少し前に著者 山本文緒さんご自身の

闘病日記『無人島のふたり』を読み、

ふんわかしたお人柄がよいなと思ったので

小説はどんな内容を書いていたのだろうと

興味を持ち図書館にあったこの本を

読むことにしました。

山本さんぽさ

を知らないまま読むことになったので

読み始めの部分は高校生の主人公が漫才師を目指し

学校内でふざける様子、を描く文章に

ややハチャメチャな感じを受けてしまい

「こんなタイプの人??」と

違和感だらけでなかなかお話に入り込めない

自分がとても変な感じで

最後まで楽しく読めるだろうか、と

思ってしまうあたりがこれまでの読書とは

全然違う感覚でした。

途中でやめてもいいんだよな、と思う反面、

新しい世界を知る機会でもあるのだ!と

自分に言い聞かせながら読み進めるうちに

あることが浮かんだのです。

それは、

最近の自分の読書は、その本から

”何かを学ぼう”

”読み終えてどんな気づきが得られるか”

ということばかり意識していたかもしれない

ということ。

私にとっての”良本”判定みたいな意識が

どこかにあったかもしれないということでした。

読み始めたときの違和感は

私にとって得るものがあるのだろうか?という

感情も混じっていたかもしれないと思ったのです。

そんな自分に気づいた後は徐々に

純粋に読むことを楽しんでみようという気持ちに

変化していき、

あ、これは一昔前の時代の青春小説なんだと

気づいてからは

主人公や周りのお友達、お父様との

やり取りに、若さゆえのエネルギッシュさ、

ひたむきさで眩しさすら感じることが

できました。

あとがきを読んで

これは著者が小説家としてごくごく初期に

書いたものだったことを知りました。

25年くらいたって趣を尊重しながら

若干手を加えて再文庫版になったとのこと、

それを知って

だから粗削りな印象を受けたのかな、

と思いながら

逆に貴重な読書ができたのだ、と

新しい気づき発見ができたのは

途中で辞めずに最後まで読み切って

よかったと思った一番の感想でした。