先の11月に99歳で亡くなった著者が過去に出会った著名人(主に文壇関係)との交わりについて書いたエッセイ集。訃報に際してMX「5時に夢中」で中瀬ゆかり氏が、神奈川新聞で平野啓一郎氏が「こんな本あったよね」的に紹介しており、読んでみることにした。日経新聞での連載をまとめたもの。画は横尾忠則氏。
三島由紀夫、谷崎潤一郎、川端康成とビッグネームがズラズラ並ぶが、「こんな人たちとこんな交流があった」ってなことが書いてあるだけといえばそれだけ。つまんないというほどでもないけど、さほど感じ入る箇所はなかった。おばあちゃんの、
「あたしが若い頃、文壇はそれは華やかで」
といった思い出話を聞かされる感じ。それが聞きたいひとにはお薦めの本だ。昔は芥川賞なんて世間の一大イベントだったみたいだし。小説家が世の中のスターだった時代が昭和にあったのよね。寂聴さんはちょうどそれを肌身に感じている世代の作家だ。なんせ大正生まれの令和没。この本にもあるけど「文士劇」なんつって人気作家がそろい踏みの素人芝居が都心の大劇場を毎年満員にしていたみたいだし。そういう時代の話だ。ちなみに私が昭和45年(1970年)生れで、三島自決の年だ。
結局この本読んであたしが一番感じたことって、感覚的な世代格差なのかしら。文章はさすがに正統派の巧さだけど。往年の大女優高峰秀子のエッセイ「わたしの渡世日記」にも谷崎とか出てきてこんな有名人と交流が、みたいなくだりも多かったけど、あれは面白くて繰り返し読んだ。感覚的な時代格差はさほど感じず「当時を知る」というスタンスで惹きこまれた。おそらく著者が読み手とのネタに対する温度差を意識しているかしてないかの差だと思う。寂聴さんはきっと「そういう年代」のひとに向けて書いていたんだろうね。
と、一通りクサしておいて、感じ入るところもあった。寂聴さんの師僧である「今東光」氏の項。得度を終え尼僧となった寂聴さんに対し、
「いいお姿になっておめでとう」
と祝福してくださり、帰り際私の背に、
「寂聴さんや、これからはひとりをつつしむんだよ」
とおっしゃった。
私が今先生から法師として教えられたことはこれだけである。
「ひとりを慎む」ってどういう意味だろう、と思って調べたら、なるほどそうだよな、とわが身に照らしてしみじみ感じ入った。
あと寂聴さんの魅力の一つは、気前がいいってことなんだろうというのも実感。お金、出費についてはもちろん、様々な意味でケチには程遠い彼女はひとを惹きつけてやまない。
(日経文芸文庫 740円)
★今クールのドラマ★
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