著者は柿内尚文さん、出版社はかんき出版です。
数年前書店の売り場や雑誌のランキングで

よく見かけたタイトルでした。
記憶に残るこの本をなぜか今になってようやく

読んでみようと思いました。

きっかけは「伝える」や「言語化する」ということを

改めて自分でも意識するようになってきたことです。
また多くの人に読まれてきたということは

それだけ多くの共感を呼んだテーマなのだろうと

感じたことも理由の一つでした。

とはいえ、こうして少し流行から遅れたタイミングで

読むことは私にとって珍しいことではありません。
本はそのときの自分に必要な内容に出会える

タイミングで読むものなのだと思っています。
(やや流行後れを正当化している感じもあることは認めております)

実際に読んでみてまず感じたのは

「とても読みやすい本」だったということです。
そもそも「伝えるための本」がわかりにくければ本末転倒ですが

それだけではなく、著者ご自身がもともと「伝えること」

得意ではなかったというところにも安心感がありました。

経験を積む中で著者がどのように「伝える力」を身につけてきたのか
その過程が具体的で時には失敗談も交えながら語られているので

これから上達したいと考える人にとっても

とても参考になる構成になっていました。

そして本書で特に印象に残ったのは最初に書かれている一文です。
「伝えると伝わるは違う」。
このことばを見た瞬間、はっとしました。

無意識に使っていた言葉ですが、

「伝える」は自分側の視点、「伝わる」は相手側の視点なのだと

あらためて認識しました。
そして多くのコミュニケーションのすれ違いは

この視点の違いから生まれていたのかもしれないと思ったのです。

「こんなに説明しているのに、なぜわからないのだろう」と

どこかで相手を責めていた場面もありました。
でも実際には自分の言葉が本当に相手に届く形になっていたのか

そこを省みる視点が抜けていたのだと気づかされました。

本の中では「伝わる」ための技術が36個紹介されています。
どれも難しいものではありませんが

身につけるには意識して繰り返すことが必要だと思いました。

言い回しや語順、たとえ話の使い方。
何気なく使っている言葉にも相手に届かせる工夫があるのだと知り
ふだん目にしている広告や会話の中にも

「伝える技術」が生きているのだと気づくことができました。

本の中では何度でも読み返してほしい、書き込みながら使ってほしい、

というメッセージもありました。
その言葉の通りときどきこの本を開いて

「そうだった」と思い出すことで少しずつ自分の中に

定着していくのではないかと思います。

そもそも自分と相手の前提は違うということ。
それをすり合わせるために言葉があるのだとすれば、
「うまく伝えよう」と力むのではなく

その過程を楽しむ気持ちでいられたらいいなと感じました。

この視点は仕事だけでなく私生活でも生きるものではないかと思います。
親子、夫婦、友人。

身近な人ほど「言わなくてもわかるでしょ」と

思ってしまうことがありますが、
実はそうした思い込みこそが

すれ違いの始まりになるのかもしれません。

相手にわかるように伝えるにはどうしたらいいか。
その姿勢が、言葉に表れるのだと思いました。

最後に冒頭に書かれていたもう一つの印象的な

ことばを忘れずにいたいと思います。

「人は正しいかどうかではなく、伝わったことで判断する」

まさに伝えることの本質を教えてくれる一冊でした。