憲政史上最長の首相在任期間 | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

本日、安倍首相の首相在任期間が桂太郎元首相の在任期間2886日間を超えて憲政史上最長となりました。
第一次内閣との合算ではありますが、これほど長く首相を続けてこられた直接の要因は選挙に強かったからであり、民主主義国家においては選挙に勝つ=国民からの信任を得るということに他なりません。
安倍内閣時に実施された国政選挙の結果を振り返ってみますとまさに圧倒的な内容になっています。

2013年参議院選(改選議席121)
自民党65
公明党11

2014年衆議院選(定数480)
自民党291
公明党35

2016年参議院選(改選議席121)
自民党56
公明党14

2017年衆議院選(定数465)
自民党284
公明党29

2019年参議院選(改選議席124)
自民党57
公明党14

(参考)2012年衆議院選(改選議席480)
自民党294
公明党31

衆議院選では単独獲得議席60%を切ったことがなく、参議院選でも単独獲得議席は最低でも47%となっております。言うまでもなく、公明党を合わせた与党での獲得議席が50%を下回ったことは一度もありません。
衆議院選で同一政党が3回連続で獲得議席率が60%を超えたのは1960年(岸政権)、1963年、1966年(いずれも池田政権)と現政権だけであり、憲政史上最強レベルで選挙に強い政権であるのは間違いありません。

これほどまでに選挙に強かった=国民の信任を得られた理由は何でしょう?
様々な考えがあるとは思いますが、私は①経済政策②外交のそつのなさ③スキャンダルの少なさ、が挙げられると思っています。もちろん比較対象となる前政権の酷さも込みの話ですが。

①経済政策を票にするには、雇用拡大と賃金の上昇が必要です。国民は一人一票しか持たないので、一部の富裕層だけが儲かる社会では票に繋がりません。
2012年と2018年の指標を比較すると下記のとおりです。
・給与所得者:5422万人→5911万人(9%増)
・給与総額 :191.1兆円→223.5兆円(17%増)
・平均給与 :408万円→441万円(8%増)
・年収300万円以下の割合:41.0%→37.0%
・年収400万円以下の割合:59.0%→54.2%
・年収500万円以下の割合:72.9%→69.1%
(国税庁:民間給与実態統計調査より)

雇用が増えたのは仕事をしなければ生活できない人が増えた結果であり貧困化の結果だと主張する人もいますが、過去記事で取り上げたとおり「収入を得る必要が生じた」ために求職する人は大きく減少しております。
雇用面においては十分な成果と言えるでしょう。

②日本では外交は票にならないと言われ続けてきましたが、TPP(アメリカには逃げられましたが)や日欧EPAといった大型EPAをまとめ、前政権が引っ掻き回した対米関係を修復させるなど堅実な外交成果を重ねています。対露外交は成果が出ていませんが、そもそも『強いロシア』を標榜するプーチン政権が戦後70年も占拠し続けてきた北方領土を返還すると期待する方が甘いとしか言いようがないでしょう。

③憲政史上最長の政権ですが、首相本人にまつわるスキャンダルはモリカケや桜を見る会程度です。野党の脇の甘さもありますが、政権にダメージを与えるような案件はありません。
もっとも、これについては国民がスキャンダルに鈍感になってきた結果のようにも感じます。麻生政権はホッケの煮付けまで槍玉に挙げられましたが、さすがに今はここまで酷い揚げ足取りはされていません。私見でしかありませんが、日本国民にはそんな日常会話レベルの揚げ足取りで民主党政権を誕生させてしまった後悔と反省があるのだと思います。

④目立ちませんが、これまで必要だけど停滞していた案件に次々取り組んでいるのも評価するべきポイントだと思っています。
「国際組織犯罪防止条約」への加入
 国連加盟193カ国のうち182カ国が締結していましたが、日本では組織犯罪を厳しく取り締まる法律が無かった(共謀罪と非難され続け、3度廃案)ため加入することができませんでした。
・種子法の廃止(過去記事:種子法が守ったもの
 民間企業の種子ビジネスを制限し、食料自給率を低下させ続けてきた悪法を廃止しました。
・水道法の改正(過去記事:水道法改正ー目的/趣旨/経緯
 都道府県に厳しく責任を負わせ、また柔軟な対応を可能にして水道の広域化を進めるよう改正しました。
・安保法案の制定
 日米安保が日本の国防の要であることは疑いありませんが、米軍を初めとする友軍が危機に陥ったときに傍観するしかないというのは無責任すぎる対応です。『国際社会において名誉ある立場を占めたい』と思うなら当然必要な措置でしょう。

こうした堅実な成果が現政権の根強い支持に繋がり、憲政史上最長の政権を支えてきました。そして今も明らかに対抗馬はおらず当面政権は安泰といえる状況ですが、逆に後継者の育成が気になるところではあります。永世総理大臣などあり得ませんので、そちらへの注力も忘れないでほしいものです。