緊急事態宣言は5/12以降も延長されてしまいましたが、都内のシネコンは依然休館しているものの、ミニシアターの方は時短や席数を減らすなどして営業を再開することになりました。もっともこちらの上映館はずっと営業し続けており、GWの最中に行った際には満席で入れず、今回はたまたま通院のため休みを取っていたので、その帰りに寄って観たものでした。
ベトナムから来た技能実習生の3人の女の子たちが、1日15時間労働で土日も休めず残業代すら払われない過酷な職場から逃げ出し、青森の漁村へ辿り着いて、ブローカーから新たな仕事を提供してもらい、家族への仕送りの為に「不法就労者」としてのリスクを背負いながら一生懸命働き始めるのですが...
これから観る人のためにネタバレにならないように紹介してほしいというプロデューサーの要望があり、その先のストーリーは書きませんが、一応フィクションの体裁を取ってはいるものの、藤元監督の妻であるミャンマー人女性の実体験なども元になっているそうで、本来は「技能実習生」として高い技術を学び取り自国へそれを持ちかえるという夢を持って各国からやって来た若者たちを騙すようにして、日本人が就きたがらない職場で実質使い捨て労働者として安い給料でこき使うという、この国の実態が浮き彫りになっています。
医者にかかりたくても保険証と在留カードは元の職場に預けたままなので、いざという時には高いお金を払って偽造してもらわなければならない上に、それがバレれば捕まってしまう。
そんな不安に怯えながらどこまでも搾取され続ける彼女たちの、それでもここに留まり家族のために働き仕送りする姿には切なくなってしまいますし、この国の日常で安く良い品を供給されている裏にはこうした犠牲があることも改めて考えさせられました。
この日は丁度都内のミニシアターが営業再開していたことで、他にもいくつか観たい映画があったものの、「海辺の彼女たち」を観た後では時間が折り合わず、ならばと同じポレポレ東中野でその後に上映されたこの映画を観ることにしました。
新作ではなく、元々は東海テレビが制作した2016年のドキュメンタリーを劇場用に再編集し2017年に公開された作品の再上映だそうです。
かつて日本住宅公団で数々の都市計画に携わってきた津端修一さんと妻の英子さんの日常を追ったもの。自身が計画した愛知県高蔵寺のニュータウンが高度経済成長期の中で理想とは程遠い無機質な大規模団地になってしまったことで、次第にその仕事から離れていき、自身は高蔵寺に土地を買って家を建て住み続け、雑木林を育て、その地域の環境を少しずつ変えていき、そこで野菜や果実も収穫できるまでになります。
そんな生活を続けて90歳となった修一さんの元に、佐賀県伊万里市のクリニックから新たな依頼が....
昨年観た「花のあとさき ムツばあさんの歩いた道」同様、地味ながらも自分の生きてきた証しを残した人たちはそれぞれに魅力を感じます。
前日に急遽観ることに決めた映画でしたが、ご夫妻の豊かな人間性と仲睦まじさにほのぼのとする一方、修一さんの穏やかな表情の中に秘められた確固たる信念と理想が画面からも伝わってきて、胸が詰まる思いでした。
それを支え続けた英子さんのおおらかさや細かい配慮にもまた和まされます。
そしてプラスティック製品は一切使わないというこだわりと、身の回りにある手作りや手描きの品の数々、とりわけお孫さんのために作ったというドールハウスには何とも言えない温もりを感じました。
ナレーションの樹木希林が何度も繰り返す
風が吹けば、枯れ葉が落ちる
枯れ葉が落ちれば、土が肥える
土が肥えれば、果実が実る
コツコツ、ゆっくり
という言葉が、観終わった後も、心に反復されています。
ちなみに私の住んでいる都内の団地も修一さんの携わったプロジェクトだったそうで、「(団地が)スタートした当初は似た住棟が無機質にズラリと隙間も少なく整列していたのに、ある時期からは道は緩やかにカーブし、住棟も少しずつ方向を変えて並び、見通しも利くようになり、緑も増え、有機性が現れてくる」と映画のパンフレットに解説として書かれた建築家:藤森照信氏の指摘されている通りの造りになっていました。道端には多くのソメイヨシノが植えられ、春は桜の花で覆われたものでした。
その後老朽化のため建て替えられてしまいましたが、新しくなっても基本的なコンセプトは踏襲されているように思います。