「あぶない刑事」の続編タイトルみたいな展開ですが。
 土曜日に二人で家に帰ってきたら、夫の携帯にメールが来ていた。それを見た夫が、
「同級生が脳血栓かなんかで入院したみたい」
 と言った。私はたまに夫に連絡してくる学生時代の男友達かと思ったので、そのメールを見たら、元嫁だった(最初の)。私は携帯を見ていいことになっていて、元嫁は夫の中学の同級生だ。
 夫には元カノ、元嫁からの特に用件のないつれづれメールには返信しないようにと約束をとりつけてある。元嫁のメールの内容はというとだいたい以下の通り。
「(中学の同級生の)○○君が脳血栓だかで入院したようです。入院の状況等はわかりません。後遺症が残るとか残らないとか。うちの夫も余命半年と宣告されました」
 元嫁の現在の夫(二人の間には娘がひとり)が死を前提にして長く闘病していることは夫に既に知らされており、これはいわば「追加情報」なのだが、なぜこんな連絡を夫にしてくるのか。彼女は夫が再々婚していることを知っている。
「まあ、中学の同級生だからね」
 ではなぜ、他の同級生はその入院のことについて連絡してこない? 夫と元嫁は中学のときから交際していたわけではなく、社会人になって地元仲間が同じ飲み屋に集まるようになったことが交際から結婚に至るきっかけらしい。
「本当にあなたの元嫁はケジメがないよね」
 彼女の夫が余命いくばくもない、ということを知らされて、夫にどうしろ、何を感じろというのだろうか。誰かに話したいというなら、それを他人の夫になっている元夫を選ぶのは間違っている。夫の二番目の嫁は一切連絡をしてこない。これが子供を作らずに離婚した夫婦の「普通」じゃないかと私は思っている。
 元嫁がうちの夫に連絡を再開するようになったのは、二人が離婚してから10年以上が経過、夫が二度目の離婚をしてからだ。つまり私と出会う以前の話で、元嫁にすれば私との再々婚は敢えてメールを中断する理由にはならないのだろう。地元の友達に夫の再離婚と既に変えられていたうちの夫の連絡先を聞いたらしい。夫から聞いた離婚経緯からすれば、夫が独身になったからといって連絡してくる彼女も私には理解できない。私が夫と結婚しなければ元妻のこんな行動も、
「そういうこともあるんじゃない~? そういう心理を探ると男女関係って面白いよね~」
 なんて言ってそうだが、当事者になるとそうもいかない。
「クリちゃんのまわりは、ケジメがない人が多いからね」
 と冗談めかす夫。しかし私には冗談でもなんでもなく、本当にそう思うことが多々ある。
「本当だよね。借金も返さないし」
 元嫁も知っている同じ地元の友達に貸した200万の返済は滞って、この一年くらいはめっきり音沙汰がない。私が夫に対して初めて我慢ならない気持ちになったのも、婚約中にこの友達がさらに借金の申し込みをしてきて、それを夫が受け入れようとしたときだ。
 ここから大喧嘩が勃発。夫は元嫁他を批難する私を批難し始めた。私のヒステリーはそのことでさらにヒートアップした。
「メールが来たことより、そのことに対するあなたの対応がよほど問題だ」
 日曜日は二人でゴルフの練習に行く予定だったのに、そんな雰囲気もなくなり大喧嘩。夫はガミガミ言われるから、一緒に家にいたくない、と家から出て行こうとした。この家は夫のものなのに。
「一緒にいたくないなら私が出て行く、この家にひとりで残されたくない」
 玄関でもみ合いに。
「いい加減にしてくれよ!」
 と苛立った夫が玄関から去ろうとしたので、私が出て行こうと服を着替えようとした隙に夫は車の鍵を持って出て行ってしまった。
 最近別の件でも大喧嘩になり、夫への気持ちが冷めたと感じることがあった。しかしそれでも夫の人格には信を置いていた。しかし今回はだまし討ちのようなやり方で家から出て行かれた。夫に愛情を感じなくなる、人格が信じられなくなるというのは、私にとってはただ事では済まされない。結婚以来、その二つを人生の軸に生きているのに。その二つが否定されたら「夫は財布と割り切って暮らせばいい」というような簡単なことでは済まされない。夫の私への愛情がなくなるのも怖いことだが、私の夫への愛情が冷めることの恐怖をまざまざと感じた。
 夫は結局一時間ほどで帰ってきた。
「もういろいろ言う気はないけどさ、今度一緒にいたくない、と思ったら私が出て行くから、あんなだまし討ちみたいなやり方は止めてね」
「ハナちゃんに出て行け、なんて言わないよ」
 気弱そうにつぶやく夫。
「そんなこと言ってるんじゃないの。私が出て行くから、あんなだまし討ちみたいなやり方で出行くのは止めてっていってるの。約束して」
「わかったよ」
 もし私に十二分な収入があったら、離婚はしないまでもあっさり出て行ってしまいそうな気はする。単なる交際と結婚の違いもここにある。揉め事が起こったときに距離がとれない。それが吉と出る場合もあるし、そうでないときもあるだろう。
 大喧嘩の翌日、頭痛に悩まされて寝ていたら実家の母親から電話があった。ぶっきらぼうな私の口調に疲れているのか、ときくので、うん、疲れてるよ、と事情を話した。すると、
「そもそも携帯をみるあなたが間違っている。男女の仲を前提にしたわけでもないし、二人のやりとりについてあなたが口を挟むべきではない」
 話が通じないようなので電話を切るね、と乱暴に受話器を置いた。
 

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★今週の出来事★
10/7 第91回凱旋門賞。オルフェーヴル、これは勝ったと思ったら差されてクビ差二着! 泣ける!! ペリエのばかぁ。