「IT人材が足りないなら、情報系学部を増やせばいい」

「中途社員が活躍できないのは、本人の主体性が足りないからだ」

「AIが提案した事業構想に、もっともらしい根拠を付ければ企画になる」

世の中には、短くて分かりやすい答えがあふれています。

でも、その答えと答えの間には、しばしば大事な「なぜ」が抜けています。

人材が足りないのなら、どの職種の、どのスキルが、どの地域で足りないのか。

中途社員に成果を求めるなら、必要な情報、権限、人間関係は与えられているのか。

技術的に作れるサービスでも、顧客は本当に買うのか。参加する企業には、情報を提供する理由があるのか。

Thomas Redのnoteは、こうした**答えと答えの間にある、見落とされやすい「矢印」**を考える場所です。

このnoteは、答えを集める場所ではなく、考え方を増やす場所です。


テーマがバラバラに見える理由

このnoteには、教育、キャリア、組織、AI、製造業、経済、地域政策、社会問題など、さまざまな記事があります。

初めて来た方には、

「いったい何のブログなんだろう?」

と思われるかもしれません。

でも、私が書きたいものは、実はかなり一貫しています。

ニュースや身近な違和感を入口にして、個人の問題だと思われていることを構造として捉え直す。

そして、別の分野とつなぎ、データや事例を調べ、自分自身の仮説まで疑ってみる。

私はITコンサルタントとして働き、9社で異なる会社、業界、組織を経験してきました。

経済学、IT、会計、製造業、キャリアについて学んできましたが、私の中では、それらは別々の引き出しではありません。

会社で起きていることは、労働市場とつながっています。

教育は、産業政策や地域の将来とつながっています。

AIは、技術だけでなく、仕事の分担、評価、権限、責任とつながっています。

製造業のニュースも、完成品だけを見ていては分かりません。

部品、設備、電力、物流、資金、規制まで遡っていくと、まったく違う風景が見えてきます。

このnoteで扱っているのは、多数のテーマではありません。

複雑な社会と仕事を、構造として考える方法。

それがThomas Redに共通するテーマです。


まずは、「いまの自分」に近い記事から読んでください

このnoteを、カテゴリー順に読む必要はありません。

むしろ、

「この記事を読んだあと、自分は何を持ち帰りたいか」

で選んでほしいと思っています。

「自分だけが悪いのだろうか」と悩んでいる方へ

まず読んでほしいのが、

「即戦力」として採ったのに、なぜ中途社員を否定するのか(有料)

です。

中途社員が成果を出せないとき、本人の能力や努力だけを原因にしてよいのでしょうか。

必要な情報は渡されていたのか。

意思決定する権限はあったのか。

相談相手はいたのか。

既存社員との人間関係をつくる機会はあったのか。

個人の能力だけではなく、権限・支援・組織社会化まで見る記事です。

読み終えたあと、

「自分だけの問題ではなかったのかもしれない」

と思えるかもしれません。

ただし、それは自分を免責するという意味ではありません。

原因を正しく切り分けることで、初めて改善できる。

そのための記事です。


大きな数字に振り回されたくない方へ

「IT人材79万人不足」だから情報系学部を増やす――その政策、本当に2030年でも通用するのか

では、ニュースで頻繁に登場する「IT人材不足」という言葉を分解しました。

IT人材と一言でいっても、

AI研究者、ソフトウェア開発者、クラウド技術者、セキュリティ人材、ERP人材、プロジェクトマネジャーでは、必要な能力が違います。

さらに、

どの地域で不足しているのか。

どの経験年数が不足しているのか。

どんなタスクを担当する人が不足しているのか。

AIによって需要そのものが変わらないのか。

まで考えなければ、「79万人」という一つの数字だけでは政策を評価できません。

大きな数字を、

職種→スキル→タスク→地域→経験年数

へ分解していく。

これはITだけではありません。

「人手不足」

「少子化」

「住宅不足」

「医師不足」

といったニュースを見るときにも使える考え方です。

読後には、ニュースの数字をそのまま受け取るのではなく、

「その数字の中身は何だろう?」

と考える癖が少しつくかもしれません。


「そんな見方があったのか」と感じたい方へ

「時計」が社会インフラになる日

は、一見すると時計の記事です。

でも、話は時計だけでは終わりません。

通信、金融、衛星測位、自動運転、遠隔医療、工場。

現代社会では、異なる機械やシステムが正確に同期することが、さまざまなサービスの前提になっています。

普段は目立たない技術が、実は複数の産業を下から支えている。

これは、製造業や投資を見るときにも重要な視点です。

完成品だけを見るのではなく、

部品。

製造装置。

電力。

冷却。

通信。

保守。

さらにその上流まで遡ってみる。

すると、ニュースの主役とは別のところに、代替しにくい価値が見えることがあります。

「時計の記事を読んでいたはずなのに、産業の見方まで変わった」

そんな読後感を目指した記事です。


AIで企画や調査をしている方へ

もっともらしい事業構想は、なぜ危険なのか――「AI版Ariba」を5回反証して分かったこと

は、Thomas Redの考え方が最もよく表れている記事の一つです。

AIは、とても上手に名詞をつなげます。

AI。

データセンター。

電力。

金融。

SAP。

マーケットプレイス。

それらを組み合わせれば、数分で「それらしい新規事業」ができます。

しかし、事業を成立させるのは名詞ではありません。

名詞と名詞の間にある「だから」です。

技術的に作れる。

だから企業が参加する。

企業が参加する。

だからネットワーク効果が生まれる。

ネットワーク効果が生まれる。

だから顧客がお金を払う。

本当にそうでしょうか。

この「だから」の一つひとつに、別の証拠が必要です。

AI時代に必要なのは、答えを早く作る能力だけではないと私は考えています。

AIと一緒に仮説を作る。

人間が弱点を探す。

一次資料を調べる。

仮説を壊す。

それでも残ったものだけを、もう一度考える。

AIの答えを補強するのではなく、一度壊してみる。

そんな使い方を共有した記事です。


教育や進路を、偏差値以外の物差しで考えたい方へ

旧帝大工学系と豊田高専のカリキュラムを比較してみた

では、

「高専は大学何年生レベルなのか」

という問いから出発しました。

しかし、比較して見えてきた本当の論点は、学校同士の勝ち負けではありませんでした。

何を学ぶのか。

何歳から専門教育を始めるのか。

大学受験に使う時間を、専門分野の積み上げへ回せるのか。

卒業後に、どのような選択肢が残るのか。

進路を考えるとき、多くの人は偏差値や学校名を見ます。

もちろん、それも一つの情報です。

でも、もう一つ物差しを増やしてみる。

教育内容×開始時期×将来の選択肢

で学校を見る。

すると、進路の見え方はかなり変わります。

この記事で持ち帰ってほしいのは、「高専が良い」「大学が良い」という結論ではありません。

教育そのものを設計として見る視点です。


Thomas Redの記事に共通する、5つの考え方

ここまで紹介した記事は、テーマこそ違います。

しかし、考え方には共通点があります。

1.小さな違和感を、放置しない

多くの記事は、

「本当にそうだろうか」

という小さな疑問から始まります。

IT人材が不足するなら、なぜ未経験者を育てないのか。

即戦力を採用したのに、なぜ前の会社と違う考え方を否定するのか。

便利になったのに、なぜ仕事は減らないのか。

市場が成長しているのに、なぜ企業は苦しくなるのか。

社会の大きな問題は、最初から大きな言葉で現れるとは限りません。

日常の小さな違和感には、制度や産業の矛盾が圧縮されていることがあります。


2.個人論から、構造論へ移動する

「あの人は優秀だから成功した」

「本人の努力不足だから失敗した」

そう説明すれば、話は簡単です。

でも、人を入れ替えても同じ問題が何度も起きるなら、本当に人だけが原因でしょうか。

評価制度。

権限。

情報格差。

供給制約。

利益配分。

参入障壁。

組織設計。

個人の後ろにある仕組みまで見る。

すると、

「自分が悪い」

「上司が悪い」

「若者が悪い」

「最近の会社はおかしい」

というところで止まっていた問題を、改善可能な課題へ変えられることがあります。


3.別の分野を、あえてつなぐ

高専を、偏差値ではなく人的資本への「時間投資」として見る。

住宅ローンを、家賃との比較ではなく家計のバランスシートとして見る。

AIを、性能競争ではなく工程・評価・責任分担の問題として見る。

時計を、時刻を知る道具ではなく、金融や通信、自動運転を支える同期インフラとして見る。

一つの分野の常識だけで考えていると、見えないものがあります。

別の分野から補助線を引くと、

「これと、あれは、実は同じ構造なのではないか」

と気づく瞬間があります。

私は、その瞬間がとても面白いと思っています。


4.自分の仮説を、データで疑う

調査は、自説をもっともらしく飾るためだけにするものではありません。

むしろ逆です。

自分の考えを壊せる事実はないか。

海外では別の結果が出ていないか。

市場は、すでに問題を解決していないか。

最も魅力的に見える顧客は、そもそも外部サービスを買わずに内製するのではないか。

自分に都合の悪い情報を探す。

そして、それを通過したあとにも残る仮説を考える。

最初から美しい仮説より、その方が信頼できると私は思っています。

AI時代には、

もっともらしい答えを作る力

だけでなく、

もっともらしい答えを疑い、壊し、必要なら捨てる力

が重要になります。


5.最後は、読者自身の判断へ返す

このnoteでは、

「だから全員が高専へ行くべきだ」

「嫌な会社なら転職すればいい」

「AIを導入すれば生産性が上がる」

といった結論には、できるだけしたくありません。

同じ制度でも、人、会社、地域、時期によって最適解は変わります。

私が渡したいのは、結論ではありません。

自分の状況を考えるための補助線です。

記事を読み終えたとき、

複雑だったものが、少しだけ整理された。
答えを教えてもらったというより、自分で考えるための補助線を一本もらった。

そう感じてもらえたら、このnoteの目的は達成されています。


SAP・ERPの専門記事を読みたい方へ

Thomas Redでは、SAPを単なる機能解説として扱うのではなく、

企業の業務。

組織。

会計。

製造業。

産業構造。

そうしたものをつなぐ題材として扱っています。

一方で、SAP・ERPの実務、プロジェクト、キャリアなど、より専門的な記事は、

ERPニンジャ

で発信しています。

社会や産業を広く考えたい方はThomas Redへ。

ITプロフェッショナルとして深く掘りたい方はERPニンジャへ。

両方を行き来すると、

技術と経営

現場と構造

システムと社会

が、少しずつつながって見えるようになると思います。


おすすめの読み方

最初は、自分がいま困っているテーマ、興味のあるテーマから読んでください。

キャリアに悩んでいるなら、キャリアの記事から。

子どもの教育を考えているなら、教育の記事から。

AIを仕事で使っているなら、AIの記事から。

製造業に関心があるなら、産業の記事から。

でも、できればそのあとに、

普段なら絶対にクリックしない分野の記事を一本だけ

読んでみてください。

教育に関心がある方が、製造業を読む。

ITの方が、地域政策を読む。

投資が好きな方が、組織論を読む。

管理職の方が、若者のキャリアを読む。

そして最後に、最初の問題へ戻ってみる。

すると、別の分野で得た考え方が、自分の仕事や生活を違う角度から照らしてくれることがあります。

興味のあるテーマから入ってください。
でも、できれば普段読まない分野の記事も一本読んでみてください。
このnoteで一番届けたいのは、個別の知識よりも、異なる世界をつなげて考える面白さだからです。


正解を断言する場所にはしたくない

私の記事を読んで、

「別の見方もあるのではないか」

「自分の会社では違った」

「このデータなら、別の結論も考えられる」

と思うこともあるでしょう。

むしろ、そうした反論は歓迎です。

複雑な問題に、唯一の正解があるとは限りません。

読者から届いた違う経験や視点が、私自身の仮説を壊すこともあります。

そして、その違和感が、次の問いや記事につながります。

答えを大量に生産する時代だからこそ、

何を疑うのか。

どこまで分解するのか。

何と何をつなぐのか。

そして、自分はどう判断するのか。

そのための思考の道具を、一つずつ増やしていきたい。

複雑な社会と仕事に、一本ずつ補助線を引いていく。

それが、Thomas Redというnoteです。