令和2年3月の実質賃金は▲0.3%(速報値) | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

本日、3月の毎月勤労統計調査の結果が公表されました。
<概要>
常用雇用者:前年同月比+1.9%
現金給与総額(名目賃金):同+0.1%
消費者物価指数:同+0.5%
実質賃金:同▲0.3%
との結果です。先月の記事3月以降は86ヶ月連続で増加してきた労働者数の減少も十分にあり得ることでしょう。」と書きましたが、見事に空振りとなりました。
実質賃金はマイナスとなりましたが、名目賃金はプラスであり、あくまで物価の上昇に賃金の上昇が追い付いていないという範疇に留まりました。
それではコロナショックの影響が無かったかと言えばそんなことはなく、中身を精査すると先月の結果と比較しても影響は出始めていることが分かります。

<所定内給与と所定外給与>
所定内給与=固定給、所定外給与=残業代だと捉えればイメージがつきやすいかと思います。
今月は所定内給与が+0.7%と上昇したのに対し、所定外給与は▲4.1%と大きく減少しています。(所定外労働時間は▲7.4%)
簡潔に言えば『今月の実質賃金が減少したのはコロナウイルスの影響で残業が減り、残業代が減少したから』ということですね。なお所定外給与は「決まって支給する給与(=所定内給与+所定外給与)」の7.3%程度しかないので、残業代が1割減っても0.7%程度の影響しかありません。

<その他>
先月もパートタイム労働者比率の減少に言及しましたが、今月は▲0.49ポイントと先月(▲0.15)を大きく上回る減少幅となりました。とは言えパートタイム労働者自体は+0.3%と増加しているので、今年四月から導入が義務付けられた同一労働同一賃金の影響で正社員の雇用が増えた(+2.6%)ことが主な原因でしょう。

かなり意外ですが、3月の毎月勤労統計調査は「コロナショックで残業は減ったけど、正社員を中心に雇用は増えてるし影響は軽微だった」という内容となりました。
過去記事(コロナショックによる貧困化の始まり)に「自営業については家族従業員も含め▲40万人と前年比▲5.8%も減少している」と書きましたが、毎月勤労統計調査は事業規模5人以上の事務所のみを調査の対象にしているため、こうしたコロナショックの影響を真っ先に受けている人たちの状況が反映されていないということもあるのでしょう。

4月からは緊急事態宣言が発令されたこともあり、コロナショックの影響がモロに出始めると思われます。先月・今月と予想は良い方に裏切られましたが、来月も良い方に裏切られてほしいと願います。