猫(メス)との密着度が高い生活を送っている。夫と初デート翌日に婚約という「神がかり的」な縁があったのも、この老猫に会うためではなかったかと思えるほどだ。そう言うと夫は、
「何をバカなことを・・・」
 と言うが、現在夫婦喧嘩をすると、
「ハナちゃんはクリちゃんがいなくても、猫さえいればいいんだ」とか、
「出て行くなら猫を連れてってねっ!」
 などと言うようになった。
 うちの猫は元野良猫で、このマンションが建った10年前からこの場所に既に成猫になった状態でいたらしい。私が来た当初はその辺の雄猫に思わせぶりな態度をとっていたが、夫の知る範囲で一度も妊娠していないらしいところをみると避妊済みで、かつては飼い猫であったのではないかと思われる。顔も「飼い猫顔」をしている美形のジャバニーズボブテイルだ。
 今年の夏、夫と決定的な夫婦喧嘩をした。このときばかりは、かなりリアルに離婚を感じた。絶対だった夫との絆に地すべりが発生し、初めて夫に対する気持ちがはっきりと冷めた。ショックで寝室でひとり泣きながら寝ていたら、猫が私のわきの下に滑り込んできて、二の腕に頭を乗せて寝転び、私の顔を見てニャーニャーと鳴いた。今まで猫がこのような行動を取ったことは一度もなく、私は猫が私の気持ちに寄り添ってくれているのを深く実感した。夫がすべきことを、猫がしてくれた。まさに夫はこのとき「猫以下」だった。これ以後猫にはもっと「添い寝」をしてほしいと思っているが、あの日以来一度もしてくれない。ちなみに現在夫婦関係は一見復旧しているように見えるが、このときの問題は現在結論先送りの塩漬けになっているだけで、何も解決していない。人生先々どうなるかわからない。
 私は独身時代、めだかを買って約30年というキャリアの持ち主だった。これも猫同様自主的に飼ったのではなく、母がもらってきたのがつがいのめだかだった。どちらも「行きずりの関係がなし崩しに腐れ縁」だ。言うまでもないが、めだかと意思の疎通はなかなか図れない。しかし猫は想像以上に意思の疎通があった。正直驚くべきレベルだ。作家・村上春樹のある飼い猫は日本語を解しているとしか思えなったそうだが、うちの猫にもそんな風情が見え隠れする。明らかに「聞こえないふり」をしていることもよくある。
 うちの猫は当初は夫がテラスでエサをあげていただけだったが、大怪我をしたり、病気もちの野良猫が近所で繁殖したりと、様々な経緯を経てどんどん家猫化していった。以前は真冬だろうと外だったが、現在は夜は家の中だ。しかし明け方四時ごろ、よくニャーニャーと寝室に入ろうとしたり、ドアが開いていれば入ってきて頭の周りをウロウロして鳴く。エサがほしいのかと思うと、そうではないようだ(そういうときもある)。何を激しく要求しているのかよくわからないが、私はこの時間になると、猫も寂しくなるのかなあ、などと予想している。しかし「ひと恋しい」ときはこのときくらいで、満腹ならだいたいは「ほっといてくれ」という風情が多い。ちょっかいを出されるのは嫌いだが、「家族三人」でいるのは好きなようで、夫婦で居間にいると間に落ち着きたがる。気が向くとひざに乗ってくる。
 結婚する以前、猫好きの友人から飼い猫の死に深く落ち込んでいるというメールが来た。
「周囲に”でも死んだのが人間でなく猫でよかった”というようなニュアンスが見え隠れしていてつらい」
 と書いてあり、牽制されたな、と思った。当時私は「猫(犬)は家族」なんて、はっきり言ってバカにしていた。それが今では「うちは三人家族」と心から思っている。猫と夫婦三人で寝室でゴロゴロしているときがいちばん幸せだ。
 今でも昼間天気がいいと日向ぼっこをしたがるので、テラスに出す。ひとり散歩にも出かけている。夫は猫がいつ死んでもおかしくないおばあちゃんだとよく言う。猫は死体をみせずに静かに去っていくという。当初は是非そうしてもらいたい、死体なんて出たらどうしよう、と思っていた。めだかと違って猫は死体がでかい。しかし今は家で老衰で死んでほしいと思っている。散歩に出たらそのまま帰ってこなくなった、となったら、私はいつまでも待ってしまうだろう。実際夫がこのマンションに住んで10年、数ヶ月姿を見せなかったこともあったらしい。死んだかいなくなったか、と思っていたら、ある日ひょっこり「エサをくれ」と姿を見せたそうだ。
 うちの猫は近所でも「最近太った」と評判で、夫は「ハナちゃんのせいだ」と繰り返し言う。夫が猫は犬と違ってムダ食いをしない、と繰り返し言うので、じゃあ求められる分だけあげていいんだな、と勘違いしていた。結局「だからって求められる分だけあげてはいけない」そうで、現在適正量を測って朝と夕にあげている。猫も太ると健康を害するし、最近飛び上がるとき、いかにもからだが重そうだ。規定量だけあげるようになると、もちろん足りないので、平らげたのちにかなりしつこく要求してきた。柱で爪とぎして注意を引き、叱りに行くとエサ皿に歩いていく。「外に出たいの」とテラスの扉の前に立つので、扉を開けてやりに行くとエサ皿に歩いてく。その度に、
「ご飯はもう終わり!」
 と言って要求を無視するのも大変だった。しかし最近「わかって」きたのかしつこさは軽減してきたし、そしてやや細くなってきた。
 当初私は夫に猫のエサを買っておいてといわれてその高さを忌々しく思っていたが、現在は予防接種からノミの駆除の薬、健康にいいエサ、猫の遊び道具に、家の中とテラスに設置したトイレ、猫砂、爪とぎ板(家の柱も相当削られた)、テラスと室内用の猫ベッドとクッション等、「金に糸目をつけず」購入。近所の方と市のボランティア活動にも登録し、協力動物病院と近所の野良猫たちの虚勢・避妊手術を実行している。

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12/12 今年の漢字は「輪」だそうです。オリンピック招致決定により。