内部留保と給与総額 | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

安倍政権になってから企業は儲かった金をろくに投資や人件費に回さず貯金ばかりしていると批判する風潮がありますが、本当でしょうか?
確かに内部留保は年々増大していますが、内部留保=現預金というわけではありません。

内部留保(ないぶりゅうほ、retained earnings)とは、企業の所有する資産のうち、借入金や株主の出資ではなく、自己の利益によって調達した部分をさす。たんに企業の資産の調達方法を意味する言葉であるから、内部留保が豊かであるからと言って、『使い道のない資金を溜め込んでいる』というわけではないことに留意すべきである。(wikipediaより)

それでは2012年からの推移を確認してみましょう。

内部留保(利益剰余金)の増加
2012年度末:323兆円
2018年度末:467兆円
(法人企業統計調査より)
差し引き144兆円の増加

現預金の増加
2012年度末:168兆円
2018年度末:223兆円
(法人企業統計調査より)
差し引き55兆円の増加

給与総額の増加(単年のフローなので合計で比較)
2012年:191兆円
2013年:200兆円(2012年比+9兆円)
2014年:203兆円(2012年比+12兆円)
2015年:205兆円(2012年比+14兆円)
2016年:208兆円(2012年比+17兆円)
2017年:216兆円(2012年比+25兆円)
2018年:224兆円(2012年比+33兆円)
(民間給与統計調査より)
合計110兆円の増加

意外かもしれませんが、安倍政権が始まってから企業は預貯金を増やしてきた倍額を給与の増額に充ててきました。
就業者が増えて一人当たりの昇給額が低く算出されるので実感しづらいですが、企業は儲けた金を人件費にも投資にも回さずに溜め込んでいるというのは明確な誤りと言えます。

基準としている2012年の給与総額が少なすぎるという意見もあろうかとは思いますし、それはそれで否定はしません。ただ、ここ2年の給与総額の増え方を見れば再び給与増額への動きが見られるのは確かです。
2016年に企業が給与を増やすどのような動きがあったかと言われると、やはり法人税の減税ではないでしょうか。法人税が減税されると費用を増加させても税引き後利益は減りづらくなるため、人件費を増加させる余裕が生まれます。そうした動きが給与総額の伸びに繋がっているのでしょう。