コロナショック/正規雇用が前年比+63万人だった先月から一気に前年比マイナスに転じる | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

コロナショックによる雇用への影響はやはりかなり深刻なものになりました。
本日発表の労働力調査(総務省)によると2020年5月は失業率は前年比0.5%(前月比0.3%)、就業者数は前年比▲76万人と先月の▲80万人に引き続き大幅悪化となりました。
前月の就業者が前年比大幅減となっているので今月の前年比も前月と同じ傾向になるのはある意味当然ではあるのですが、正規雇用は前年比▲1万人と前月の+63万人と全く異なる傾向を示しました。単純に言えば、先月まで同一労働同一賃金の義務化の影響で増え続けていた正規雇用が、わずか1ヶ月で消え去ってしまったということになります。

今月の詳細を書いていきますが、今月も先月の過去記事[コロナショック/就業者▲80万人]と合わせてご覧いただければ変化がより分かりやすくなるかと思います。

◯就業者の業態内訳
就業者全体では▲76万人ですが、その内訳は下記のとおりです。(いずれも前年比
自営業主・家族従業員:▲2万人
正規雇用:▲1万人
非正規雇用:▲61万人
・その他(役員等):▲12万人

先月は非正規雇用の減少が目立ちました(▲97万人)が、先述のとおり正規雇用にも影響が現れ始めました。逆に自営業主・家族従業員は概ね前年同水準まで回復しており、前月比では+33万人と大幅に増加しています。5月はまだ緊急事態宣言が全国で発令されていましたので、4月から自営業者が大きく増えるような要素はほぼありません。恐らくですが、失職した労働者が家業を手伝う形で『家族従業員』にカウントされた結果、前月比大幅増となったものと思われます。今月の完全失業率は2.9%ですが、実質的には3%の大台を超えたと見るべきでしょう。

◯業種の内訳
大きな減少があったのは下記の業種です。
宿泊・飲食業:▲38万人(前月比+3万人)
卸・小売業:▲29万人(前月比▲8万人)
生活関連サービス・娯楽業:▲29万人(前月比▲1万人)
製造業:▲27万人(前月比+1万人)
前月に引き続き、宿泊・飲食業の減少が凄まじいことになっています。他にも生活関連サービス・娯楽業の減少が著しく、減少率では宿泊・飲食業の前年比▲9.2%を上回る▲11.5%減少となりました。
また、製造業が先月の前年比▲27万人とこちらも大きく減少していますが、前月比だと+1万人と一旦持ち直した感があります。しかし製造業は過去記事[企業の人手不足感が急速に解消/過剰感が急増]で書いたとおり人手過剰感の強い業種であり、世界経済もまだまだ回復にほど遠いことから輸出の増加も当面見込めませんので、当面は減少傾向が続くでしょう。特に7月以降には4~6月の期間労働者の雇い止めが想定され、大量の失業者の発生が危惧されます。

◯失業者の内訳
<前年同月比>
・完全失業者:+33万人(+20%)
・自発的離職者:+5万人(+3%)
非自発的離職者:+15万人(+38%)
収入を得る必要が生じたための求職者:+11万人(+59%)
<前月比>
・自発的離職者:+2万人(+3%)
非自発的離職者:+5万人(+10%)
・収入を得る必要が生じたための求職者:+3万人(+11%)

今月は先月・先々月と異なり自発的離職者が増加しました。詳しくは後述しますが、先月休業者が350万人も増加し、逆に今月はほぼ半分にあたる170万人も減少したことを考慮すると、休業状態で収入が減少した労働者が退職して新たな職を探し始めたと考えるべきでしょう

◯休業者の推移
2020年1月:194万人
2020年2月:196万人
2020年3月:249万人
2020年4月:597万人
2020年5月:423万人
<正規雇用>
2020年1月:82万人
2020年2月:86万人
2020年3月:89万人
2020年4月:193万人
2020年5月:126万人
<非正規雇用>
2020年1月:67万人
2020年2月:70万人
2020年3月:118万人
2020年4月:300万人
2020年5月:209万人

失業予備軍とも言える非正規雇用の休業者は前月比▲91万人も減少しました。非正規雇用自体も前月比+26万人と増加していますので、実際に労働している非正規雇用者は合計で前月比約+120万人増加したことになります。緊急事態宣言が発令されている中で非正規労働者がこれだけ増加したのは意外でしたが、過去記事[休業中の人員を一時的な人手不足業界へ融通]にも書いたとおり人手不足業界への移行が進んだのかもしれません。

6月に入って緊急事態宣言が解除され、人出も多くなりました。日常が戻りつつあると感じていたのですが、その一方で今日は43日ぶりに日本国内の新規感染者が100名を超え、再び増加に転じる気配を感じます。
恐らく6月の雇用統計は5月よりも改善されるでしょうが、7月は製造業の非正規雇用者の雇い止めも予測されますので予断を許さない状況はまだまだ続きます。仮に再び緊急事態宣言が発令されるような事態になれば、一気に悪化してもおかしくありません。
気を緩めずに日々を過ごしましょう。