家を出てひとり暮らしを始めた息子の部屋は
ずっとそのまま手を付けずにいました。
寂しくなるから、という気持ちももちろんあるのですが
それ以上に・・・入るのが怖かったのです。
本当に怖い、ホラー的な意味で。
もともと片付けが苦手な子だったので
部屋の状態は想像に難くなく、
持ち物の大半を持っていったあとにも関わらず
残された物たちが放つ気配が私にはどうにも近寄りがたかったのです。
何か妙なものが出てきたらどうしよう・・・なんて
ちょっと本気で身構えてしまう自分がいました。
でもいつまでもこのままというわけにもいかないなというのが実際のところ。
息子が出ていったことで家の中の過ごし方も
少しずつ変わってきています。
夫婦だけの暮らしの中で狭い我が家の一室を
ずっと閉じたままにしておくのはやはりもったいないです。
帰省のときには息子が使えるようにしつつ
普段はちょっとしたリモート部屋にしたり
気分転換のできる空間として使えたらいいなと
最近思うようになってきました。
そんなことをぼんやり考えていた昨日、
なぜか急に掃除をしたい気持ちがむくむくと湧いてきたのです。
これはもう、今しかない。
勢いに任せていざ、覚悟を決めてドアを開けました。
結果は、やっぱりホラーでした(笑)。
いったいどうしてここまで放置できたのかと呆れる気持ちとともに
きちんと片づけてから出て行ってくれたらよかったのに・・・と、
少し腹立たしさも込み上げてきました。
でもすぐにそれは私の側の問題なのかもしれない、
という思いが浮かびました。
もっと基本的な生活のことを丁寧に伝えてくればよかったのではないか。
「任せる」という言葉に逃げて
見て見ぬふりをしていたのではないか。
そう思い始めるといろいろな後悔が押し寄せてきて
気持ちが少し不安定になりました。
でもどんなに思い返しても過去には戻れません。
子育ての二十数年を振り返るうちに
ああでもなかった、こうでもなかった、と思いながらも
それなりに日々を重ねてきたことを思い出し
いつの間にか無心で掃除をする自分がいました。
いかにもいらなさそうなものをまとめてポリ袋に詰め、
掃除機をかけて拭き掃除をし、
カーテンとシーツを洗って窓を全開にして風を通しました。
ようやくこの部屋にも新しい空気が入ったような気がしています。
あれほど怖くて開けられなかった部屋が
今ではもう違う表情をしています。
息子が帰ってきたときにはちゃんと実家らしさを
感じられる空間であるように
でもそれ以外の時間は私たち夫婦のささやかな居場所として
大事に使っていけたらいいなと思っています。