先週はどうしても読書に専念したい気分になり

その場所を探すことを記事に書きましたが

そのとき読んでいた本が池井戸潤さんの『俺たちの箱根駅伝』です。

私はスポーツ観戦全般が好きなのですが

その中でも特に駅伝は毎年の楽しみです。

結婚してからはお正月に実家へ集まると

家族みんなで箱根駅伝を観るのが恒例になり

特定の大学に肩入れするわけではなく

「全員頑張れ!」の精神で応援しています。

そんな流れで予選会が行われたタイミングも重なり

久しく読んでいなかった池井戸作品に触れたい気持ちもあって

この本を選びました。

読み始めると案の定止まらなくなり、登場人物一人ひとりに

思いを寄せながら上下巻をほぼ一気に読破し

清々しい気持ちで読み終えました。

フィクションでありながら、実際の箱根駅伝を

自然と思い浮かべながら読めるのがこの作品の大きな魅力です。

またテレビ局側の視点も丁寧に描かれていて

裏方の緊張感や葛藤、放送を支える現場の熱量まで伝わってくるため

来年の中継を見るときの気持ちがきっと変わるだろうと感じました

物語は記録には残らない学生連合チームの選手たちに

スポットを当てています。

それぞれが背負う大学の事情や選手としての背景、

積み重ねてきた努力や挫折・・・そうしたすべてが彼らを形づくっていると思うと

一人の選手としての存在が一層尊く感じられました。

そして彼らを導く指導者の影響力の大きさ、選手が自分らしさを

取り戻していくプロセスに、コーチングの本質のようなものを見た気がします。

読んでいて感じたのはストーリー構成の巧みさと

群像劇としてのバランスのよさです。

池井戸作品は企業社会を舞台にしたものが多い印象ですが

この物語でも「組織」「チーム」「個人」の関係性を軸にした

人間ドラマがしっかりと描かれていました。

誰か一人だけが突出するのではなく、全員の視点が丁寧に描かれていて

それぞれの弱さや迷いが共感を呼び

読者を自然と物語の中に引き込んでくれます。

また駅伝という競技特有の“つながり”や“受け継がれる想い”

物語のテーマと深く結びついている点も印象的でした。

襷をつなぐという行為そのものが

選手たちの人生や選択を象徴しているようで

読みながら胸が熱くなるシーンが何度もありました。

特に、走る理由や背負っているものがそれぞれ異なっていても

最後には同じゴールへ向かってひとつになる瞬間が

とてもドラマチックでした。

さらに印象的だったのは物語全体を支える“爽やかな熱量”です。

スポ根的な熱さとは少し違い、負けや悔しさも包み込みながら

前に進む姿に静かだけれど芯の強いエネルギーを感じました。
そして読み進めるほどに、「これは駅伝だけの話ではない」

思う場面が増えていきました。
人生でも誰かから襷を受け取り、また誰かに渡していく

瞬間があります。

迷いながらも前へ進むこと、自分を信じて自分のペースで走ること、

かが見守ってくれていることの心強さ・・・。
そうした普遍的なメッセージが物語には込められていて

読み終えたあと、自分自身のこれまでの道のりや

人から受け取った“襷”の重みについてふと考えました。

来年の箱根駅伝は、きっとこれまでとは少し違う感覚で観られそうです。
・・・実は一気に読み終えたあと、気持ちが高まりすぎて

今、読み直しをしているところです。

レースの結末を知ったうえで最初から読み返してみると

登場人物一人ひとりの描写がより深く理解でき

背景や心の動きが一段と鮮明に感じられるようになりました。
不思議なことに、二度目のほうが面白いのです。
一度目はストーリーの勢いに引き込まれるまま走り抜けた読書でしたが

二度目はまるで選手たちの傍らに立って見守っているような気持ち

読み進めています。

物語の厚みや繊細さに改めて気づかされ楽しみがさらに増しているところです。