うっかり今までの主張の柱を覆すグラフを作ってしまった三橋氏 | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

あまりリブログで楽な記事を書くのに慣れてしまうのは良くないと思うのですが、流石に今回の記事をネタにしないのは逆に失礼に当たるかと思い、リブログします。

まず記事本文の突っ込みどころですが、
<引用①>
 まずは、日本の出生数の激減の理由は、
1.実質賃金の低下
2.東京一極集中
<引用②>
しかも、政府は東京圏(南関東)に公共投資を集中させ、東京一極集中を推進している
<引用③>
 日本で合計特殊出生率が「最悪」なのは、ご存じ東京都。しかも、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県と、「東京圏」がすべてワースト10に入っています。

賃金が高くて公共投資が集中している東京圏ほど出生率が低いということは、賃金の低下が出生率に悪影響を及ぼすことはなく、公共投資の増加はむしろ出生率を引き下げる要因になるということになります。
賃金を引き上げて地方の公共投資を増加させる政策は地方を東京圏と同じ状況にする政策と同義であり、出生率引き下げの要因になるという結論しか導かれないわけです。

とまあ、ここまではジャブです。この程度の論理破綻は別に珍しくもありません。

この記事の本題は下のグラフにあります。


2009年以降を拡大気味で見てみましょう。



明らかに民主党政権時代(2010~2012年)よりも安倍政権時代(2013年~)の方が公共投資が増加しています。両政権を比較して公共投資が減少している地域はただの一つもありません。
これまで散々「安倍政権は公共投資を増やしていない」と主張されていたわけですが、それが間違いであると自ら示してしまった形です。今年の10月頃の安倍政権は民主党政権よりも公共投資を減らしているという主張はさすがに方々から「国交省予算しか見てない」「とっくに成立済みの2019年度予算が入っていない」「安倍政権が成立させた補正予算が民主党政権予算として計算されている」と散々に突っ込まれトーンダウンしましたが、「公共投資が増えていない」というベースラインは維持していました。それがこのグラフによって完全に否定されたわけです。
なお、このグラフはご本人が「『事実を知らせる』際のデータは、ご提供いたします。わたくしは、自分が作成したグラフについて、著作権を主張しておりません。」と仰っているので遠慮なく使わせていただきます。

ここまで自信満々に『事実』だと言い切っている資料でご自身の主張の柱である『安倍政権は公共投資を増やしていない』という説を否定してしまったわけですが、これは割と本気で致命傷になりかねないのではないでしょうか?


追記①:にゃにゃさん、アク禁されている私の代わりに(という意図はないかもしれませんが)突っ込みを入れてくださってありがとうございます。

追記②:グラフの元ソース(建設政策研究所)を辿ると、2010~2012年度の平均公共投資額は16.8兆円、2013~2018年度の平均公共投資額は21.7兆円でした。2012年度の補正予算2.4兆円分は安倍政権が成立させたものですので、民主党政権に▲2.4兆円/3年=▲0.8兆円/年、安倍政権に+2.4兆円/6年=+0.4兆円/年の調整をかけると、安倍政権になってから公共投資は年間約6兆円増えたことになります。