こんにちは、専攻医Sです。
映画館や動画配信サービスで色々な映画を観ています。
映画鑑賞という趣味は、主にインプットの作業です。
アウトプットというと、感想を書いたりレビューを投稿したりすることなどがありますが、なかなか面倒で気が進まないものです。
たまにはアウトプットしてみようということで、もう2月になってしまいましたが、2025年に観た映画を紹介しつつレビューを行っていこうと思います。
※作品名の後の括弧内は制作年、制作国、監督(敬称略)です。
※ポスターが良かったと思う作品はAmazonのリンクを貼っています。アフィリエイトではありません。
#1. 広がるアジア映画の世界
ヤンヤン 夏の想い出(2000年、台湾・日本、エドワード・ヤン)
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年末に4Kレストア版を上映していたので観に行きました。最近はこういった過去の名作のリバイバルが増えていますね。
エドワード・ヤン監督の遺作で、カンヌ国際映画祭で監督賞も受賞しており、世界的にも高く評価された作品です。
台北を舞台に、ヤンヤンという少年の周りで巻き起こるひと夏の出来事を描いています。
少し昔の台湾と日本の風景は、20代後半の自分でもノスタルジーを感じました。
「自分の経験することのない第3の人生を、映画の中で体験できるのは凄く素敵なことだ」と、映画の中の青年が言っていました。
小説でも言えることですが、フィクション、ノンフィクションに関わらず、創作作品を目にすることは、確かに人生を豊かにしてくれるかもしれません。
心情風景をここまで巧妙に描いている作品はそう多くありませんが、「ヤンヤン 夏の想い出」は深く引き込まれる映画だと思います。
Wikipediaによると、公開時の予告映像は岩井俊二監督が手がけていたようです。
4Kレストア版の予告も岩井監督が製作したとのことで、YouTubeのリンクを貼っておきます。
https://youtu.be/g6YfzdLVR2U?si=I3\_YO6egrZ72Gg4r
#2. リリイ・シュシュのすべて(2001年、日本、岩井俊二)
この作品も年末にやっていた岩井俊二監督作のリバイバル上映で鑑賞しました。
岩井監督は仙台市出身、仙台一高卒だそうです(Wikipediaより)。
男子中学生を主人公として、いじめや犯罪などの問題を描くストーリーで、正直かなり胸糞の悪い内容です。
ネット掲示板で、崇拝するアーティスト(リリイ・シュシュ)を語るシーンが所々挟まれていて、ネットがまだ少しアングラだった時代を感じました。
残酷な描写とは裏腹に、田園風景やローカル線など、のどかな風景が度々登場します。
このロケのほとんどが、私の地元である栃木県足利市や群馬県太田市で行われたそうです。
2000年あたりに撮られた映像なので当時の記憶はほとんどありませんが、今でもあまり変わっていない部分と、「ここまで田舎か?」と思う部分がありました。
通学で使っていた東武伊勢崎線や両毛線が出てきて、少し嬉しかったです。
#3. ロウ・イエ監督作品
ブラインド・マッサージ(2014年、中国/フランス、ロウ・イエ)
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B07KYD24Y2/
未完成の映画(2024年、中国、ロウ・イエ)
https://www.uplink.co.jp/mikansei/
本映画のロウ・イエ監督は、中国「第六世代」を代表する上海出身の映画監督です。
リアリズムに基づいた彼の作品は、時に社会批判的な要素を含み、検閲の対象となったもの(「天安門、恋人たち」)もありました。
「ブラインド・マッサージ」は、南京のマッサージ店で働く盲目のマッサージ師たちの間で巻き起こる人間模様を描いています。
幼い頃に視力を失った主人公が、暗闇の中で僅かな光を求め苦悩するのですが、人間の醜さを突きつけられると同時に、懸命に生きる素朴さを見事に表現しています。
「未完成の映画」は、10年前に制作途中で資金不足により頓挫した映画の製作を再開したものの、完成間近でCOVID-19のパンデミックに巻き込まれ、隔離生活を余儀なくされるというモキュメンタリー作品です。
現実の映像が含まれています。モキュメンタリー(mockumentary)は、mock(偽の)とdocumentary(ドキュメンタリー)を合わせた造語で、フィクションをドキュメンタリー映像のように演出する技法を指します。(編注:可愛い誤字かと思った)
実際に、コロナ禍初頭の混乱した社会(中国では強力なロックダウンが敷かれていました:ゼロコロナ政策)で市民によって撮影された映像やニュース動画が含まれており、フィクションといってもリアリズムに徹した作品となっています。
過去に、同じくロウ・イエ監督作品である「スプリング・フィーバー(2009年、中国)」を観た時も同じことを思いましたが、人間の感情というものをここまで美しく、素朴に表現できている作品は多くありません。
なお、「未完成の映画」は日本国内ではまだ配信やメディア化されていません(中国本国では公開すらされていませんが)。
#4. かもめ食堂(2006年、日本、荻上直子)
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フィンランド・ヘルシンキで小さな食堂を営む3人の日本人の日常を描いた作品です。
この映画を観たきっかけとして、このジャケット(ポスター)が挙げられます。
2023年に観た映画「コンパートメント No.6(2021年、フィンランド・ロシア他)」がとても印象に残り、それ以来フィンランド映画の世界に引き込まれました。とりわけ、フィンランドの巨匠、アキ・カウリスマキ監督の作品はほとんど観てしまいました。
アキ・カウリスマキについては小津安二郎監督作品の章で後述しますが、独特な世界観や表現技法は彼の作品の唯一無二の特徴であり、3人の女性が斜め上を向いているポスターを見た瞬間、アキ・カウリスマキの気配を感じてしまったわけです(「浮き雲」などのオマージュだと思います)。
「かもめ食堂」の作中にもアキ・カウリスマキ作品のオマージュととれるシーンが数多く散りばめられており、リスペクトを感じられると同時に、オタク心を非常にくすぐられるものでした。
また、いずれもアキ・カウリスマキ作品である「過去のない男」「浮き雲」で主演を務めたマルック・ペルトラが出演しているのも、アキ・カウリスマキのファンとしては注目ポイントです。
#5. 秋刀魚の味(1962年、日本、小津安二郎)
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小津安二郎監督の遺作です。小津映画は他には「東京物語」を観たことがあります。
昔の映画だからなのかもしれませんが、なんとなくセリフとセリフの間が長く、やたら棒読みに感じるのです。
そして、やたらローアングルから撮られた構図や、突然の場面転換など、映像効果についてもかなり綿密に計算されているようです。
独特な構図や間合いはややシュールに感じられ、最初は少し戸惑いますが、慣れると癖になってきます。
アキ・カウリスマキ監督は確実に小津作品の影響を受けており(本人も明言しています)、カウリスマキ作品を観た際にはぜひ「東京物語」や「秋刀魚の味」などを観て、そのルーツを辿ってほしいです。
#6. アヒルと鴨のコインロッカー(2007年、日本、中村義洋)
伊坂幸太郎原作の小説を映画化した作品です。ストーリーの舞台は仙台で、撮影も仙台で行われています。
主人公は進学のために仙台に引っ越してきた大学生で、謎の隣人と書店で広辞苑を盗み出そうといきなり誘われます。
それ以降はネタバレになってしまうので詳しくは書きませんが、どんでん返し系で最後の最後に驚かされました。
自分が9年前に仙台に引っ越してた時のことを思い出しました。
ちなみに、伊坂幸太郎さんは東北大学法学部出身らしいです。
#7. 北野武関連作品
戦場のメリークリスマス(1983年、日本、大島渚)
年末に配信で鑑賞しました。太平洋戦争末期のジャワ島での日本軍捕虜を描いた作品です。
大島渚監督作品を観るのは初めてでした。
ビートたけし、坂本龍一(音楽も担当)、デヴィッド・ボウイなどが出演しています。
劇中歌であるMerry Christmas Mr. Lawrenceは多くの人が耳にしたことがあるでしょう。
ボーイズラブ(BL)的な要素が強調されることが多いようですが、個人的にはビートたけし演じる鬼軍曹・ハラと、捕虜であるロレンスの関係性は、BLとは違う、言葉では言い表せない奇妙な関係だと感じます。
ラストで戦後へと舞台が移るのですが、これから初めて観る方は、ハラとロレンスの関係の変化に注目してほしいです。
最後の最後、ビートたけしが満面の笑みで放つ「メリークリスマス、ミスター・ロレンス」というセリフは、この映画を代表するシーンだと思います。
戦時中は、「ミスター」と敬称を付けることなどなかったのですから。
Merry Christmas Mr. Lawrence/坂本龍一 https://youtu.be/dM5bjcz1mF8?si=ejEBuahPfb8EOUNk
ソナチネ(1993年、日本、北野武)
菊次郎の夏(1999年、日本、北野武)
BROTHER(2000年、日本・イギリス、北野武)
今年は北野武映画をいくつか観てみました。
「ソナチネ」は、沖縄での抗争にビートたけしが舎弟とともに乗り込むヤクザ映画です。
沖縄の美しく穏やかな風景のもとで、静かな暴力によって皆死んでいきます。ビートたけしが拳銃を自分の頭に当てている有名な画像がありますが、あの映画です。
「BROTHER」もアメリカを舞台にしたヤクザ映画ですが、所々ユーモアがあって、完全にシリアスや暴力性を前面に出す感じではないところが、たけし映画の特徴です。
一方で「菊次郎の夏」は、ビートたけし演じるおじさんと、家を出て行ってしまった母を訪ねて旅をする、温かみのある物語です。たけし映画はいずれも温かみはあるのですが、ちょっと趣向が違うのですね。
これらの作品はいずれも音楽が久石譲なのですが、劇中曲がまた美しいのです。「菊次郎の夏」のメインテーマである「Summer」は、皆さんも聞いたことがあると思います。
寒い冬でも、夏を切望して聴きたくなる曲です。
https://youtu.be/rI6KKXJ1TUg?si=XYudlp6iOwurXb88
#8. 侍タイムスリッパー(2024年、日本、安田淳一)
低予算のミニシアター系作品として当初公開されましたが、高評価を受けて多くの映画館で上映されることになりました。
残念ながら公開当時は見逃してしまったため、配信で視聴しました。
時代劇かつタイムスリップものというベタな設定ではありますが、ストーリーはわかりやすく、本格的な殺陣など演技面でも目を見張るものがありました。
ハリウッド映画やシネコンで上映されるような大作にはない良さ、予算がすべてではないということを実感させられる作品の一つです。
#9. 2025年話題作
国宝(2025年、日本、李相日)
これは2025年で一番話題に挙がった映画のはずです。
公開当初から面白いという噂を耳にしていたのですが、2時間55分というなかなかの大作であるため、覚悟を決めてから行こうと思い、公開3、4ヶ月後に腹を決めて観に行きました。
近年、映画の尺が長くなっている傾向があるようです。たとえば、スタンリー・キューブリック監督の「2001年宇宙の旅(1968年、アメリカ)」ですら、約2時間半の間に幕間(Intermission)が設けられていました。
長尺化の原因としてはポジティブな理由が多いとは思うのですが、個人的になんとなく冗長な表現が多くなってしまうように感じられることもあり、単に集中力が続かないと思うことがありました。
一方でこの「国宝」という映画は、そのような冗長さや無駄な演出、時間が全く感じられませんでした。
これは凄いことです。長時間の静寂こそ、必要不可欠な「間」でした。計算され尽くした演出による、約束された成功だったのです。
医学的な立場でみると(ネタバレを含みます)、糖尿病の治療はきちんとすべきです。
逆に言えば、時代背景的にインスリン療法は実用化されていたと思うので、糖尿病の治療をしておけばこの物語は成立しなかったでしょう。
また、糖尿病で入院しているのにバナナを食べるのはどうかと思います。
#10. F1(2025年、アメリカ、ジョセフ・コシンスキー)
この作品はIMAXで視聴しました。ブラッド・ピット主演でF1の世界を描いた映画です。
「トップガン マーヴェリック」のスタッフが製作に携わっており、実際のサーキットでの撮影を含んだ本作品はとてもリアルで迫力がありました。
現役のF1ドライバーであるルイス・ハミルトンも監修に関わっているそうです。
あくまでフィクションなのでストーリーはややありきたりな内容ですが、モータースポーツ系の映画の中では群を抜いたクオリティの映像に仕上がっています。
#11. 祝Oasis来日
オアシス ネブワース 1996:DAY2(2021年、イギリス)
2025年に再結成ツアーが行われ、11月には来日公演を果たしました。
残念ながらライブには行けませんでしたが、伝説のライブといわれるネブワースの映像作品がリバイバル上映されていたので観てきました。
オアシスの活動をリアルタイムで観てきたわけではないので、こういう形で追体験できるのはとても新鮮でした。
ちなみに一番好きな曲は「Supersonic」で、イントロのギターリフは本当に最高だと思います。
#12. ウェス・アンダーソン最新作
ザ・ザ・コルダのフェニキア計画(2025年、アメリカ/ドイツ、ウェス・アンダーソン)
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0G6ZCSLN9/
アステロイド・シティ(2023年、アメリカ 、ウェス・アンダーソン)
https://amzn.asia/d/0bPOBJ1N
ウェス・アンダーソンの作品は過去に数作品観てきましたが、独特の色使いやテンポ感は非常に魅力的です。
「アステロイド・シティ」「フェニキア計画」も例に漏れず、ウェス・アンダーソンの世界観が随所に見て取れます。
回想シーンなどで行ったり来たりすることが多いため、分かりづらいと思われがちですが、ストーリーとしては実にシンプルです。
ウェス・アンダーソン作品では「グランド・ブダペスト・ホテル」が一番わかりやすいでしょうか。
ただ、こういう作品は無理に難しい考察をせずに、世界観とドタバタ感を楽しむものだと思います。
最新作の「フェニキア計画」には私の好きな俳優であるトム・ハンクスが出演していたので、劇場に観に行けて良かったです。
#13. デヴィッド・リンチ追悼
マルホランド・ドライブ(2001年、アメリカ、デヴィッド・リンチ)
https://amzn.asia/d/07z8rTQy
交通事故で記憶を失った女性が、記憶を取り戻していくストーリーです。
内容は謎解きのように難しく、1回見ただけではよく分かりませんでした。
2025年1月にデヴィッド・リンチ監督が亡くなられた後に視聴しました。
デヴィッド・リンチ監督作でいうと、1990年代前半に流行した海外ドラマ「ツイン・ピークス」を過去に配信で観ていましたが、そちらはやはり名作だけあって面白いと思いました(第2シーズンは途中から失速しますが)。
#14. ミザリー(1991年、アメリカ、ロブ・ライナー)
「シャイニング」や「IT」などで知られるスティーヴン・キング原作です。
ある小説家の熱狂的ファンが、事故に遭ったその小説家を看病すると見せかけ、小説「ミザリー」シリーズの完結を阻止するべく凄まじい暴力によって奮闘する(?)ドタバタサイコスリラー映画です。
まあ怖いといえば怖いんですが、どちらかというと痛々しいですね。
それくらい、主演(キャシー・ベイツ)の演技は鬼気迫るものがありました。
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大分長かったですね。
こうして振り返ると、色々な国、ジャンルの映画を観ていることを実感させられました。
あまりランキングをつけるのも良くないと思っていますが、2025年に公開されたものに限って言えば、「未完成の映画」が一番心に残りました。
「ヤンヤン」や、たけし映画もよかったですね。
リバイバル上映や過去の名作を観るのも、歴史を勉強するようでまた面白いものです。
今度は2026年に観た映画をレビューする記事を書きたいと思いますので、また来年お会いしましょう。
(編注:いろんな専攻医コラムがありますね。それでは次のコラムをご期待ください。さよなら、さよなら、さよなら・・・)