ひき算の概念 2 「差」
1980年前後のある年の6月
私の通っていた東京の大学で1つのシンポジウムが開かれた。
司会者は、その大学の 社会福祉学を専門とする助教授の ゼミ生。
助言者は、社会福祉学の助教授 と その知り合いの 〔助教授〕。
問題 ( テーマ ) となったのは、発達について ( 引き算でつまずいている子 ) 。
その大学のさまざまな学部の学生と 〔助教授〕の ゼミ生。
区立小学1年生の子 と そのお母さんが出席。
総勢二十数名。
お母さんの説明
「 この子は未熟児で生まれたためか、身体も小さいです。」
「 甘やかせて育てたせいか、おとなしい子に育ちました。」
「 最近、ひき算のテストで 0 点を取りました。
この子も 0 点を取ったことにショックを受けています。」
「 たし算はできますがひき算ができません。」
「 全部 たし算して答えを書いたようです。」
「 『 5 - 3 』 が、なぜ 8 なるのと聞くと ‘5 と 3 があるから、5 と 3 で 8 になる’と答えます。」
「 ひき算ができないことを学校の先生に相談しましたが、理解が遅い子だからと言われました。」
「 このまま ひき算でつまずいて勉強が嫌いにならないように
親として何とかしたいと思っていたところ、今回このような機会がありました。」
「 この子が少しでもひき算ができるようになるために、来ました。よろしくお願いします。」
〔助教授〕 「 ひき算ができないのは、差がわかっていないからです。」
「 差がわかっていない。つまり、ひき算の概念がわかっていない。
だから、ひき算の概念を教えないといけない。」
〔助教授〕は 「概念」 という言葉をどういう意味で使っているのでしょう ?
【 引(き)算 】 ある数から他のある数を引いて、その差を出すこと。減算。 ↔ 足し算
【 足(し)算 】 二つ以上の数を加えて和を出す計算。加算。 ↔ 引き算
【 概念 】 同類のものに対していだく意味内容。
・ 同類のもののそれぞれについての表象から共通部分をぬき出して得た表象。
( 共通性の抽象 )
・ 対象を表す用語について、内容がはっきり決められ、適用範囲も明確な、意味。
( 意味の明確な限定 )
〔助教授〕は、「ひき算の概念」 を 辞書的な意味で使っているのでしょうか ?
次回 ひき算の概念 3 「幼稚」 につづきます。