の約19倍、金額にして+14.7万円の増加となっており、家計収入全体でも世帯主のボーナスの減少など全て吹き飛ばして前年比+15.6%もの増加となりました。なお勤労世帯の平均人数は3.31人なので7月も同程度の増加が見込まれます。

<勤労世帯家計の支出>
6月の家計収入は前年比+15.6%の増加となりましたが、支出は▲1.2%と前年比マイナスになりました。前月の消費が▲16.2%だったので大幅回復ではありますが、コロナ禍においては旅行や外食、レジャー関連支出が制限されるため、特別給付金も前年比プラスに引き上げるほどの効力は無かったようです。
特別給付金は困窮している産業についてはほとんど支援にならず、巣籠もり需要で支援がなくとも消費が活発になる産業にばかり資金が流れ、コロナショックによる産業格差が広がるばかりの結果になりそうです。
私はブログの再開時から今回のコロナショックに対する経済面の対策を分類すると三種類の対策が必要になると説いてきました。
①収入が激減した困窮者に対する生活支援
②売上が激減した業者(生産者)に対する支援
③冷えきった日本経済の活性化
今回の特別給付金は少なくとも②には全く役に立っておらず、勤労世帯の収入も特に減少していないことから①の困窮者以外の世帯が主な受取人になっていることが判明しました。③については一定の効果があったかもしれませんが、結局一律給付金に予算を割かれて①の困窮者や②への支援が不十分になっているのではないかと思います。
第二次補正予算の予備費から二度目の特別給付金を期待する声があります。一度目は迅速性を重視して一律給付もやむを得ない面があったかもしれませんが、次があるとすれば今度こそ困窮者への支援を中心にした内容にするべきです。
7月から足元にかけて感染者が拡大しており、愛知県では県独自の非常事態宣言が発令されました。GoToキャンペーンも第2波の影響で低調になることが予想されます。本当に支援が必要な人々に手を差しのべられるよう、政府は世論に流されない決断をしてほしいと思います。