2016年イギリス/アメリカ制作。邦題には「世界一優雅な野獣」とまでついているが、原題は「DANCER」のみ。
 1989年生まれでウクライナ出身のバレエ・ダンサー、セルゲイ・ポルーニンは史上最年少で英国ロイヤルバレエ団のプリンシパルとなる。お世辞にも行儀がいいとはいえないポルーニンだが、恵まれた肢体とテクニック、驚異的な跳躍で「ヌレエフの再来」とまで騒がれた。しかし22歳で早くも電撃退団をする。

 前半は幼いセルゲイをキエフ国立バレエ学校に通わせるため、祖母を含む家族が働き、送金するエピソードがインタビューでつづられる。「家族はチームだ」と父親はいい、息子を大成させるために一丸となる。結果を出していく息子に、母親はより高いところの景色をみさせてくれる可能性を見出し、渡英する。家族はバラバラになった。息子は19歳で史上最年少プリンシパルとなる。その立場に彼の技術的才能は十二分に応えたが、内面はついて行けていなかったのだろう。人格は相応に幼い平凡な青年にプリンシパルは長期に渡っては受け止めきれない立場だと私は思う。ひとの注目を集めずにはおられない非凡な才能につきまとう不幸の典型だ。

 で、映画というか、ドキュメンタリー作品としてどうなのか。ぶっちゃけ大して面白くない。見切れないほどつまらなくはないし、彼が非凡であることは素人目にも明らかだが、この作品そのものは大したことはない。ポルーニンの踊りは非凡でも、映画の作り手は凡庸だ。この映画がイマイチな一番の原因は作品を通じて「バレエ」が伝わらないことだ。同じバレエを扱ったドキュメンタリーなら「エトワール」(2000/仏)のほうが濃密でずっとお薦めだ。この映画は卓抜した才能をもつセルゲイの半生(現時点でまだ30歳になってない)と、その家族との葛藤を描いたものだ。言ってしまえばよくある話で、そこに他の作品にはない表現はない。
 最近同じく英国ロイヤルバレエのプリンシパルだった吉田都さんが現役引退を決めた。二人は同時に在籍していた期間があり、同じ舞台に立ったこともあるようだ(この映画には関係がない)。同じくプリンシパルでありながら吉田さんとセルゲイはいろんな点で対照的なダンサーだと思う。そういえば昔NHKで見た吉田都さんのドキュメンタリーのほうがこの映画よりよほど面白かったな。吉田さんを通して”バレエ”が伝わって。
 私は20代に数回バレエを見に行ったことがある。あるとき客席の通路に黒人の男性が立っていて、ファンと思われる日本人女性が感激した様子で話しかけていた。普通にスーツを着ていたが、おそらくプロのバレエダンサーだと思った。大きく動くでも何をするでもない。ただ立って微笑み、ファンの言葉に頷いているだけ。しかしその優雅な体つき、佇まい、物腰は明らかに一般人とは異なっていた。エレガンスとはまさしくこのことだと強く印象に残っている。

 夫はこういった映画に興味がないが、セルゲイがロシアでソロで踊るシーンだけを見せた。男性ダンサーが跳躍力を見せつけるかのように、飛び上がってエガントに足を片側で二回ずつ叩く振付がある。熊川哲也も昔やってたのをテレビで見た。それを見てうちの夫は、
「クリちゃんも高校時代だったらあれはできたね。バスケットをやっていたから」
 コイツ、バレエをなめているのか。つーか自分を買い被りすぎだ。

 この映画は話題になった動画、セルゲイの「Take Me to Church」の誕生秘話みたいな側面もある。まだ見ていなくて、興味のある方はyoutubeで検索してご覧ください。

Sergei Polunin "Take Me to Church" by Hozier directed by David LaChapelle

 このタイトルで出る動画で、2600万回以上再生回数のあるものがオリジナルかと思われます。他にメイキングつき等もあります。

※この映画よりはるかに面白かったNHKのバレエ・ドキュメンタリーはコチラ↓


★今日はバレンタインデー★
 近年ますます恋愛色の薄まるバレンタイン。今年も近所のケーキ屋でチョコレートケーキとモンブランをバレンタインにかこつけて食いました。他に夫がいただいてきたメゾンドショコラとレクラの惑星チョコ(地球)を食べました。どちらも一粒推定約500円ですが、レクラのほうがずっと美味しかったです。なんというか、「高級チョコの味」がしました。メゾンドショコラのはこれで500円かーと個人的には思いました。