1940年代、人種差別の撤廃を求める人々が国に立ち向かった公民権運動の黎明期。合衆国政府から反乱の芽を潰すよう命じられていたFBIは、絶大な人気を誇る黒人ジャズシンガー、ビリー・ホリデイの大ヒット曲「奇妙な果実」が人々を扇動すると危険視し、彼女にターゲットを絞る。おとり捜査官としてビリーのもとに送り込まれた黒人の捜査官ジミー・フレッチャーは、肌の色や身分の違いも越えて人々を魅了し、逆境に立つほど輝くビリーのステージパフォーマンスにひかれ、次第に彼女に心酔していく。しかし、その先には、FBIの仕かけた罠や陰謀が待ち受けていた。(以上、映画ドットコムより)
何と大げさなタイトルだろうと半ば呆れながらも、やはりビリー・ホリデイを、それも彼女の代表作とも言える「奇妙な果実」をめぐる当時の社会背景を描いたエピソードということで、楽しみにしていた映画でした。
実際に観て、その歌の社会的な影響については出演者の会話から語られるのみで、途中リンチで殺された母の遺体に号泣する子供たちの姿を見て憤るビリーの場面はあったものの、それを主軸としてストーリーを展開するのにはちょっと弱かったように思えましたし、そもそもストーリー自体がかなり大雑把なところがあったり、彼女とドラッグの関わりについてもイマイチ不鮮明さを感じたりもしましたが、それらは主演のアンドラ・デイのビリー・ホリデイになり切ったかのような演技と歌唱の素晴らしさで、それほど気にはなりませんでした。
アンドラ・デイについては僕は名前くらいしか知らず、彼女のアルバム・ジャケットは記憶にはあったものの、ちゃんと聴いたことは一度も無かったと思います。 実際映画で彼女の歌を聴いて、ビリーの声のイメージを崩さず、節回しなどもビリーに似せた歌い方をしていることに、昨年観た「リスペクト」でアリサ・フランクリンの役を演じたジェニファー・ハドソン同様、かなり熱心に研究していたであろうことは想像がつきます。 どういう経緯で彼女がこの役に抜擢されたのかは知りませんが、何しろアンドラ・デイという名前からして、文字通りビリーの愛称であるレイディ・デイということになり、これほど相応しい名前はないだろうと思ってしまいましたけれども、 後から知った話では本名ではなく実際にビリーへの憧れもあり、レイディ・デイに因んで付けた芸名とのこと。以前見ていた写真ではもっとふっくらとしたイメージでしたが、ビリーに体型を合わせるためにかなりダイエットしたのではないでしょうか?
演技も正に体当たり的な感じで、性に関してもかなり奔放だったと伝えられているビリーを文字通り体を張って表現していましたし、今後もまた色々なオファーが来るのではないでしょうか。
またビリーにとっては大切なパートナーの一人であったサックス奏者のプレスことレスター・ヤングや始めの方にチラッと出てくるルイ・アームストロングを演じたそれぞれの男優も、よくこういう人を探し出してきたなと思うくらいに本人の雰囲気がよく出ていたと思います。
40代の若さで死んでしまった彼女を描く以上、勿論ハッピー・エンドを期待したりはしませんでしたが、重苦しく終わった後のエンドロールでのアンドラ・デイとジミー役のトレバンテ・ローズのダンス・シーンに救われた思いでした。何度もドレスの裾を踏むジミーに「これはプラダなんだから」と言うと「この時代にプラダは無かった」と返すやり取りが面白かったです。
