7-9月GDPは年率1.8%増に上方修正 | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

先日、企業の売上が今年の7~9月期において3年ぶりのマイナスを記録してしまった旨の記事を書きましたが、二次速報において7-9月期のGDPは年率+1.8%と堅調な伸びを示しました。
GDPのプラス寄与としては民間消費と企業の設備投資、そして公的需要によるところが大きく、それぞれ0.8pt、0.8pt、0.7ptとなっております。売上が減少しているのに民間消費と設備投資が大きく伸びているという、ちょっと理解しがたい状況です。
GDPは付加価値の総和であり売上の総和とは異なるとはいえ、総売上から総売上原価を引いた額(≒企業による付加価値の総和)も前年比▲2兆円とやはりマイナス・・・。家計最終消費支出は+1.1兆円・・・。
特に在庫や棚卸資産が増えたわけでもなく、法人企業統計からは消費がプラスになる要素が読み取れないため、非常に収まりが悪い事態となっております。誰か解説いただける人がいたら教えてください。

なお、設備投資は法人企業統計によると7-9月期で前年比+7.1%(+8000億円)と非常に大きな伸びを示しています。設備投資は年度統計では2011年からずっとプラス成長を続けており、2018年度の設備投資額は2011年の1.47倍もの金額になっています。
企業がこれだけの設備投資を続けてきた一方で特に安倍政権になってからは人手不足が深刻化し、2018年には雇用者の総給与が統計史上最高値を記録するほど雇用と賃金が増え続けました。
ところが企業の人件費は今年の4-6月期から減少(▲0.7%)を始め、7-9学期には前年比▲1.8%となっています。総務省の労働力調査を確認すると雇用者自体は引き続き増加を続けていますが、8月から正規雇用者が減少に転じていることが分かります。


賃金が基本的には遅効指数であることを考えると、10-12月期は賞与の関係で恐らくは再び増加となるでしょうが、企業の売上がマイナスに転じるであろう今年はその後マイナスが続くことになると思われます。

人手不足が設備投資を促して一人当たりの労働生産性が上がり、賃金が上がるのだと能天気なことを言っている人もいますが、設備投資が増えたところで賃金は上がるわけではなく、企業の売上そのものが賃金に繋がることが明白に示された形です。
そもそも設備投資によって生産性が上がれば、企業は人件費の増額ではなくまず設備投資費の回収を行い、次に利益の最大化=コストの削減=人件費の削減を行うので、賃金が上がることには繋がりません。それでもこれまでは人手不足と企業の売上増加により賃金が上がり続けてきましたが、売上がマイナスに転じた結果、人件費も減少を始めています。
GDPのプラスも7-9月期のような耐久消費財の増加(前年比+10.5%)は当面見込めませんから、政府の経済政策に左右されるとはいえ厳しい展開が待っていると思われます。
これからの日本経済の難局面を乗り切る経済政策に期待します。