僕は、起業したとはいえ、決して事業だけに没頭する経営者タイプではない。
プライベートを楽しむことで、ビジネスも頑張ることができるというのが信条だ。
それだけに女性関係は、仕事にも活力となるのだ。

その夜は、残業した後の遅い時間にいつものライブパブに寄ることにした。
店内に入ると、15、6人の男女の団体が騒ぎまくっている。
皆、同世代ぐらいの連中で、その中に、あの仮面妻がいた。
彼女はそのグループの女性達の中でも目立つ存在で、持てはやされて浮かれている。

入り口に近い、円卓カウンターの席に座って、しばらく様子を見ていたら、彼女が僕に気づいて近づいて来る。

「あら、来ているのなら言ってよ。」
「せっかく盛り上がっているなか、部外者の僕が女王様の君に親しそうに声を掛けたら、取り巻きの男性がしらけるんじゃないか。」

「大丈夫、中学の同窓会の集まりで、二次会でここに来たのよ。」
「そうなんだ、同窓会なんかで初恋の人とかがいて、焼けぼっくいに火がついて、不倫に発展するケースもよくあるよな。」とちょっとからかうと、
「何言ってんのよ、貴方だって、近頃、なにか妖しいわね。また、他の女に手を出してるのじゃない?」と言い返す。

たしかに京都・奈良や犬吠埼に同伴旅行した二人の女性のことは当たっているが、そのことについては彼女は知らない。
だが、彼女にバレた女流画家と関係したことは、まだ尾を引いているようだ。

「まあ、今夜は、あの連中といたら。僕との関係を勘ぐられるのもよくないしさ。」
「ええ、もちろん、貴方も他の女性客と遊ばないでね。」と念を押して、団体席に戻った。

どうも、彼女は、旦那に愛情がない分、僕については嫉妬心が強いみたいで、突然、会社に押しかけたりもしている。

マスターが席に来て、
「今夜は、あの方とご一緒できませんね、店の子でもつけましょうか?」と勧めたので、
その夜は、店のフロアーレディをチャージして時間を過ごすことにした。