※歴史をきちんと勉強したわけでもない私が、適当に小説を書きました。おばさんによる小説家の真似事です。
茶々ら三人は秀吉のもとで手厚い歓迎を受けた。秀吉には多くの側室がいたが、正室寧々は特別な女性であり、豊臣家の大きな支柱の一つであった。加藤清正ら子飼いの家臣は母と慕い、何かにつけて寧々のもとを訪れ、助言を求めた。寧々は茶々らにも常に笑顔と気遣いで接し、信長の姪と立てたが、茶々は気を許す気はなかった。それより茶々は貧しい下級武士の娘が女城主のようになっていることに反感を覚えた。いかにも下級出身らしいおおらかな様子は下品さにしか映らなかった。茶々は美しく高貴で凛とした母を思い浮かべた。
やがて妹二人の縁談が次々と決まった。おかしなことに一番下の江から片付いていった。茶々は自分を見る秀吉の視線の粘着性に気づいていた。何というおぞましさ。老いたサルが自分を我が物にしようとしている? 二番目の妹の初も京極家の正妻として嫁いでいった。
豊臣家家中に秀吉が茶々を妻として迎えようとしているという噂が流れ始めた。加藤清正ら子飼いの重臣は動揺した。
「まさか殿はおふくろ様を正妻の地位から降ろすような愚行は致しますまい。もしもの時は我らも殿に進言いたします」
寧々は応えた。
「そのようなことは無用。茶々殿は信長殿の姪で浅井殿の長女。われらにとっても主筋の姫じゃ。もしそうなれば正室となるが筋。わたくしは出家してそなたたちのご武運を祈る日々を過ごします」
「そのようなことは我らは納得できません。おふくろ様はこの城にあって未来永劫豊臣家の母として我らをお支えくださるのが役割。いかに信長殿の姪といえど、まだ年若い茶々殿にその役割は務まりますまい。私は茶々殿はどこかのしかるべき名家の、歳のつりあった若殿とご縁談をまとめるのが道理と存じます」
寧々は秀吉がすでに茶々を我が物にする決意が揺らがぬものになっていることを知っていた。
(全10回)