地産地消は日本の農業振興に役立つか | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

地方の活性化と食料自給率の向上などを目的として地産地消が推進されるようになり、法制化がなされ始めて丸9年になりました。
ちなみに地産地消関連法令として最初に制定された法律はこちらです。
地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律(六次産業化・地産地消法)(平成22年12月3日法律第67号)

その後も様々な法律ができましたが、地方の活性化と食料自給率の向上に繋がったと実感される方はほとんどいないのではないでしょうか。
というのも実は地産地消という考え方そのものが無理のあるコンセプトであり、実を結ばないのはある意味当然と言えます。
地産地消を推進するということは地域で生産した農畜水産物をその地域(あるいは近隣地域)で消費するということですが、農畜産業は生産者一人当たりの活用土地面積が広ければ広いほど効率的に生産できます。端的に言えば、人が少なければ少ないほど有効ということですね。アメリカやオーストラリアが先進国でありながら農業大国でもあることから、一人当たりの農地の広さがどれだけ重要かは言うまでもないことかと思います。
逆に消費者は一人当たりの活用土地が狭ければ狭いほど輸送や購入の手間が省けるため、より有効な消費活動ができるようになります。
つまり生産地と消費地は土地の活用からして真逆の性質を要求するものであり、これを一緒に推進しようとする地産地消は根本のところからコンフリクトを起こしているわけです。
日本の農業が抱える問題としては①従事者の高齢化 ②非効率性 ③担い手の減少 の3つが挙げられると思いますが、地産地消の政策ではこれらは何一つ解決に結び付きません。
今後特に地方の人口が減少していく日本においては、地方を農業の生産地、都市部を消費地と明確に分別し、地方の農地は大規模な農業法人に格安かつ優遇措置を盛りに盛って明け渡す。日本がこれから食料自給率を維持しようと考えるのであれば、地産地消という幻想は捨て去り、地方と都市部の分別を進めるという大きな方向転換が必要です。
関税云々など言っている場合ではないのです。