山本 彩編
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私の姪の結婚式があるため東京に家族で行った時の話、、、
前日に彩がどうしても行きたいところがあると言うので付き合わされた。
「子供じゃあるまいし、一人じゃ行かれへんの?」と聞いたのだが
「行ける。行けるんやけどついてきて。」とよく分からないことを言う何かいつもと違う
その様子に「まあ、別にいいけどな、、、。」と同行することとなった。
スマホのマップを頼りに新宿のとあるビルの地下への階段を下りて行った。
そこはギターショップだった。
店の前で彩は一つ大きな深呼吸をして「いこか!」と言い後ろに立つ私の背後に回り
背中をぐっと押して先に店に入らせた。
自動ドアが開くと中では静かにブルースがBGMでかかっていた。
「いらっしゃいませ。」と店員さんが挨拶をしてきた。
「こんにちは。」と応えた私の後ろにいた彩が「すみません。ちょっと奥見せて頂いていいですか?」
と作り笑顔で店員さんにたずねた。
するとレジの椅子に座っていた年のころ40代後半の店長さんらしき人が「どうぞ、ごゆっくり。」
と柔らかい笑顔で応えた。
その奥の方は入り口付近のギターと違い、ガラスのショーケースに並べられていた。
すすすすすーとそのギターのショーケースに近寄った彩はまるで昔のCMでショーウインドウの
中のトランペットを見る黒人の少年のようだった。
「ジャックスカードかっ!」と小さな声で言ってしまった。
知っていたのだろうか、店長さんは笑って「ありましたね。」と言った。
「ギター弾くんですか?」と彩に声をかけ、「もし良かったら弾いてみますか?」
とたずねると「いえいえいえいえいえいえいえいえ、めっそうもない。」と彩が両手で「いやいや」
をしながら少し後ずさった。
しかし店長さんはショーケースの鍵を開け一本ギターを取り出した。
そしておどおどする彩に「ここに座って。」と椅子を差し出し、座った彩の足にギターを
そっと置いた。
「ああああ~~~~~~。」と声を漏らす彩。
「大丈夫。弾いてみてください。」と優しく語りかける店長さん。
その言葉に少し落着いた彩はギターを弾きだした。
店長さんはその様子を微笑んで見ていた。
「なんかホンマすみません。なかなか出来ない経験させて頂いて。」と礼を言う私に
「お父様は楽器は?」と聞いてきたので「学芸会のトライアングルもようたたけませんでした。」
というと下を向いて笑った。
弾き終えた彩が大きく息を吐き震える声で「どうもありがとうございました。」と言った。
「どういたしまして。」と言い店長さんはギターを受け取りもとの場所へと戻した。
二人で深々と会釈をして店を出ようとすると階段を下りてラフな格好の白人二人が店に入ってきた。
「さ、行こうか。」と彩に声をかけるとびっくりした顔のまま固まっていた。
「おい、どないしたん?」という私に「ク、クラプトン、、、。」と応える彩。
我に帰った彩は「お父さん、エリック・クラプトンや!間違いない!海外の有名ミュージシャンも
よく来るて、これに。」とスマホのギターショップの情報のページを見せたが
「老眼やし見えへん。」と言うと「なの!」とちょっと怒った。
「よし、お店の中で声をかけるのはなんだから出てきたところで声かけよ!」
時が経ち階段を上ってクラプトンがやって来たので「えくすきゅーず・みー」と完全なる日本なまりで
声をかけた。「あーゆーみすたーえりっくくらぷとん?」と聞くと、もうひとりの白人が
「ゴメンナサイ。コマリマス。」と流暢にしゃべり割って入ったがクラプトンらしき人物は
英語でその人に何か言うと、笑顔で「イエス。」と応えてくれた。
「まいどーたーいずゆあふぁん。ていくあぴくちゃーおっけー?」とずうずうしくも聞くと
「オーケー。」と言ってくれた。
その間彩はずっと直立不動で後ろで固まっていた。
何とか笑顔にさせ、一緒に写真を撮ってもらい、握手をした。
さっき店長さんにした会釈よりももっと深々と会釈をして二人を見送った。
「なんかごっつ疲れた。」と言ってホテルまでの帰り道のタクシーの中で彩は眠ってしまった。
タクシーの揺れで彩は私の肩にもたれかかってきた。
こう見ると寝顔は子供の頃と変わらないなとしみじみと思った。
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さやねえは一度北海道握手会に参加したけど握手できなかった。
今となっては惜しいことをしたなと。