「ビジネス成功者の仕事ゲーム」について、最近は下請から脱却した地方の弱小企業をテーマにした作品が多くなっています。
小さな地方企業に共通するのは、下請から脱却するための優秀な人材をどのように集めるかの問題です。
佐賀の下請家具メーカーだった「レグナテック」は、自社ブランドの開発で海外進出をはかっていますが、よくぞいろいろな専門業務の人材を集めたものだと感心します。
(「レグナック」は、前身が1964年創業の婚礼家具の下請メーカー「諸富マルニ木工」です。「レグナック」については、『進撃の地場産業』を参考図書にしています。)
実際、どのようにして人材を募集したのでしょうか?
福岡県大川市は家具の6大産地の一つで、その流れをくむのが佐賀県諸富町の家具メーカーになります。
日本の家具メーカーは、バブル崩壊と海外の安い家具の輸入によって、1990年約3兆3900億円の売上が、2010年には約1兆3660億円まで減少します。
そのような厳しい状況で、下請けからの脱却を図り海外進出を成功させたのが、「レグナテック」社長・樺島雄大さんです。
樺島さんは、1985年父の会社「諸富マルニ木工」に入社します。
この当時は、作れば売れる時代で、同じ家具を1日100本から200本製作していたようです。
素晴らしい職人を持つ会社でしたが、樺島さんは経営リスクの高い下請企業であることに不安を感じます。
優秀な人材を集めれば、高品質の自社ブランド品を開発できる会社だと思っていたみたいです。
下請企業から脱却してブランドメーカーになる取り組みを徐々に始めます。
段階的に取り組まざるをえなかったのは、各種業務に関し専門知識のある人材が必要だったからです。
① NC工作機を稼働させるCAD図面の作成業務の人材
樺島さんは、高卒後にコンピュータの専門学校にかよっていたので、プログラミングの知識もあり、CAD先性の講習会に参加します。NC工作機を導入するとCAD図面を作成しなければならず、コンピュータに強い人材が必要になります。
② 海外からの高級木材の輸入業務の人材
日本の家具素材は合板をつかったやすい素材が主流だったので、高級家具を作るには高級な木材が必要になります。樺島さんは、木材選びのため世界をかけめぐります。アメリカ産の採用を決めますが、木材に詳しい輸入業務をする人材が必要になります。
③ 全国各地の家具販売店への営業業務の人材
家具売り場に自社のパンフレットを放置しておくことで新宿・伊勢丹との取引が実現します。伊勢丹効果で全国の家具店との取引が始まると、お店を回る営業業務の人材が必要になります。
④ 自社ブランド商品開発のデザイン業務の人材
自社ブランド「CLASS」を立ち上げ、その後も大阪のデザイナーに依頼して「植物をイメージした『rシリーズ』」を商品化していきます。デザイナーと協議を重ねながら製品を作り出すことになるので、デザイナーと十分な議論のできる企画力のある人材が必要になります。
⑤ 海外展示会に出展する販売促進業務の人材
海外の見本市に出展するには、英語のカタログ類を作成して、会場で商品を英語で説明することになり語学能力に優れた人材が必要になります
会社は、総勢50名前後の会社です。
この規模の会社が、専門業務を担当する優秀な人材を確保することは大変なことです。
採用時に、応募者の専門知識のレベルを社内の誰が評価するかといった問題もあります。
「レグナテック」は幸運にも、専門知識をもった人材を集められたようですが、地方の弱小企業が下請から脱却をはかるには、人材の壁が非常に大きいようです。
どうしても、地方の小さな下請企業に優秀な人材はあつまらないのでは・・・?
人材問題は、下請け企業から脱出するうえで最大の難問になりそうです。
会社の知名度がないと、優秀な人材の確保は本当に大変です。