町田そのこさんの『宙ごはん』は、何かの紹介で気になって

図書館で予約していた本でした。

ようやく順番が回ってきて手にしたものの

「何に惹かれて読みたくなったんだっけ?」と

自分でも思い出せないまま読み始めました。

タイトルからは私はエッセイや『しあわせのパン』、『つばき文具店』

のようなほのぼのとした日常系の物語を想像していたのですが

読み終えた今は原田マハさんの『いきるぼくら』を閉じたときに感じた

“命のリレー”や“たくましさ”に近い余韻が残っています。

物語は大きく言えば宙ちゃんの成長物語です。

特殊な環境で育ちながらも

母親や家族、周囲の人たちからさまざまな形の愛情を受け取り

まっすぐ心と体を育てていく姿が描かれています。

宙ちゃんは少し大人びた子どもとして登場しますが

その成熟さが彼女の背景と静かにつながっていくのが印象的でした。

読みながら、もし映画化されたら

誰が宙ちゃんを演じるだろうと想像して

村山輝星さんの姿がふっと浮かびました。

あの芯の強さと透明感が宙ちゃんに重なる気がしたのです。

章のタイトルが「思い出のエピソード+それを癒す料理名」

になっているのも心に残りました。

料理って生きることと直結しているし

思い出とも深くつながっています。

物語に登場する料理はどれも宙ちゃんの心の状態に

寄り添うようなものばかりで

ふわふわパンケーキ

とろとろポタージュ

ほこほこにゅうめん

…名前からして優しさがあふれています。

特にやっちゃんのふわふわパンケーキ。

宙ちゃんが最初に救われた料理であり

のちに宙ちゃん自身が誰かにふるまう料理でもあります。

受け取った優しさを今度は自分が誰かに渡す。

その瞬間に

「人生の答え合わせは急ぐものじゃない」と感じました。

誰かの想いを受け取って次につないでいくうちに

自分の人生の物語ができていく。

料理がその媒介になっているところが

この作品のいちばん美しい部分だと思いました。

やっちゃんの海のような心の広さに

宙ちゃんがどれほど救われたか。

人にはそれぞれ「そうせざるを得なかった人生」があって

その答え合わせは時間をかけてしかできない。

物語を通してそんな静かな真実を教えられた気がします。

読み終えたあとに残ったのは

じんわりとした温かさと「想い出は生きる力になる」

という実感でした。

私にとって新しい出会いになった一冊です。