先月突如結膜下出血になり、左目半分に血だまりができた記事を掲載した。方々で「ハロウイン仕様なんですぅ~」と言いまくり、確実に笑いを取っていった。悲惨なテメーの顔をネタにするこの捨て身。そりゃ笑うわ。「鉄板ネタ」ってこういうことを言うんだな、と初めて体験した。またあまりに言いすぎて、二週間もすると自分で言うのも飽きてきた。言われるほうは初めてだが。お笑い芸人の一発ギャグが流行るとき、おおむね世間に浸透してくるときに自分は既に飽きていると聞くが、こういうことなんだな、と思った。人生思わぬことで思わぬ経験(類推)ができる。

 自然治癒しかない血だまりは遅々として失せず。ある朝起きてみると、腹部に蚊ではない虫刺されが三か所、赤く腫れていた。汗をかいたりすると?けっこうかゆい。私は昔からひとが刺されない虫に刺されて皮膚科送りになってきた。一緒にいてもわたしだけが刺されているのだ。またかいな。家に残っていた皮膚科の塗り薬を塗ったくりつつ数日後に皮膚科へ。ダニですかね~とまた塗り薬をもらってきた。一週間経ってもまだ治りきらない。

 そして血だまりができて二週間。かなり薄くはなったがそれでもはっきり異状はみてとれる。そんなときにちょっと固いパンを食べたらバキっと歯が割れた。なんなんだ。思わず占術に伺いを立てたくなるこの連続技。以前かかりつけの歯科医に、大昔に施術したであろう処置歯の処置部分が変色している、これは放っておくと歯が割れて悪くすると入れ歯になる、と言われた。私の腔内に緊急性はないが処置したほうがいい歯はたくさんある。基本的に保険外治療の歯は年に一本にしたい。私はこの数年この保険外治療歯を夫からの誕生日プレゼントにしてもらっている。自ら言い出した。変なアクセサリーよりずっと高いし、おまけに24時間ついている。以前も書いたが、私はそれなりにお金があるのに見えるところに銀歯があるひとの価値観がよくわからない。旅行や服を我慢しても歯、というのが私だ。今年はどれにしようか悩んだ末、その歯科医で保険外治療をするのは初めてになるので、以前から気になっていた20年物のセラミックをやり替えることを選択した。私が生まれて初めてした保険外治療歯で、じいさんの歯科医におかしな形にされてしまったのを20年近くそのままにしていた。今回はかなり気に入った仕上がりになり、指摘のあった箇所とその隣を来年まとめて処置しようと計画していた。それが思ったより早く割れてしまった。
「この歯医者、やたらと高額治療を薦めているんじゃあるまいか」
 と疑心暗鬼な気持ちになっていたこと後悔した。しかし歯科医に疑心暗鬼なひとは少なくないだろう。割れたのはそもそも神経のない歯なので、入れ歯、ブリッジ、インプラントになる恐怖に怯えながらくだんの歯科医へ。

「目、どうしたんですか?」
「ああ、これね。あたし地味にボロボロなんですよ。ま、ハロウィンなんでね。季節ものです」

「精巧ですねぇ」
 結果歯根に亀裂が及んでいなかったので、差し歯で済むことが判明。前回やった歯は神経が残っていたので上物だけだったが、今度は芯も立てなくてはならない。保険内の金属芯だと硬さゆえに経年で歯根に亀裂を入れる可能性もある、とのことで保険外のグラスファイバーの芯を選択した。そもそも歯根の亀裂に怯えていたので迷いはなかった。でも予定外の大出費だ。仮歯と芯を合わせて四万近くした。これにプラス上物が10万。これが保険内だと歯一本丸ごと銀歯。けっこう見える場所で、ありえない。既にやり替えた歯と合わせて、今年の誕生日プレゼントはえらい高額になってしまった。ありがとう、そして申し訳ない、旦那様。あたしもこの予定外の出費は不本意だ。

 歯がそもそも割れているので、歯茎を切って歯根を出し、歯根にひびが入ってないのを確認したうえでそこに芯を立てる作業が行われた。歯茎を焼き切るのだ。麻酔をしているのでまったくの無感覚だったが、焼ける臭いがさほど強くないがはっきりした。自分が焼ける臭い。最近読んだ時代小説に少しだが火刑の描写があり、「ひとが焼ける臭いがした」とあったのを思い出してしまった。

 抹香臭く話をまとめると、こういうときには大難が小難になったと思って、さらなる謙虚と感謝で日々を満たせ、といったあたりか。所詮しょうもない日常ではあるが、小さなことでも世の中や周りのひとの為になることし、地味にコツコツ劫を払って徳を積む。起こったことはどれも命に別状はないし、歯も最悪の事態は逃れたかっこうだが、それにしてももう打ち止めにしてほしい。そういえば去年車上荒らしにあってゴルフバッグをパクられたのも10月だった。あたしにとって10月は厄月なのか。よくある東洋占術では、基本11月~1月、もしくは12月~1月のハズなんだけどな。

 

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