5月の倒産件数は半世紀ぶりの低水準~短期統計にはご注意を | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

東京商工リサーチによると、2020年5月の全国倒産件数は314件と、1964年6月の295件に次ぐ、56年ぶりの記録的な低水準となったようです。
倒産件数が減少したと聞くと経済環境の好転を連想しがちですが、言うまでもなくこの5月に経済環境が好転したわけではありません。元記事にも記載されているとおり、新型コロナ感染拡大によって裁判所の一部業務の縮小や、手形の不渡り猶予などの支援策が実施されたことに加え、経済活動を休止していた企業・店舗の再開や廃業、倒産の判断先送りなどが記録的な減少を後押ししたとみられます。
先月はこうした要因により結果的に倒産件数が減少しましたが、当面はコロナショックにより厳しい経済状況が続いて倒産件数も増加傾向となることが予想されます。

今回の事例に顕著に表れているように、数字は嘘をつきませんが、必ずしも実態を表しているわけでもありません。特に短期的な統計は特殊事情によって極端な数値を示すことがあります。
例えばコロナショックで経済活動を自粛していたのだから消費が急減していることなど当たり前なのに、このように前年同月比ですらない単月の統計を比較するなど、もはや無意味どころか不安を煽るだけの悪質な行為と言えます。

統計とは傾向を見て状況を把握するための道具です。道具ですから使う人間によって様々な使われ方をされますが、一つの道具を好き放題に切り取って煽るだけの主張には十分注意しましょう。
特に単月など短期的な統計を恣意的に比較している主張は全く無意味なものですので惑わされないようにしましょう。