8月前半に観た映画 | やせっぽちのヒロシのブログ

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趣味は国際交流?(笑)。

今月もなんだかんだと面白い映画がありますね。

 

能登の雄大な自然を背景に、ひとりの女性の喪失と再生を描いたヒューマンドラマ。独立系制作プロダクション「テレビマンユニオン」のドキュメンタリーディレクターとして活躍してきた是枝裕和の映画監督デビュー作で、原作は宮本輝の同名小説。
12歳の時に祖母が失踪したゆり子は、祖母を引き止められなかったことをずっと悔いていた。大人になり結婚し、息子の勇一を授かり、幸せに暮らしていたゆみ子だったが、ある日、動機がわからないまま夫の郁夫が突然自殺をしてしまう。再び愛する者を引き止められなかったゆみ子は、悔恨の思いを胸に秘めながら、日本海に面する奥能登の小さな村に住む民雄と再婚する。先妻に先立たれた民雄には友子という娘がいたが、勇一と友子も仲良くなり、ゆみ子は新しい家族と再び平穏な日々を過ごすが……。
第52回ベネチア国際映画祭で金のオゼッラ賞(撮影に対して)を受賞。本作が俳優デビューとなった江角マキコが主人公ゆみ子役を務め、第19回日本アカデミー賞で新人俳優賞を受賞。郁夫役に浅野忠信、民雄役に内藤剛志。そのほか大杉漣、木内みどり、柄本明らが共演した。2024年8月、同年1月に能登半島で起きた地震で大きな被害を受けた、本作の舞台でもある石川県輪島市を支援するため、デジタルリマスター版でリバイバル公開。

1995年製作/110分/G/日本
配給:テレビマンユニオン
劇場公開日:2024年8月2日

その他の公開日:1995年12月9日(日本初公開)

 

☆是枝裕和の長編映画監督デビュー作ということですが、今回の再公開は勿論今年の元旦早々に能登を襲った震災からの復興支援の一環で、奇しくもこの映画に収められた30年前の輪島の街並みや海岸の映像が今となっては貴重な文化遺産記録となってしまったように思います。祖母の失踪を引き止められなかった子供の頃の記憶、結婚し息子の生まれた矢先に突然動機不明のまま自殺してしまった夫という二つの悔恨を秘めながら、新たな伴侶を得てそれまでとは違った環境での暮らしに溶け込もうとしながらも、かつての思いからも抜け出せずに苦悶する主人公の心の葛藤にリアリティを感じました。

引退してしまった江角マキコをはじめ、大杉漣、木内みどり、市田ひろみ、桜むつ子、寺田濃といった今は亡き人たちの在りし日の姿が懐かしかったです。

 

アドルフ・ヒトラーの南米逃亡説をモチーフに、ホロコーストを生き延びた老人の隣家にヒトラーそっくりな男が越してきたことから起こる騒動を描いたドラマ。
1960年、南米コロンビア。ホロコーストで家族を失いながらも1人生き延びた男ポルスキーは、町はずれの一軒家で穏やかな日々を過ごしていた。そんな彼の隣家に、15年前に56歳で死んだはずのヒトラーに酷似したドイツ人ヘルツォークが引っ越してくる。ユダヤ人団体に隣人がヒトラーだと訴えるも信じてもらえず、自らの手で証拠をつかもうとするポルスキーだったが、いつしか互いの家を行き来するようになり、チェスを指したり肖像画を描いてもらったりと交流を深めていく。そんなある日、ポルスキーはヘルツォークがヒトラーだと確信する場面を目撃する。
隣人をヒトラーと疑うポルスキーをテレビドラマ「ロンドン警視庁犯罪ファイル」のデビッド・ヘイマン、ヒトラーだと疑われるヘルツォークを「スワンソング」のウド・キアが演じ、これが長編第2作となるレオン・プルドフスキー監督がメガホンをとった。

2022年製作/96分/G/イスラエル・ポーランド合作
原題:My Neighbor Adolf
配給:STAR CHANNEL MOVIES
劇場公開日:2024年7月26日(以上、映画ドットコムより)

 

☆冒頭での幸せそうな家族の写真撮影のシーンから、いきなり年月を経ての一人住まいの老人のシーンとなり、それが先の家族の唯一の生き残りであったということを知るのには少し時間がかかりました。

まぁ、二人の最初の出会いを始め、色々とあり得ないだろうという設定があり、また主人公があれは絶対にヒトラーと疑うには、その隣人がこちらから見ておよそヒトラーに似ているとは思えなかったりしましたが、何とかしてその正体を暴いてやろうと画策するやり取りが滑稽ながらも面白く、そして遂に決め手を掴んだかと思いきや(まだ上映中ですのでネタバレは避けますけれど)まさかの真相には「そう来ましたか!」とちょっと意表を突かれた思いで、終わってみれば、どれだけナチスが非道なことを行なってきたかということを改めて知らしめる作品であったように感じました。

 

1998年に日本中を騒然とさせた和歌山毒物カレー事件を多角的に検証したドキュメンタリー。
1998年7月、夏祭りで提供されたカレーに猛毒のヒ素が混入し、67人がヒ素中毒を発症、小学生を含む4人が死亡する事件が起こった。犯人と目されたのは近所に住む林眞須美で、凄惨な事件にマスコミ取材は過熱を極めた。彼女は容疑を否認しており、2009年に最高裁で死刑が確定した後も獄中から無実を訴え続けている。
最高裁判決に異議を唱える本作では、当時の目撃証言や科学鑑定への反証を試み、保険金詐欺事件との関係を読み解いていく。さらに、眞須美の夫・健治が自ら働いた保険金詐欺の実態を語り、確定死刑囚の息子として生きてきた浩次(仮名)が、母の無実を信じるようになった胸の内を明かす。
監督は、「不登校がやってきた」シリーズなどテレビのドキュメンタリー番組を中心に手がけてきた二村真弘。

2024年製作/119分/日本
配給:東風
劇場公開日:2024年8月3日(以上、映画ドットコムより)

 

☆勿論あの事件は今もしっかり記憶に残っていますが、既に四半世紀経っていたのですね。

平日なので楽勝かと思いきや、ほぼ満席。それだけこの事件に関心を寄せている人が多いのかもしれません。

本当にこの人による犯行なのか、それとも冤罪なのか、判断は難しいところだけれど、それまでに夫と犯した保険金詐欺事件などが状況を不利にしていることは確かなようです。

夫が悪びれずに当時の犯行を語る場面には、その能天気さに頭がクラクラしてしまいました。

年月を経ていることで、証人も減っていくことでしょうし、残念ながら帝銀事件同様に真相がわからないまま幕を引きそうな気がします。

 

 

超巨大竜巻が多数発生したオクラホマを舞台に、知識も性格もバラバラな寄せ集めチームが竜巻に立ち向かう姿を描いたアクションアドベンチャー。
ニューヨークで自然災害を予測して被害を防ぐ仕事をしている気象学の天才ケイトは、故郷オクラホマで史上最大規模の巨大竜巻が連続発生していることを知る。彼女は竜巻に関して悲しい過去を抱えていたが、学生時代の友人ハビから必死に頼まれ、竜巻への対策のため故郷へ戻ることに。ケイトはハビや新たに出会ったストームチェイサー兼映像クリエイターのタイラーらとともに、前代未聞の計画で巨大竜巻に挑む。
「ザリガニの鳴くところ」のデイジー・エドガー=ジョーンズが気象学の天才ケイト、「トップガン マーヴェリック」のグレン・パウエルがストームチェイサーのタイラー、「トランスフォーマー ビースト覚醒」のアンソニー・ラモスがケイトの友人ハビを演じた。「ミナリ」のリー・アイザック・チョン監督がメガホンをとり、「レヴェナント 蘇えりし者」のマーク・L・スミスが脚本を担当。

2024年製作/122分/G/アメリカ
原題:Twisters
配給:ワーナー・ブラザース映画
劇場公開日:2024年8月1日(以上、映画ドットコムより)

 

☆主役の女性は以前何かで見たことがあるなと思っていたら「ザリガニの鳴くところ」の主役だった人だったのですね。ハラハラさせられ通しのストーリーはとても面白かったものの、巨大竜巻に巻き込まれてあらゆるものが吹き飛ばされ破壊されていくさまを見ていると、何だか怪獣映画でも観ているような気分になりますが、同時にその被害の傷跡を見せられると今年の能登半島の震災の今も手付かずのままでいる被災地も連想してしまい、何とも複雑な気分になりました。

ちなみに私は通常のスクリーンで観てしまいましたが、映像の迫力はやはりIMAXかDolby Atmosといった大きなスクリーンとサウンドが体感した方がより楽しめると思います。

 

2018年製作のフランス映画「パリ、嘘つきな恋」をイタリアでリメイクし、プレイボーイの会社社長と車椅子に乗ったバイオリニストの恋の駆け引きを描いたハートフルなラブコメディ。
有名シューズブランドを経営する49歳のハンサムな独身男性ジャンニ。プレイボーイで女性を口説くためなら手段を選ばない彼は、新たなターゲットを誘惑するため車椅子に乗って憐れみを誘おうとする。障がい者に対して抱く唯一の感情が“憐れみ”であるジャンニだったが、車椅子テニスに情熱を注ぐバイオリニストのキアラと出会い、これまで経験したことのない感情に揺さぶられていく。
「シチリアーノ 裏切りの美学」のピエルフランチェスコ・ファビーノがジャンニ、「インビジブル・ウィットネス 見えない目撃者」のミリアム・レオーネがキアラを演じた。監督は「これが私の人生設計」のリッカルド・ミラーニ。「イタリア映画祭2023」では「あなたのもとに走る」のタイトルで上映された。

2022年製作/113分/G/イタリア
原題:Corro da te
配給:オンリー・ハーツ
劇場公開日:2024年7月26日(以上、映画ドットコムより)

 

☆隣人の早合点から身障者を装いその隣人のセクシーな女性を口説こうと目論むプレイボーイ社長、その女性からは本物の身障者で魅力的な才女の姉を紹介され、初めは悪友たちとの賭けから偽ったまま付き合うようになるうちに、段々彼女に真剣に恋をするようになり...という割と陳腐なストーリーながらも、会話の面白さもあり、最後まで楽しく観てしまいました。

時折やけにファンタジックになる映像も良かったです。

おそらく実際の身障者の方々の中には不快な思いをされる方もおられることでしょうが、個人的にはこうした単純明快でおめでたいストーリーは大好きです。それにしても、その身障者キアラ役のミリアム・レオーネがあまりにも魅力的過ぎます^^;

 

フランスの作曲家ラベルによる不朽の名曲「ボレロ」の誕生秘話を描いた音楽映画。
1928年、パリ。スランプに苦しむモーリス・ラベルは、ダンサーのイダ・ルビンシュタインからバレエの音楽を依頼される。彼は失ったひらめきを追い求めるかのように自身の過去に思いを馳せながら、試行錯誤の日々を経てついに傑作「ボレロ」を完成させる。しかし自身のすべてを注ぎ込んで作り上げたこの曲に、彼の人生は侵食されていく。
「黒いスーツを着た男」のラファエル・ペルソナがラベル役で主演を務め、ラベルの生涯にわたるミューズとなったミシアを「ベル・エポックでもう一度」のドリア・ティリエ、ダンサーのイダを「バルバラ セーヌの黒いバラ」のジャンヌ・バリバールが演じた。監督は「ココ・アヴァン・シャネル」「夜明けの祈り」のアンヌ・フォンテーヌ。ブリュッセル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏による「ボレロ」に加え、ヨーロッパを代表するピアニストの1人であるアレクサンドル・タローがラベルの名曲の数々を演奏した。

2024年製作/121分/G/フランス
原題:Bolero
配給:ギャガ
劇場公開日:2024年8月9日(以上、映画ドットコムより)

 

☆「ボレロ」と言うと、思い出さずにはいられないのがもう40年くらい前だったかの映画「テン」でのボー・デレクです(笑)。シンプルな反復のメロディが次第にダイナミックで壮大な展開を見せていく一度聞いたら忘れられない名曲ですね。映画の最後に「世界のどこかで15分に一回ボレロが流れている」みたいな解説がありましたが、確かにそれは大袈裟ではないかもしれません。

この映画も最近の伝記映画同様、モーリス・ラヴェルの生涯を描くのではなく「ボレロ」が生まれるまでの苦闘、そしてそれが大成功を収めてしまった故の重圧と苦悩、更に晩年の彼を襲う病魔に苦しめられる姿に絞られていますが、ちょっと時系列的にわかりづらいところがあったように思いました。

ちなみに私個人はラヴェルなら「亡き王女のためのパヴァーヌ」の方が好きだったりしますが、どうでもいいですね^^;

 

韓国の4人組ガールズグループ「BLACKPINK」が2022年から23年にかけて敢行したワールドツアー 「BORN PINK」を記録したドキュメンタリー。
2016年8月に韓国でデビューした同グループは、日本では翌17年に新人としては異例となる日本武道館でのデビューショーケースを開催、デビューミニアルバム「BLACKPINK」はオリコンアルバムランキングで1位を獲得するなど、大きな話題を集めてきた。さらに22年リリースのセカンドアルバム「BORN PINK」ではグローバルリスナーの心も掴み、ワールドツアーでは全世界で180万人もの観客を動員した。
本作ではそのツアーの模様をカメラに収め、グローバルファンや海外メディアの賞賛を集めた韓屋瓦屋根ステージセットや、このツアーでしか見ることのできないライブパフォーマンスなど、数々のシーンにシネマアレンジを施してスクリーンに映し出す。

2024年製作/92分/G/韓国
配給:エイベックス・フィルムレーベルズ
劇場公開日:2024年8月8日(以上、映画ドットコムより)

 

☆実は何年か前にアメリカのコーチェラ・フェスティヴァルでのパフォーマンスを偶然に配信で観て以来、BLACKPINKは気になっているグループだったもので。

世界各地での彼女らのコンサートの映像が繋がれていますが、昨年のテイラー・スウィフトの映画同様余計なシーンは全くなく、編集の良さもあって、一つのコンサートを丸ごと観ているような流れになっており、演奏も自国ではなく海外のミュージシャンを使い聞き応えたっぷりですし、何よりも当人たちの前向きなパワーが全開といった感じで、期待以上にかっこよくスケールの大きな素晴らしいエンターテインメントを90分たっぷり楽しませてもらいました。

映画にしても音楽にしてもこのところの韓国の躍進ぶりには著しいものがあると思います。アイドル系のJ-POPはもう完全にK-POPに水をあけられてしまいました。

 

メキシコの新鋭リラ・アビレス監督が、離れて暮らす父と再会した少女の揺れ動く心をみずみずしく描き、世界各地の映画祭で注目を集めた人間ドラマ。
ある夏の1日。7歳の少女ソルは大好きな父トナの誕生日パーティに参加するため、母と一緒に祖父の家を訪れる。病気で療養中の父と久々に会えることを無邪気に喜ぶソルだったが、身体を休めていることを理由になかなか会わせてもらえない。従姉妹たちと遊びまわることも、大人たちの話し合いに加わることもできず、いらだちや不安を募らせていく。ようやく父との再会を果たしたソルは、それまで抱えていた思いがあふれ、新たな感情を知ることになる。
主演は映画初出演のナイマ・センティエス。2023年・第73回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品され、エキュメニカル審査員賞を受賞。

2023年製作/95分/G/メキシコ・デンマーク・フランス合作
原題:Totem
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:2024年8月9日(以上、映画ドットコムより)

 

☆末期癌でおそらくこれが最後の誕生日パーティーになるであろう父親トナ、そこに集まる親族たちの治療費などをめぐる厳しい現実のやり取り、初めはただ父に久しぶりに会える喜びにワクワクしていた娘のソルが次第に父親の深刻な状況を察してきて、そんな中行われたパーティーで気丈に振る舞うトナ、そしてそれが文字通りの最後の晩餐となってしまう訳ですが、多くの登場人物がそれぞれに動き回ることもあり、そうした散らかり具合が妙に現実感があって、物語というよりは何か記録映画を観ているような気分になりました。ということで、映画に何を求めるかで評価が分かれそうですが、個人的には具体的な場面や会話ではなく情景描写で結末を観客に悟らせる手法とそこでのソルを演じた女の子の表情の演技が肝でした。

 

「スノーマン」「さむがりやのサンタ」で知られるイギリスの作家・イラストレーターのレイモンド・ブリッグズによる絵本を原作に、核戦争の恐怖を描いた1986年製作の名作アニメ。
イギリスの片田舎で平穏に暮らすジムとヒルダの夫婦は、二度の世界大戦をくぐり抜け、子どもも育て上げ、いまは老境に差し掛かっている。そんなある日、2人は近く新たな世界大戦が起こり、核爆弾が落ちてくるという知らせを聞く。ジムは政府が配ったパンフレットに従ってシェルターを作り備えるが、ほどなくして凄まじい爆風に襲われる。周囲が瓦礫になった中で生き延びた2人は、政府の教えに従ってシェルターでの生活を始めるが……。
監督は、長崎に住む親戚を原爆で亡くしているという日系アメリカ人のジェームズ・T・ムラカミ。音楽をロジャー・ウォーターズ、主題歌をデビッド・ボウイが手がけたことも話題。日本語吹替え版は大島渚が監修し、ジムとヒルダの声を森繁久彌と加藤治子が担当した。1987年に日本初公開。2008年7月、デジタルリマスター版が公開。2024年8月にも吹き替え版でリバイバル公開。

1986年製作/85分/イギリス
原題:When the Wind Blows
配給:チャイルド・フィルム
劇場公開日:2024年8月2日

その他の公開日:1987年7月25日(日本初公開)、2008年7月26日(以上、映画ドットコムより)

 

☆昔公開された時に観たいと思いつつ逃してしまった作品。当時のまま森繁久彌と加藤治子の吹き替えヴァージョンが使われています。

戦争が始まり、核爆弾が使われるという危機感から政府が配ったパンフレットに沿って作られたシェルターのお粗末ぶりには苦笑いするしかありませんでしたが、楽観的なまでに政府を盲信し、実際に爆弾が落とされて被爆してからも、救いの手がさしのべられることを信じて、汚染された食物で腹を満たし雨水で喉を潤し、次第に症状が悪化していく中、ひたすら助けが来るのを待ち続ける姿に、観ていてジワジワと恐怖が伝わってくる映画でした。

そして何やらキナ臭い世相になりつつある日本の将来がこんなことになりませんように。