大仏殿を出てすぐ近くの鏡池を半周する。
「この鏡池は、池の中に柄付きの鏡のような形をした島があるから、そう名付けられていて、島には弁財天が祀られているんだ。」

「水面が鏡のようで大仏殿が映りこんでいるから、鏡池と言われているのかな、とも思えますね。」

「秋は、大仏殿と紅葉、そして池に大仏殿が逆さに映る幻想的な景観で、撮影のベストスポットにもなっているよ。」

鏡池から参道を下って、南大門に着く。
「ここが奈良散策コースのゴールになるよ。スタートした興福寺も、ここから近くて、奈良公園界隈をほぼ一周したことになるね。」と彼女に話すと、
「何か、一般の観光の方達とは、逆の道のりをたどって来たみたいですね、それも楽しかったですわ。」と微笑む。

「そう、南大門の金剛力士像も後ろから眺めることになったね。」と南大門をくぐり、振り返って真正面からみる。
「南大門は高さ25mあり、これも日本最大級の山門で、対の金剛力士像は、左が阿形、右が吽形といって、高さが8mを超える木造の像なんだよ。」
と話すと、彼女は「すごく迫力があって、圧倒されますね。」と見上げている。

南大門からに参道入口に向かう通りは土産物屋が連なり、大勢の観光客が往来し、鹿せんべいを与えている。
それを当てにしているのか、多くの鹿が集まっている。
彼女もまた、鹿せんべいを手にしながら、再チャレンジをする。だいぶ慣れてきたのか、要領よく与えているようだ。
鹿がせんべいを貰うため、何度も頭を下げるのを面白がっている。

参道を出て、車の行き交う大宮通りを国立博物館方面に歩く。
街並みが夕陽に赤く染まった古都の夕暮れも、また情緒がある。

「ホテルに行く前に寄ってみたい所があるけど、いいかな?」と彼女に言うと、
「ええ、ご一緒しますわ。どちらへ行かれるのですか?」と尋ねる。

僕は彼女と客待ちのタクシーに乗り込んだ。