カエール侯爵は私をじっと見つめながら、顎に手を。
「これで何とかなると思うが・・・・アリアネに男物を着させる日が来るとは・・・」と溜め息。
今夜の行き先はカエール侯爵が好きな遊び宿。
「仕方がないでしょう、ああいう所に行くわけですから」
「仕方がないが、アリアネに似合わない」
「なんでそういう所で待ち合わせですか」
「前に言ったじゃないか。待ち合わせしても不思議ではない場所なんてあそこしかないから」と私を見ては、溜め息をつくカエール侯爵。
「この服、誰のものですか」
「ワタシの服は大きいだろうから、ジェアンの借りた」
「あまりジェアン伯爵のイメージではありませんね」
「大学時代のものだからね」
黒いズボンに膝に届かないブーツ。長い袖のシャツに黒いベスト。髪は帽子の中。
「私はこういう格好が好きです」
「男装は初めてじゃないのか」
「軍育ちですから、15歳からずっと男の子の服を着ていますよ。いつも戦場の近くにいるわけですし、ドレスなど、邪魔なだけです」
「自分のものをもっているんだね」となぜだか安心したようにカエール侯爵は言っていた
「たまにエンリの服も借りたりしていました」
「ふーん」と妬いているように侯爵は私を見る。
執事からコートをもらい、馬車へ。
「レディーアンヌに何を言いましたか」と私は少し不安に聞く
「出かけるとしか言っていないよ。これ以上言う必要もない」
外から見ると普通の3階建ての家だと思われる。
「こういう所、初めて?」とカエール侯爵は家を見上げている私に聞く
「はい」
「1階は女が多い点以外は普通の酒場のようなところだ」
「はい」
入ると煙草の重い煙が広がる。強い安い香水の匂いがたつ。
20卓位置いてあり、奥にカウンター。卓ごとに5人くらいの男客。
遊女たちは飲み物を運んだり、客を話相手にしたり、2階に連れたりしたり・・・
カエール侯爵は誰か探している様子、ドアのところで止まったまま1階の全体見ている
「カエール」と30位の厚化粧をしている女性が侯爵の首に腕を回したー「待っていたよ」と軽くカエール侯爵の頬にキスをした
侯爵はその女性の背中に腕回した
「こんばんは、アメリア。ジェアンはもう来ているかなぁ」
「いつもの奥のテーブルにいるよ。その後ろにいる少年は?」
「ワタシの連れだ」
「いいもてなししないと」、そしてアメリアは私に微笑んだ
私は微笑みで返した。
テーブルに案内してから、アメリアは飲み物を取りに行った。
フランスア様にジェアン伯爵が座っていた。
「こんばんは、兄上、ジェアン」
「こんばんは、カエール」と私たちの方を見るなり、フランスア様は「勿体ない」と。
「ワタシもそう思う」とカエール侯爵はたま溜め息。
「こんばんは、二人とも。僕はこの発想が好きだね」と意味ありげな微笑みでジェアン伯爵は私を見ていた
三人は私をじっと見る
「確かに」とカエール侯爵は納得したようで言う
「だね」とフランスア様も同意する
三人の考えることが分からない
「ワイン持ってきたよ」とアメリアは帰ってきた
カエール侯爵と私にワインを注ぐ
「ありがとう」とカエール侯爵は私の嫌いな微笑みをアメリアに見せながら、言う
アメリアは一礼をして、テーブルから離れた。
「いい女だな、アメリアは」とフランスア様は呟く
「カエールの虜だね」とジェアン伯爵。
私はついていけない話を聞きながら、ワインを飲もうとしたら、カエール侯爵は私の手からグラスを取った。
「飲まない方がいいよ。慣れていないから、すぐ酔うでしょう」
「少しだけ大丈夫です」
「大丈夫じゃないから、やめさせている」
「少しだけいいじゃないか、カエール」とフランスア様は言う
「いっぱいのワインで酔って、屋敷の階段が上れなかった人に飲ませませんよ、兄上。他のものもしたら、ここなら困まります」とカエール侯爵は微笑んだ。後半の部分は私宛だっただろう。
「そのような話するために来たわけではないでしょう」と話題を変えようとする私だった
「もう一人まだ着いていませんから、話が始められませんよ」とジェアン伯爵は言う
しばらく世間話で三人は時間をつぶしていた
つづく