逆に輸入も輸出ほどではありませんが、5~11月まで連続で(輸出と同様に恐らく12月も)前年を下回るという結果になっており、2019年の輸入総額が前年を下回るのはほぼ間違いないでしょう。
アメリカの離脱もあり、良くも悪くもTPPの影響は非常に軽微なものになったというのが一年目の分析となります。
また、一部で危惧されていた国内への影響については何一つ現実化することなく一年が終わりました。
◯公的医療保険が崩壊する。
→高齢化に伴う自己負担額の増加が検討されているのみ。
<補足>
TPPで公的医療保険が対象外であることは日本がTPP交渉に参加する前からアメリカUSTRのカトラー代表補(当時)が明言しており、また米国生命保険協会を初めとするアメリカの諸団体で日本の公的医療保険制度の改廃を求めていたものは一つもありませんでした。
交渉前から杞憂であることが明らかだったものです。
◯薬価が引き上げられる
→過去記事のとおり今年の10月に一度引き下げられ、来年の4月にもまた引き下げられます。
<補足>
TPPのアメリカとのサイドレターでは「薬価改定等に関する透明性を現状から後退させることがないこと」を約束していました。要は現状維持です。
◯遺伝子組み換え作物表示がなくなる
→2023年から表示を厳格化させる方針(当面は経過措置)
<補足>
TPPでは遺伝子組み換え作物(現代のバイオテクノロジーによる生産品)については加盟国の自由な措置を認めると明記されています。
◯外資による公共事業の受注が増える
→増えたという事実は確認できませんでした。
<補足>
TPPの公共事業(政府調達)の開放基準は日本が全面的に容認しているWTOのGPA基準とほぼ同じで、日本が何か追加開放したということはありません。
◯農協が解体される
→何一つ動きはありませんでした。
他にも「日本語が非関税障壁であると見なされて禁止される」等訳のわからない陰謀論が溢れていましたが、見事に全て空振りとなりました。条文にはそんな陰謀論を実現しそうな内容は何もありませんから当然のことですが。
さて、2020年は日米FTAの交渉第二弾が予想されます。TPPのときと比べると反対派が盛り上がっていないように感じますが、TPPの際の大山鳴動ぶりを振り返れば仕方のないことと言えるでしょう。何度も狼が来たと叫んでいては相手にする人は減っていくのです。もちろん本当に狼が来ていないかをチェックすることは非常に重要ですが、実現しそうもない陰謀論はもはや通じません。
日本にとっての日米FTA交渉はトランプ大統領の暴風雨による被害をどれだけ最小限に食い止められるかという、事実上の不平等条約を前提としたものになります。
2020年もTPPをまとめた日本外交の手腕に期待しましょう。