グローバル企業に種を支配されるとは? | 上下左右

上下左右

台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

東京大学の鈴木宣弘教授を初めとする種苗法改正反対派は「海外企業が種苗を独占する手段として悪用される恐れもある」と主張しているようですが、どういうロジックなのでしょうか?

同氏の主張によると、「『種は買う』ものとなって、日本の農家がグローバル種子企業に譲渡されたコメなどの種を買わざるを得ない状況を促進して、日本の種を海外企業に取られて、それに支配されてしまいかねない。」とのことで、日本の登録品種がグローバル種子企業に片っ端から譲渡されてしまうことが前提のようです。
ここでは譲渡と書かれていますが、当然ながら無償で譲渡されるわけはないので育成者権の売買が行われるということになります。

「平昌五輪でイチゴの種苗が無断で流出していたと騒いだのに、グローバル種子企業へ米麦の種を「流出」せよと法で義務付け、それを買わざるを得ない流れを促進するのは矛盾している。」などと指摘した気になっているようですが、『無断で流出』することと『適正な対価を支払って権利を譲渡』することが同じだと思っているのでしょうか?
イチゴの種苗の流出で日本が被った被害は220億円に上ると試算されていますから、仮に育成者権の売買が行われたとすればその対価は100億円単位になったでしょう。つまり日本の種を支配しようとするなら、場合によっては1品種に100億円単位の資金をかけて8000以上(現在育成者権が存続している登録品種数)もの育成者権の購入を行わなければならないということです。
しかも当然のことながら、登録品種は毎年新たに登録されますので、一度買い占めても終わりではありません。むしろ適正価格で購入してくれる相手がいるのであれば、開発費の回収が容易になるので新たな品種の開発はより活発になるでしょう。『グローバル企業による支配論者』はグローバル企業は毎年増え続けるであろう登録品種を巨額の資金で片っ端から買収する、と主張しているわけです。

本当にこれが実現するなら日本の種苗開発は単独で一大産業として成立することになりますね。しかも過去記事[[種苗法改正]論理的に考えると外資による種の独占は起こらない]にも書きましたが、韓国に流出してしまったイチゴ『章姫』や『レッドパール』の育成者権者はいずれも個人であり、個人が100億円単位の資金を得られるという大チャンスの到来ということになります。

もはや夢物語と言っても過言ではない話ですが、このような夢物語を妄想しつつ反対しているのがグローバル企業独占論者ということです。