ビーバップ!ハイヒール「選手より面白い?審判ストーリー」 サムライジャッジと世紀のジャッジ | テレビ番組 時事ネタなど書いていきます。はい。

ビーバップ!ハイヒール「選手より面白い?審判ストーリー」 サムライジャッジと世紀のジャッジ

サッカーワールドカップ、
昨年の南アフリカ大会では、
日本代表の奮闘が注目を浴びましたが、
日本人の奮闘は選手たちだけではありませんでした。
決勝で審判を務めた初めての日本人がいます。

西村雄一審判です。

西村雄一


彼が特に注目されたのは準々決勝、
カードはオランダ対ブラジルとなり、
その後半28分、オランダのロッベンに、
ブラジルのフェリペ・メロが接触、
ただのファール、またはイエローカードかと思われましたが、
西村主審はレッドカードを掲げました。

彼は見逃さなかったのです。
このプレーを。



下の動画で、上のプレーの詳細がわかります。



国家を背負って戦うワールドカップで、
一発退場を意味するレッドカードは、数的不利から
王者ブラジルの敗退の可能性を濃くします。
優勝候補ブラジルを負けに追い込むレッドカードでした。

そして、ブラジルはそのまま敗退します。

不可抗力に見せかけたこのラフプレーを見逃さず、
毅然とした裁定を見せた西村主審は世界から賞讃を浴びます。

・笛もカードも的確に試合を終えた
・ニシムラは迷いなくレッドカードを提示した
・退場シーンは明らかに故意。完璧なジャッジだった


各メディアが讃える中、
決勝・オランダ対スペイン戦では、第4審判員となり、
優勝チームと同じ金メダルを与えられました。
彼は

これは日本がもらった金メダル

だと話しています。


このような審判の世界のお話をして下さったのは、
ノンフィクションライターの織田淳太郎さん。
スポーツと、スポーツの中でも知られざる審判に関する著作が有名な方です。




競技ごとに審判の世界も様々です。

プロ野球の審判は、怪我や成績で辞めた元プロ野球選手がほとんどのようです。

プロ野球の審判といえば、
「ストライク」「アウト」「セーフ」などの声を、
球場中に響かせなくてはなりません。
そのためには発声練習が必要ですが、
どうやら、彼らはカラオケボックスでトレーニングしているようです。
街中で大声を出すためには、ここしかないそうなんです。

プロ野球では4人の審判が判定に当たりますが、
これはローテーション制で、
一塁塁審を務めた審判が翌日には二塁塁審に、
そして翌々日には三塁塁審となります。
そのため、三塁塁審を務めた夜は、
反省会が終わっても、早々に帰宅しなければならないようです。
翌日には主審となるからです。
なお、主審の翌日はお休みだそうです。

プロ野球の審判では、特に重要なのが足腰だといいます。
ストライクとボールの判定をするためには、
どの投球でも、同じ位置から見ていなければなりません。
中腰でいる時間が長くなり、
足腰が弱くては成り立たない職業のようです。



サッカーの審判の世界も独特です。
プロサッカーで笛を吹く審判たちの多くはアマチュアなんだそうです。
現在、12人しかいません。
サッカーの審判の世界では憧れのプロ審判は、
年俸も一流企業並みなんだとか。
サッカーの世界の審判にとっても、
足腰は重要です。
週に最低5日は走り込んでいるらしく、
持久力が求められる主審は、
どの選手たちの移動距離よりも多くなることも珍しくありません。



ボクシングの審判。
彼らのほとんどは他に職業を持っています。
会社の勤め人だったりする訳で、
なぜ、審判に専念しないかといえば、
ギャラが安すぎて、とてもやっていけないんだそうです。
その金額、タイトルマッチでも1試合2万円からだとか。
これでは食べていけないということで、
別に仕事をしているという訳ですが、
ボクシングの試合は午後5時集合が多いというのが問題になります。
それよりも早く会場入りしなければなりませんが、
会社勤めではなかなかまだ社を出られない時間なので、
営業の外回りに行ってくるなどの嘘で、
会社を抜け出してきている審判もいるんだとか。
試合の度には早退できず、
トイレの中で着替えつつ、上司への嘘の言い訳の電話を、
という涙ぐましい日々だったり。

審判には強い権限が与えられています。
ボクシングでは、試合を終わらせる権利も預かっています。
審判一人の裁定で、試合の勝敗を決めることが出来るのです。
パンチを食らった選手の状態により、
一瞬の判断で、TKOを宣告しなければなりません。
しかし、時にはTKO負けの選手を応援していたファンから
罵声を浴びることも。
罵声だけならまだしも、血の気の多いボクシングの世界ですので、
そういった輩に囲まれてしまうこともあるようです。
しかし、彼が試合を止めなければ、
選手は命を落としていたかもしれません。
ボクシングの審判が躊躇することは、
選手の命を危険にさらすことにもなります。
身の危険を感じつつも、
わずかのギャラなのに、
それでもボクシングの審判を続けているのは、
ボクシングという競技が好きだから、
そのひと言に尽きるようですね。



選手たちのように脚光を浴びることもなく、
しかし、それぞれの世界での苦労を抱えつつ、
奮闘しているのが審判であるようです。
国際試合を裁くテニスの審判は、
様々な言語の罵倒の言葉を理解しているんだとか。
そんなテニスの審判は、
自分もテニスをプレイヤーとして楽しんでいる時に、
ネットの向こうの相手からボールが打ち返されてくると、
ついつい見送ってしまうそうで、
どうしても、そのボールがインなのか、アウトなのかが気になる…
というような職業病もあるそうです。



次は日本中を敵に回した審判のお話。
プロ野球の世紀の判定にまつわるドラマです。

その年の日本一を決める日本シリーズで、
ただ一人選手に退場を宣告した審判、
それが岡田功審判。

1969年10月30日、所は後楽園球場。
読売ジャイアンツ対阪急ブレーブス、日本シリーズの第4戦。
4回裏、0-3で阪急がリード。
しかし、ノーアウト一三塁のチャンスで、
打席の長嶋茂雄は三振してしまいますが…
ここで巨人が仕掛けました。
ファーストランナーの王貞治にスタートを切らせたのです。
阪急の捕手・岡村浩二がセカンドへ送球するタイミングで、
サードランナーの土井正三がスタート、
いわゆるディレイドダブルスチールを仕掛け、
それを見た二塁手が直ちに送球を手前でカットして、
本塁に返球ホームへとボールを返球し、
捕手・岡村はホームベースに腰を落とした形でブロックしつつ、
この返球を受け、突入してきた土井は岡村のブロックに跳ね飛ばされました。

岡村のブロックは定評があり、
また、土井よりもずっと大柄な体格。
跳ね飛ばされた土井がホームに辿り着けたようには見えませんでした。

ビーバップ!ハイヒール「選手より面白い?審判ストーリー」

これがその時の光景です。
岡田球審の右で倒れつつ、
そして、右手でボールを掲げてアウトだとアピールしている岡村捕手、
主審の背後で足を上にして転がっているのが土井です。

このクロスプレイに岡田球審は「セーフ」、
とホームインを認めてしまいました。
確実に土井を跳ね返したという自信のある岡村捕手は、
なぜ、これがセーフなんだと怒り心頭、
キャッチャーミットや素手で球審を殴打、
主審は岡村に退場を宣告します。

後楽園にいたファンも、テレビを見ていた人も、
阪急ファンも、巨人ファンも皆、アウトだと確信しました。
そして、この「世紀の大誤審」には非難が殺到することになりました。

阪急は岡田球審に報復を始めます。
正捕手に代わりにマスクを被った控え捕手は、
投手からの投球をミットで受けず、
体を横にずらし、投手からの球を岡田主審に直撃させるという、
危険な報復を行いました。

今でも多少ありますが、
「ジャンパイア」なんていう言葉がありました。
巨人に対して有利な判定を下す審判の事で、
昔は超人気球団だった巨人へのジャッジには強い猜疑心があったんです。

試合後、大勢の記者に囲まれ、
あの判定がなぜセーフなのかと詰め寄ります。

自宅に帰った岡田審判も、
テレビのどのスポーツニュースの映像を見ても、
セーフには見えない、これはアウトなのではないか…?
岡田審判自身も自信を失ってしまいます。

たしかにブロックの隙間から足が入ったのを見た…はずなのに、
あれは見間違えだったのか…?

報道は誤審一色、日本中を敵に回してしまいました。
日本シリーズという大舞台で誤審をしたならば、と、
彼は自宅で辞表を書き始めます。

その時、自宅に訪れたのが知り合いの新聞記者でした。
彼が懐から取り出し、岡田審判に見せたのが…

ビーバップ!ハイヒール「選手より面白い?審判ストーリー」

この写真です。
間違いなく、土井はホームを踏んでいたのです。


ビーバップ!ハイヒール「選手より面白い?審判ストーリー」

土井が本塁に走り込んできます。

ビーバップ!ハイヒール「選手より面白い?審判ストーリー」

ここで二塁からのショートバウンドの返球を受けるために、
少し腰を浮かした捕手の股間に土井が足を入れて、
ホームを踏んでいます。

ビーバップ!ハイヒール「選手より面白い?審判ストーリー」

ホームを踏んだ直後に土井の体が左に飛んでいます。
それもよく見ますと、
土井の体幹部はほとんど捕手に当たっていません。
土井は捕手のブロックに吹き飛ばされたのではなく、
土井自身が自ら足を抜き、
自ら体を、自身の右へ逃がしていることがわかります。
そうしないと、彼自身の足が折れてしまう可能性があるからです。

また、岡田球審の立ち位置にも注目です。
球審の奥に立っているのは長嶋ですが、
彼の位置からは「足」が見えないかもしれません。
(余談ですが、最近の審判の立ち位置、酷くありませんか…?)

一夜明け、世紀の誤審とされた判定は、
世紀のジャッジと讃えられました。

その後、岡田功審判は、日本シリーズ21回という最多記録を築き、
日本一の名審判と呼ばれるようになりました。







ねてしてタペ