年が明けましたが、まだクリスマスの話。夫がイブ生まれだ。
 何度も書いているが、私は女装系の方が出る番組や動画をよく見る。特に肉乃小路ニクヨさんやダイアナ・エクストラヴァガンザさんのファンだ。
 この二人とミッツさんが出ている動画で渋谷を街ブラしていたとき、
「エグゼクティブ・ゲイは二丁目なんかじゃなく渋谷のゲイバーに行く。渋谷のゲイバーで夜な夜なヴーヴクリコを飲んでいる」
 と話していた。
 最近高山真氏の小説「エゴイスト」を読んだ。二丁目のゲイバーで、主人公がママに情報を教えてもらったお礼にこんなことを言う。
「今日はヴーヴクリコ開けて、乾杯しよ」
「あら嬉しい。ありがとう」

 短期間にゲイの表現者の口から同じ酒の固有名詞が出てきた。文脈的に「ハレ」の時やひとが飲むシャンパンのようだ。ぜひ飲んでみたい、と思ったら近所の安売りスーパーで6,500円(税抜)で売っていた。安売りスーパーの中では最も高いクラスだ。夫におねだり。
「え? これ買うならモエ・エ・シャンドンのほうがずっと美味しい。言ってしまえばヴーヴクリコは不味い」
 モエ・エ・シャンドンは5,180円(同)だった。モエ・エ・シャンドンは名前は知っているが、ヴーヴクリコとともに飲んだことはない。というわけで、両方買った。クリスマス(夫の誕生日)とお正月が控えているしね。私が今まで買った酒の中で一番高いと思う。私なんてその程度だ。
 ちなみに私は新婚旅行で初めてビジネスクラス(シンガポール航空)のシャンパンを飲んでその美味しさに感動して以来、スパークリングワインにハマり、長年通販でケース買いしていた。一本千円以下でスペイン産ばかりの店に注文していたが美味しかった。最近は私の病気もあって、たまに店頭で千円~三千円程度のフルボトルを買う程度になっていた。いろいろな国のスパークリングワインを飲んだが、どれも一本千円以下のスペイン産の辛口に優っているともと思えなかった。日本産のスパークリングワインも美味しいが、ちょっと高めだ。
 夫はヴーヴクリコは不味いというし、お酒の好きな友人も、
「どっちも飲んだことはあるが、特に美味しかった記憶がない。少なくとも最近近所の酒屋で買って飲んでる二千円クラスのスパークリングより美味しいとは思えなかった」
 でもやっぱり実際飲んでから「大したことなかった」って言いたいよな。購入後夫に、
「クリスマスはあなたの誕生日だから、モエ・エ・シャンドンのほうがいいね」
「なんで?」
「だってヴーヴクリコは不味いんでしょ? さすがに一日に二本は飲まない」
「不味いっていうか、違うって話だよ。おしゃれでいうならヴーヴクリコのほうがおしゃれだよ」
 おや? なんだか発言が変わってきたぞ。確かにはっきり「不味い」と言ったのに。
 お誕生日会は前日の23日土曜日にした。しゃぶしゃぶに、去年と同じケーキ屋(プチ・フルール)で同じ価格(5号4,860円)で予約購入したケーキを食べた。ただ去年同様百貨店のポイントを使った上に、事前予約で来年使える千円の券を去年同様にもらっているので、実質はほぼ無料だ。フィグ・カシスというタイトルがついていたが、フィグはいちじくのことらしく、「無花果・カシス」とケーキのタイトルとしては味気ない気がする。




 中の具はいちじくだ。感想だが、美味しかった。去年のショコラムースよりずっと私の好みだった。いちじくの味も触感もちょっと目新しい。買ってきた当日しゃぶしゃぶの夕飯後に食べたら夫が「なんか緩い」というので、冷凍庫に入れて翌日特に解凍しないで食べたが、シャリシャリにはならず、硬くなって前日のムース感よりこちらのほうがおいしかった。白い部分もなにか酸っぱいムースだ。冷凍バージョンを個人的にお勧めする。
 翌日の誕生日当日は、成城石井で購入したローストターキーを食べた。税込1,933円で湯煎で食べるタイプだ。クリスマスと言えば本来七面鳥とはよく聞く話。これも私が七面鳥を食べたことがないので夫に探してきてもらった。世の中鶏ばかりが売っている。で、実際食べた感想。年に一度食べるならちょっと変わっていて七面鳥もアリだが、通年で考えたら鶏が美味しい、やっぱ。

 今回のもう一つのメインともいえるシャンパンだが、23日にヴーヴ、24日にモエ・エ・シャンドンを飲んだ。結果、どちらも評判にもれず普通だった。アハハ。千円~二千円のより美味しいということもない。ヴーヴとモエなら、夫はヴーヴ(言ってることが違う)、私はモエですね。二人とも価格と美味しさは比例しないという点では一致した。
「だから言っただろ」
 と夫。でもこれも実際経験したからこそ言えることなんですよ。何事も経験。モエもヴーヴも独特の風味はあって、「これが高級感の証なのか」と思ったりするが、今まで飲んだスペイン産カヴァとか日本産スパークリングのほうが美味しいと思う。
 それにしてもあのシンガポール航空のビジネスクラスのシャンパンの美味しさは何だったんだろう。今でも覚えているが、泡の細かさ、粒立ち具合が全然違ったのだ。もちろん味も美味しかった。銘柄なんてもちろんチェックしていない。当時の私にそんな頭はない。
「飛行機だからね。気圧のせいもあるんでしょ。あときれいに磨いたちゃんとしたシャンパングラスに注ぐと泡も違うよ」
 まるで私がきちんとグラスを洗っていないかのような言い方。腹立つ。


※ミッツ&ニクヨ&ダイアナの渋谷駅探索。もう完全に私の知らない渋谷駅。20年前くらいまではそれなりに知った街でしたが。