茶々は母の言葉を思い返していた。浅井の血を後世に残すように。妹二人は正室として嫁いだが、名家といえどしょせん一大名にすぎない。自分が「秀吉の子」を宿せば、その子は天下人となる。だがどうやって妊娠するのか?
 大蔵卿の話によれば、世間で行われている参籠という儀式は実は子作りのためのもの。神前にて読経の中複数の僧侶とまぐわうが、どこの誰かはわからない。むしろひと柱の神とまぐわうのと同じ。宿した子は神を父とするも同然。秀吉殿も父親がだれかなど知りたくないはず。神の子であれば秀吉殿も異論ないだろう。
 老いて醜いサルに触れられると思えばおぞましいが、我が子が天下人になる。生まれた子は私と神の子。茶々は秀吉に承諾の意を伝え、秀吉は深く喜んだ。

 

(全10回)