最低賃金引き上げ幅縮小へ | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

最低賃金引き上げの目安を決める厚生労働省の中央最低賃金審議会は6月26日に2020年度の議論を開始しましたが、さすがにコロナショックの影響のため安倍首相も「中小企業の厳しい状況を考慮し、検討を」と指示していると報じられており、引き上げ幅は小さくなる見込みです。
最低賃金は2016年度から4年連続で約25円引き上げられてきており(全国加重平均)官製賃上げと言われていましたが、それでも継続する人手不足により就業者数は増え続けていました。
しかし過去記事[企業の人手不足感が急速に解消/過剰感が急増]にも書いたとおりコロナショックにより人手不足は急速に解消され、自粛を求められていた宿泊・飲食業だけでなく製造業までもが人手過剰となっています。
日本は日常に近づきつつありますが、アメリカでは今も感染者が激増しており、再度ロックダウンなど経済活動の停止となる可能性が高まっていますので、当面はコロナ前の状況には戻らないでしょう。そうすると製造業の人手過剰は当面解消されませんので、最低賃金の引き上げは体力の弱い中小企業から深刻なダメージを与えることになります。
過去記事[コロナショック/売上微減・利益激減・設備投資増加]にも書いたとおり、今年の1~3月は大企業はそれほど売上も減少していませんが資本金1億未満の中小企業は売上高が▲11.7%と非常に苦しい状況に追い込まれています。4~6月は当然これ以上の厳しい状況となりますので、さらに最低賃金の大幅引き上げまで実施されると体力の持たない中小企業が続出することになるでしょう。

そういう事情を理解していないのか、労働側は「3%を相当程度意識してきたこと(4年連続賃上げ)を曲げる必要はない」(連合の神津里季生会長)と反発しているようですが、過去の4年と今とでは全く情勢が異なりますので、強硬に最低賃金の引き上げを主張したところで労働者の理解は得られないでしょう。(ポーズとして主張しているのかもしれませんが)
過去にもリーマン・ショックや東日本大震災の後は、引き上げ幅が圧縮されており、今年もそれに倣った形で決着すると思われます。