1996年(平成8年)の作品。大好きな作品を久しぶりにWOWOWで見た。何度もみたことがあるが、CMの切れ目なしで見るのは初めてだ。
本当に優れたエンタテイメント映画だと思う。古典的作品は別にして、私が生まれて以後(1970年)の中でも指折りの日本映画ではないだろうか。この映画をきっかけにいまなお芸能人が社交ダンスを番組のネタにしている。「Shall we ダンス?」は当時はごく限られた範囲のひとが趣味としているのみだった社交ダンスを広く一般人に紹介しながら、市井の人々の様々な機微と悲哀を折り込んでいる。「面白くってタメになる(知識が増える)」だ。私が生まれて以後作られた、海外に出しても恥ずかしくない日本のエンタテイメント映画(実写)といったら、とりあえずしょーもない専業主婦の私が思いつくのはこれと「マルサの女」かな。「マルサの女」放送してくれないかな。CMないほうがいいから、WOWOWかNHKのBSで。
当時うちの母親は「私はたま子先生(草村礼子)みたいな女性になりたいのよね」と言っていた。特に異常な発言でもないのでスルーしていたが、今年50歳ともなるとしみじみ私もそう思う。ある程度年齢をいった女性の理想の姿がたま子先生だ。ああならなくちゃいけない。「あんな完璧な女性はファンタジーだ」という意見もあるだろうが、目指すアイコンはある程度ファンタジーでいい。この映画で一番リアリティがあるのは草刈民代演じる女性か。彼女の葛藤、失意、滑稽なまでのプライドの高さ、それらを背負ったうえで、あまり関わりたくないと思っていた"素人のおじさんおばさん"の言動に心揺さぶられる様子が一番リアルかもしれない。時には彼らのみっともない姿と自分が重なる。世間知らずなだけで根は素直、っていうね。渡辺えり演じるおばさんはなかなかのヤクザで、面白いけどちょっといない。当時ならまだリアリティのある「オバタリアン」だったのだろうか。おばさん部門でリアリティがあるのはダンスサークルで役所広司が初めて踊る女性か。小さな役だが彼女の役所広司に対する気持ちの切り替わりはリアルで面白い。特に悪意もない気さくなおばさんて、ああいう感じだ。それにしてもこの映画においては役所広司の嫁(原日出子)を除く女性がとても自由で勝気で図々しく、男性は委縮している。ある程度は当時のリアルだと思われる。記憶を頼りに当時と今の世の中と比べると、男女を問わず世の中全体が委縮しているのが現在のような気がする。
ちなみにうちの母親は役所広司と草刈民代が踊ることでこの映画が終わるのが不満らしい。嫁が結局最後までカヤの外に追いやられているのが納得できないようだ。最後役所広司と草刈民代が踊るところは、背の高い美男美女の軽やかなステップで、今見るとても素敵だ。昔は特に思わなかったが。ちなみに私は踊り系が全滅だ。運動神経が悪いつもりはないがこっち方面はひどい。人間得手不得手があるもの。こっち方面の脳がなんだか機能不全なのだ。習い始めの役所広司に激しい共感を覚える。ダンスが相対的に得意なはずの女なのに。よってジムのプログラムでもダンス系のエクササイズやフラメンコ、フラダンスなどは100%参加しない。しかしこのテのクラス、特にフラダンス、バレエ、フラメンコは生徒でびっしりだ。オバサマたちがそれぞれちょっとしたものではあるが自前の衣装を持参で楽しんでいる。みんな踊るの好きだな、とつくづく思う。素人なんだから下手でも楽しければそれでいいが、私の場合は楽しくもない。時間が進むにつれ委縮していく自分がわかる。上手な踊りをみるのはそれこそ社交ダンスから日本舞踊、フラメンコ、アルゼンチンタンゴ、ベリーダンスでもなんでも好きなんだけどな。踊りとは肉体で音楽を表現することだ。見る分には素敵だなあ、と思うのに、いざ自分がやるとなんかつらい。前に通っていたジムには社交ダンスのクラスもあったが、女性ばかりで、基本的にステップの練習をするのみだった。みなよそのおっさんと踊るのは抵抗があるので、できれば配偶者と踊りたいらしいが、夫衆はほぼ全員気乗りしないようだった。あたしも踊り苦手だから、その気持ちはわかる。妻と踊るのがどうこうという問題でもない。楽しめる気がしないのよ。
作劇上気になった点について。最後のダンス大会で、なぜマッチョのペアは竹中をズラをズラすような嫌がらせをするのか。理由は劇中において竹中からズラを外させ、人間的に成長させるためだ。うちの夫はアクション映画が好きだが、このテのなかには「殺された妻子の復讐を誓ったヒーロー」のような設定が時々見受けられる。なぜ妻子はむごたらしい暴力にさらされるのか。理由はヒーローを活躍させるためだ。私はこういう映画が大嫌いだ。こんなの殺され損以外のなにものでもない。製作者が根本的に根性悪いよな、アクションものによくあるケースって。でも「Shall we ~」のケースは全く問題ない。周防監督の脚本は笑いにくるまれた負の事件が結果的に登場人物を根本から活かす。傍目にわかりやすい成功とか勝利には実は見た目ほどの意味はない。そんなたくさんの愛であふれている。このセンスが最高なんである。
★今週の出来事★
1/31 WHOが中国・武漢を中心に拡大する新型コロナウイルスに対し、緊急事態を宣言。
2/12 WHOが新型ウイルスをCOVID-19と命名。