「…殺せなかったんじゃよ。母上は…。そして悲劇は起こるべくして起こった…」
「ど、どうなったの?」
「死んだよ。当時から ここに仕えとったワシ以外は全員な」
「クッ…」
誠は源蔵の、救いのない話に寒気と怒りを覚える。その話を既に一度は聞いているであろう月巫女 最上位の二人も、険しい顔を浮かべている。
「な、なんか無いのかよ!。男の子も殺さず、一族も滅びない方法って!」
誠は堪らず源蔵に叫んだ。しかし答えたのは源蔵ではない。
「あるわっ!。いえ絶対にあるはずよ!」
答えたのは、今まで一度も誠の前で声を荒げたことがなかった葵だった。
「えっ!?」
驚き葵を見る誠。しかし葵は怒りに体を震わせるけで答えようとしない。
「双子なんじゃよ…。真琴嬢ちゃんも、男女の双子なんじゃ…」
代わりに答える源蔵の表情は苦しそうだ。無理もない。源蔵が守人神社に仕えたのは真琴の祖母、現在は守人神社の最高位である天巫女(あまみこ)が まだ姫巫女だった頃からだ。血の繋がりとしては薄いが真琴を実の孫のように思っている。
「うそだろ…?。でも ここには俺と源さんしか男が居ないじゃないか。そ、そうか、ちゃんと処分したんだね。だったら安心…」
言いながら誠は分かっていた。自分が どれだけ酷い事を言っているかも、そして全てが間違いである事も…。でなければ葵や茜、源蔵の顔が これほど苦痛に歪む訳がない。誠自身の顔もだ。
「誠…。もうええ…。幸い今は行方不明じゃ。男児も、男児を連れて逃げた若巫女(わかみこ)…、真琴嬢ちゃんの母親もな」
言って源蔵は誠の肩に、そっと暖かい手を置いた。