9月15日に亡くなった樹木希林の遺作となった映画の原作本。映画は見ていないが、映画と原作本ともに評判がいいようなので読んでみることにした。
著者である森下典子さん(映画では黒木華)は近所に住む「武田のおばさん」(樹木希林)がお茶の先生であることを知る。
「華やかではないけれど身ぎれいで、気さくだけど、どこか毅然としている」
そのへんの中年女性にはない魅力を武田のおばさんに感じていた典子は従妹のミチコと一緒に茶道を習うことにする。本には明記されていないが表千家らしい。なんとなく始めた茶道ではあるが、二十歳から25年以上に渡り典子は武田先生に師事する。いわゆる「まともな就職」には失敗、結婚も寸前で破談。お稽古も「自分にとって意味があるのか」と幾度となく止めようかと思う。
「華やかではないけれど身ぎれいで、気さくだけど、どこか毅然としている」
そのへんの中年女性にはない魅力を武田のおばさんに感じていた典子は従妹のミチコと一緒に茶道を習うことにする。本には明記されていないが表千家らしい。なんとなく始めた茶道ではあるが、二十歳から25年以上に渡り典子は武田先生に師事する。いわゆる「まともな就職」には失敗、結婚も寸前で破談。お稽古も「自分にとって意味があるのか」と幾度となく止めようかと思う。
「(始めて13年も経つのに)いつまでたっても、間違えてばかりいる。自信がないし、気もきかない。その上、手もごっつい・・・お茶なんか、向いていなかったんだ」
典子の人生に起こる大小さまざまな事件がお稽古を通して語られ、茶道を通して典子は自分自身や人生の機微を知り、経験する。
「今という季節を、(お稽古を通じて)視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚の五感ぜんぶで味わい、そして想像力で体験した。毎週、ただひたすら」
その世界について知らないひとも楽しめる、なんていいながら、実はそれなりの予備知識がないと楽しめない本というのはちょいちょいあるが、この作品については本当に問題ない。茶道を数十年習いながら、茶道をまったく知らない人間の立ち位置地に降りてこられる著者の知性には敬意を表する。もちろん茶道に興味はあったほうが楽しめるが、茶道を自分で習う気がなくても問題ない(わたし)。茶道を始めようかな、と考えているひとには充分役立つ。習い事としての茶道を軸に20代から40代にかけての女性を綴ったエッセイとして上等な作品だ。
それにしても本格的に茶道に取り組もうと思ったら、道具から軸からなんやらなんやらで、相当なお茶関連のものを取りそろえなくてはならず、こりゃ大変だと思った。お金も置き場所も。干支の茶碗だけで12個もある。しかも登場は12年に一度。知り合いにお茶の先生が二人いるがお二人ともそうなんだろうか。
「今という季節を、(お稽古を通じて)視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚の五感ぜんぶで味わい、そして想像力で体験した。毎週、ただひたすら」
その世界について知らないひとも楽しめる、なんていいながら、実はそれなりの予備知識がないと楽しめない本というのはちょいちょいあるが、この作品については本当に問題ない。茶道を数十年習いながら、茶道をまったく知らない人間の立ち位置地に降りてこられる著者の知性には敬意を表する。もちろん茶道に興味はあったほうが楽しめるが、茶道を自分で習う気がなくても問題ない(わたし)。茶道を始めようかな、と考えているひとには充分役立つ。習い事としての茶道を軸に20代から40代にかけての女性を綴ったエッセイとして上等な作品だ。
それにしても本格的に茶道に取り組もうと思ったら、道具から軸からなんやらなんやらで、相当なお茶関連のものを取りそろえなくてはならず、こりゃ大変だと思った。お金も置き場所も。干支の茶碗だけで12個もある。しかも登場は12年に一度。知り合いにお茶の先生が二人いるがお二人ともそうなんだろうか。
文章も平易で簡潔で、読みやすい。所々「・・・・」の要らん使用があるのは気になったが。あたしは「・・・」の不用意な使用が嫌いなのだ。センスを疑う。マンガや脚本じゃないんだから。一番ひどかったのは池波正太郎「真田太平記」。こりゃマジひどい。濫用とはこのことだ。次いで「最後の秘境 東京藝大」。この二作に比べたらほんの数か所という程度。「・・・」なんかより注文をつけたいのは、自身の結婚が破談になったエピソード等についてもう少しつっこんで具体的に書いてほしかった点だ。お茶の稽古についての本だから、ってことなんだろうけど、エピソードの血肉が欲しいよな。良くも悪くも「品行方正な優等生」の本で、物足りないといえばこの点だ。もっと自分を晒す気があれば、この優等生的物足りなさを払拭できるネタだ。
「武田のおばさんは中年女性が集団になったときに発するキンキンした甲高い声で話すことがなかった」。
刺さるわ。あたしなんて中年女性になる前からまさにコレ。猛省しなければならない。でもいざその場になると、とたんにスイッチが入って、周りからすれば自分がどんなに耳障りな声で話しているかを忘れてしまう。
刺さるわ。あたしなんて中年女性になる前からまさにコレ。猛省しなければならない。でもいざその場になると、とたんにスイッチが入って、周りからすれば自分がどんなに耳障りな声で話しているかを忘れてしまう。
機会があれば映画も見たいな、と本を読んで思った。様々な茶道具やお茶菓子、茶花、空間の描写も画で見たほうがわかりやすいに決まっている。25年という年月のこともあり、主人公が黒木華には思えなかったが、武田先生は樹木希林を思い浮かべていた。本当は先生ももっと若いはずで、年齢は合わないんだけど。それにしても。「唯一無二」というが、女優・樹木希林はまさにそれだった。奇を衒うことなくオリジナル。その知性、感性は最晩年まで瑞々しいままで、老いてぼやけることがなかった。その言葉にはよくはっとさせられた。
(新潮文庫 550円)
※追記:映画はチラっと見て惹きこまれず中途挫折しました。