(1) 読めやん・こんなことしたら覚えてしまうやん・「衆ぎいんぎいん」ておかしい、
「ぎいん」と「ぎいん」て同じやのに、ひとつでいいんちゃうん
前回のつづきです。
Aさんは、声を出して教科書がほとんど読めません。
そこで先にBさんに読んでもらい、AさんにはBさんの読む声を聞きながら、
黙読してもらいました。
Bさんがある程度スラスラ読んでいると、Aさんは教科書から目を離して、
Bさんを恨めしそうにチラチラ見ます。
(このときのAさんは、内言で何て言っているのでしょうか)
‘ Bさんの方を見ないで、しっかり教科書を見て黙読してください ’
‘ 次はAさんに同じところを読んでもらうから、しっかりBさんの声を聞いて!’
‘ さあ、同じところを読んでください ’
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ う~んもう、読めやん、わからん字ばっかりや 」
他人(ひと)が音読しているときは、自分は黙読するという習慣が、
Aさんには身についていません。
‘ わからない漢字は聞いてくれたら教えるから、仮名ふっていいから、さあ読んで ’
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
漢字が読めないため、前に進みません。
仕方がないので、一文ずつ私が先に読んで、続けて読んでもらうことにしました。
‘ 国会は二院制で衆議院と参議院がある ’
「 国会はぁ 二院制でぇ 衆議院とぉ 参議院がぁ あるで 」
‘ 「で」はいらない、嫌々読まない ’
読みをおしえながら、テスト範囲の約40ページのうち10ページを
読むのに2時間もかかってしまいました。
‘ 家で、また声を出して読んでください ’
社会対策初日は、こうしておわりました。
二日目、読めるところがすこし増えたので
ときどき読んだ部分の内容を確認しました。
‘ 国会は二院制ですが、何と何ですか ’
「 衆議院と参議院 」
‘ 正解、そのとおり ’
Aさんは、嬉しそうな顔をしました。
ところが次の瞬間、怒った顔に変わって、
「 覚えるな言うたのに、こんなことしたら覚えてしまうやんか! 」と発言。
[ 先生が言ってるのは、そういう意味じゃないよ ]と、Bさんが言いました。
初日の私の発言を、文脈無視で捉えてのAさんの発言。
関心のある{音声による言語}はよく覚えているAさんです。
‘ 表はテストにでるから、チェックしてください ’
「 表はどんなして読むん、読めやんで 」
‘ 表の上の部分に、なんと書いている ’
「 衆議院と参議院 」
‘ 表の左の部分の上から、なんと書いている ’
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
‘ 上から定数、任期、被選挙権 と書いているから ’
‘ 衆議院の定数は何人ですか ’
「 480人」
‘ 正解 ’
「 ふ~ん 」
‘ 参議院の任期は ’
「 6年 」
‘ 3年ごとに半数改選 もおさえておこう ’
「 6年ちがうん、3年ちがうで 」
‘ 3年ごとに半数改選 とそこに書いている ’
「 わからん 」
‘ 6年の任期で、定数の半数が3年ごとに改選されるから、
参議院の選挙は3年ごとにおこなわれる ’
「 わからん 」
線分図を利用して説明しても、「 わからん 」
‘ 任期は6年、半数ずつ選挙するから、選挙を3年ごとにする ’
「 わからん ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
「 わかった、半分ずつやからや 」
三日目、Aさんに教科書を声を出して読んでもらっていると突然、
「 しゅうぎいんぎいん(衆議院議員)ておかしい、
ぎいん(議院)とぎいん(議員)て同じやのに、
ひとつでいいんちゃうん 」とAさん嬉しい顔で。
( この発言は覚えることを1つでも減らしたいという効率性の現れか?
あるいは、誰も気づいていないことに自分が気づいたという喜びの現れか?)
‘ 字が違う ’
「 字いっしょやで 」
‘ 前の院と後の員は違う ’
「 なんでやろ 」
「 なにがちがうんか、わからん 」
‘ 字が違って、意味が違う ’。
‘ 前の議院は議会という機関、後の議員はその議会で議論し採決する人 ’
「 わからん 」
‘ 前の院は建物や機関、後の員は人 ’
‘ 建物や機関と人は違う ’
「 たてものとひとはちがう 」、「 きかんて何 」
‘ 機関はある目的を果たすための組織、
議院は予算や法律などを審議するための組織 ’
‘ たとえば、Aさんが通っている中学校は機関で、Aさんたちに普通教育を
受けさせる、Aさんたちが能力に応じてひとしく教育を受けられるための組織 ’
音読で音声を使うことにより、漢字の同音異義語を意識する必要が、
生まれてはじめてAさんに生じた場面でした。
四日目、Aさんの読みは少しずつ良くなってきました。
試験の範囲を約2時間で声を出して読めるようになりました。
五日目、問題演習をはじめました。授業ノートの活用も。
六日目、教科書の読みと問題演習。
七日目、問題演習。
テスト当日、テストを終えてやって来ると
「 昨日、帰ってもう一度、社会やれて言うたけど、やらんでもできたで 」とAさん。
‘ えっ ・ ・ ・ ・ ・ ( Aさん、手を抜いたのか ) ’
テストの結果は、Aさんは47点、Bさんは58点でした。
「 前より、とったで 」 「 前より書けたで 」とAさん、満足な顔。
Aさんは、中1中2のとき5段階評価で「2」だった社会を「3」に上げました。
AさんもBさんも、日々の{文字による言語}の使用不足、手を抜いています。
次回の更新記事では、指示だけで定期テスト(社会)の点数が大幅に上昇し、
社会の評価が「3」から「5」に上がった中学2年生のCさんの話をします。
(2) 学力の創造と向上に必要なこと:言語(言葉)の意味を理解すること
使用と意味理解を一体化させること
私たちは、音声や声だけでは、その言語を理解できません。
{その言語が何を表しているのか}を理解しないと、「何を言っているのかわからない」
のです。文字とその音だけを覚えても、その意味はわからないのです。
幼児のとき、{音声による言語}は、使うものであった。
はじめに覚えるもの・暗記するものではなかった。
{音声による言語}は、使っているうちに覚えてしまっているもの。
使わないものは覚えないし、使わなくなったものは忘れてしまう。
使うことと覚えることは全く別々のことではなかった。
使っているうちに覚えてしまうから、音声とそれが表していること、そして
その使い方の3つをほぼ同時に学びました。
幼児のとき、言語の使用と意味理解は一体化し、
言語を実践的に使用していたのです。
{音声による言語}を周囲の他者の真似をして使いはじめ、使い方を間違えると
他者から訂正され、適切に使用するように修正されます。
使用することにより、周囲の他者から{音声による言語}の規範性を学びます。
(規範性を学ぶから、幼児でも他者の言語使用の適・不適を判断できます)。
実践的に使うから、誰もが{音声による言語能力}を創造(獲得)するのです。
ところが、小学生になって学ぶ{文字による言語}は、子供によっては、
{使うもの}ではなく{はじめに覚えるもの・暗記するもの}になっています。
{文字による言語}は、はじめに覚えて、おもにテストで使うものになります。
正しく覚えれば、テストで間違って使用することがないので、
{音声による言語}とは違って、使用中にはほとんど訂正されません。
もし間違って使用したら、わるい成績をとり・わるい評価を受けます。
正しく覚えない子供がわるいのです。
{音声による言語}に比べて学ぶ機会は減少します。
{文字による言語}は、それを覚えることと使うことが別々になり、
その使用と意味理解は分断されることになります。
テストにでる・で使える{文字による言語}を覚えて、テストで使います。
そのため、ヘタをするとその使用は、テストの形式や程度などの制限を
都合よく解釈しパターン化し、意味理解をともなわないことになり得るのです。
意味理解できなくてもテストにでるから覚える。いわゆる{丸覚え}が登場します。
また、意味理解しなくてもテストの問題が解ける{パターン}を覚えることになります。
テストで使うという限定的使用が、覚え方を支配することになるのです。
意味理解しなくても文章題が解ける子を育てる指導例
( 例1 ) 小1生のたし算の応用問題(文章題)を解けるように、
「 問題文の中の2つの数をたしなさい 」と指導を受けるかもしれません。
( 例2 ) 小1生のひき算の応用問題を解けるように、
「 大きな数から小さな数をひきなさい 」と指導する指導者もいます。
( 例3 ) 小2生のかけ算の応用問題を解けるように、
「 問題文の中の2つの数をかけなさい 」と指導されるかもしれません。
( 例4 ) 小3生のわり算の応用問題を、一人でも多くの生徒が解けるように、
解くことにより一人でも多くの生徒が自信をもつように、
「 大きな数を小さな数でわりなさい 」と指導する指導者もいます。
小学校低学年の算数は、整数の世界に閉じられています。
その狭い世界でしか通用しないことが指導されるのです。
こうして問題文の内容を理解しないで、文章題を安易に解く小学校低中学年生が、
育てられます。
たし算・ひき算・かけ算・わり算の概念理解の機会を奪われる生徒も
生まれます。
さらにパターン化は進み、「 ~ を覚えたら ・ ・ ・ ができる」型の決まり文句が
生まれ、「公式を覚えたら問題ができる」、「単語を覚えたら英語ができる」などの
論理的誤謬をおかした表現がさまざまな教科でなされます。
{文字による言語}を覚えてから使うものとして扱うと、
その文字と音と意味と使い方の4つを覚えなければなりません。
(理由1)文字と音を先に覚えても、その意味と使い方をさらに覚えないと
使えないからです。
(理由2)文字と音と意味を先に覚えても、その使い方をさらに覚えないと
使えないからです。
{使用するものである}ことを忘れ、{覚えてからでないと使えない}と信じたため、
使用する時間が少なくなって、{文字による言語}を実践的に使用できなくなり、
{文字による言語能力}を創造(獲得)できない者が生まれるのです。
Aさんのように覚えられない者にとって、{文字による言語}は、
たんなるインクの染みでしかなく、読めない・わからない・使えないものになります。
言語を実践的に使用するとは、理解できるまで言語を使うことです。
言語の誤った使用を訂正し、それのもつ規範性を学ぶことです。
考えることにおいて言語を使うことです。
それは、決して意味理解せず単語を覚える・公式を覚えることではないのです。
理解するために調べる、辞書をひくというのも言語を使用する実践的な行為です。
言語を理解するためには、言語を使用するしかないのですから。
「公式を覚えても問題が解けない」のは当たり前です。
「英単語を覚えても英文読解ができない」のは当然です。
そこには言語を理解するまで使用し続けるというごく当たり前の行為がないからです。
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