えものーハトとカラスとゴキブリとー | いつか旅立つ日が来たとしても

いつか旅立つ日が来たとしても

ひとりと一匹と、その日々のこと。

 

我が家は、マンションの上階ということもあって、

ベランダにも訪問者がやってくる。

ハトとカラスだ。

位置的のも構造的にも、彼らのほどよい休憩所に

なっているらしい。

北側のベランダは、ハトの就寝場所にもなっている。

よく、とんびも見かけるが、彼らはここまで降りてこない。

 

気が向くと、おまえは、ベランダの訪問者を確認しにいったり

していたが、鳥を見かけたとき、特有の猫の鳴き声ーケケケケといったやつーを出したことはなかったなあ。

狩りのかまえをしたこともあったが、おまえも相手も、間に窓ガラスがあることがわかっていての、遊びみたいな感じだった。

ただ、カラスに馬鹿にされたときは、おまえは、たまらず突っ込んでいき、ガラスに頭をぶつけていたっけ。

カラスは悠然と、一声鳴いて飛んでいった。

 

上階ということもあって、蚊やハエなど虫のたぐいの侵入は、なかったが、一度だけ、ゴキブリが玄関から侵入してきたことがあった。

 

リビングでテレビを見ていると、玄関のほうで、おまえが一点を見つめて固まっているのが見えた。

猫がじっと一点を見つめていると、それだけで、気持ちが悪い。

(彼らは霊が見えていて、じっと見つめるさきには霊がいるという話を聞いたこともある)

 

おそる、おそる近づいていくと、

おまえの足先から30センチくらいのところに

3センチぐらいのゴキブリがいた。

 

おまえも、ゴキブリも、急に相手に出くわしたので、びっくりして、

すくんだまま、動けないという感じだった。

 

そのままにしておくこともできず、

また、おまえの前で殺虫剤を使うのも、ためらわれたので、

玄関を開けて、ゴキブリにはお引取りいただくことにした。

 

玄関を開けたとたん、ゴキブリは外へ、おまえはリビングに駆け出した。

 

このときから先、おまえがじっと見つめる先には、

どこからか迷いこんできた虫がいた。

オレは、そのたびに、玄関からお帰り願うことにしている。

 

まあ、少なくとも、おまえに限っては、エモノのおすそわけとして

枕元にゴキブリを置くことはなさそうなので、安心した。