店の外に電話を掛けに行ってた女性が帰宅することになり、ママ友達は解散した。
和風ママが帰り際、僕に「私、この店に時々、来たいわ。貴方が常連なら、また、ご一緒して下さる?」と頼まれたので、僕は名刺の裏に携帯番号を書いて、彼女に渡した。

それから一週間ほど過ぎて、彼女から連絡があり、ミュージックパブで会うことになった。
彼女は先だってのママ友の飲み会では、PTA後でもあり、いたって地味な服装だったが、再び会った彼女は、まだ残暑の厳しい季節ということもあって、淡いグレーの薄地のキャミソールタイプのワンピースに、白いシースルー・カーディガンを羽織ったコスチュームで、メッシュの入った茶髪のセミロングのスレンダーな彼女には、よく似合っている。
ディスコにいそうな若い女性にも遜色無く、とても、中学生の子供がいる母親には見えない。

彼女が、「この前はありがとう、貴方がいてくれて、盛り上がったわ。女性ばっかりだと、カラオケでディエットもできないし、ダンスも踊れない、やっぱり、男性もいないとね。」と言うので、
「それは僕も同じだよ、男だけだと華やかさがないよね。だからといって、店の女の子を頼んでも、彼女達が仕事でついてくれてるだけだと思うと、なんか抵抗あるしさ。」と応えた。

「ところで、今夜は旦那は大丈夫なの?」
僕は、彼女が人妻だけに、やはり気がかりだ。
「いいのよ、今夜は夫は家にいないし、それに私に偉そうなことも言えないの。」
この前に、彼女が口にした事情かな、と僕は察した。

「実は、夫は3年ほど前に事件をおこして、大変だったのよ。
夫はブローカー的な事業をしてて、
彼の事務所で働いていた若い女性と湘南に行って、泊まったホテルで、その女性が亡くなったの。」
「それって、刑事事件になるんじゃないの?」
「そう疑われて、警察が家宅捜査に入るし、マスコミも来て、テレビにまで放映され、私は、その対応に追われて、ご近所のうわさにもなり、精神的におかしくなるくらいだったわ。」
「でも、今は大丈夫みたいだけど・・。」
「後になって、その女性が、ドラックの過剰摂取をしてた事が分かり、それについては、夫が関わっていないことが判明したの。」
「つまり、旦那は女性と浮気旅行したタイミングが悪かったんだ。まあ、刑事事件にならなくてよかったね。」
「でも、私のこの時のショックと心の傷はずっーと消えないわ。
夫の事業は、浮き沈みがあるけど、羽振りのいいときは、高級外車も買ってくれたり、家だって一等地に建ててくれたけど、もう愛情もないし、今はただの同居人ね。だけど、子供もいるし、経済的にも離婚はできないの。」
たしかに、彼女にとっては、普通の家庭では起こり得ないような大事件だ。
だから、その精神的なダメージを癒すように、遊んでいたいのかもしれない。

「貴方、遊び慣れていそうだし、それに危ない人じゃないみたいだから、お付き合いして欲しいわ。」
辛い過去を背負った彼女の心境に便乗するようで、ちょっと気がひけるが、まあ、彼女が癒されるならと都合のいい解釈をして、僕は彼女と付き合うことになったんだ。

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