先日図書館をプラプラしたときに
借りた本はこちらの本でした。
直木賞、本屋大賞をダブル受賞した

この本は2016年の受賞とのことなので

もう8年も前に話題になった本なのに

そこに触れる機会を作っていなかったなと

上下巻揃って置いてあったことを

何かの導きかもしれないと(勝手に)解釈して

借りることにしました。

著者の恩田陸さんの本としても

初めてでしたので、どんな作風なのかも

含めてワクワクしながら読み始めました。

 

タイトルこそ知っていましたが

その内容がどんなものか全く知らなかったので

まさか、ピアノコンクールの本だったとは

読み始めて初めて知ったことでしたが

私もピアノを習った経験があったことから

あこがれの世界がお話になっていることに

引き込まれるにはさほど時間がかからず

どんどん読み進めたくなる

素敵なお話でした。

 

ピアノコンクールに出場するコンテスタントの

一人ひとりの描写が中心に描かれている

本でしたが

そこには音楽を通じてコンテスタントが

自分の人生をどのように意味づけ、

何を思い、感じ、内省し、

奏者としてだけではなく

人としてどんどん豊かに成長していく様が

描かれているのがなんとも素敵で

読んでいくうちにどんどん本の中の世界に

引き込まれていきました。

その一人一人の物語に

私まで幸せに温かい気持ちになりながら

一気に、でも1シーン1シーンを

味わいながら読むことができた気がします。

 

音を楽しむと書いて 音楽

 

コンクールという場で順位がつけられる

厳しい舞台でありながらも

そこに臨むコンテスタントは

評価されるためにというより

自分自身を細胞レベルから宇宙レベルに

広がるほどにを表現していくことが

できる人ほどこの物語では

素敵であることが描かれていて

”個性とは”

”私らしさとは”

何かということを考えさせられた気がします。

そこには

演奏をする姿勢を通じて

正しさ、を求めるのではなく

いかに自分らしく、その世界観を愉しむか

ということを問いかけられた気がします。

自分の生まれたルーツも

育ってきた環境も

自ら得てきた経験も

誰一人同じ人はいなくて、唯一無二の

自分であることを表現できることが

その人の世界観、

それを感じさせてくれる人は

とても魅力的なんだなと思ったからです。

登場人物明石さんのセリフにも

私が感じたことと似たようなことが

書かれていました。

”その人の本質的なものが演奏から

浮かび上がる、コンテスタントの体を

通して出てくる音楽は

彼らが育った土地、授かったからだとは

無縁ではないのだ。音楽っていいな”

自分が感じたことが本の中に言語化されて

いたところとページが重なったときには

鳥肌が立ってしまいました。

 

読み終わった後の率直な感想は

自分の人生は自分自身で愉しまなきゃ

ということでした。

 

ほとんどは通勤電車の中で

読んでいましたが

自宅で読むときは、コンテスタントが

選曲した本をYOUTUBEでかけながら

読んでみたりして

ちょっと優雅な気分にもなったり

実はこの本は映画化されていたというのも

上巻を読み終えた後に知ったのですが

映画の配役を知って

その役者さんを少しイメージしながら

下巻を読めたのも

とても楽しかったです。

最後の最後まで本選の順位をワクワク、

想像しながら読み進めていきながら

最終ページに順位表が書かれていたのも

とても粋な感じがしてしびれました。

 

この本を執筆するまでに数年がかりだったと

あとがきに書かれていましたが

本当に読みごたえがあり、

音楽好きの私の奥にある何かに刺さった

とても楽しかった本でした。

直感で借りた本でしたが大正解!

賞を取るほどの本は本当に素晴らしい

ということも、

これからの本選びのきっかけの一つに

なっていきそうです。