前回の記事では「今回の仙台大会がどれほどの意味を含んだ大会であったか、論外の事件の余波を乗り切り大会は成功だった」という話を書きました。
今回は、大会の中身―試合・選手について書きたいと思います。
第1試合ではタマ・トンガが出場。当初はタイチとの試合が用意されていましたが、論外の事件によるカード変更に伴い、高橋広夢が出場。
この試合ではタマ・トンガの充実ぶりがよく見えました。
タマ・トンガは昨年の5月に“キング・ハクの実の息子”ということで突如として現れた選手でした。当初は、何の実績もない裸足のトンガ人レスラーには客席からは奇異の目しか向けられていませんでしたが、なぜか新日本道場及び選手寮に居着き、ヤングライオン的ポジションで継続参戦していきます。
その後、9月シリーズ~G1タッグ辺りからその魅力が発揮され始め、抜群の身体能力と陽気なキャラクターでファンから受け入れられました。
この選手はとにかく会場人気が高いのです。どんな人も、リープフロッグからのインチキくさいトンガ流チョップで心を掴まれてしまい、笑顔になります。その後の会場は誰もが“トンガ推し”になるほどです。
ですので、ビッグマッチの“掴み”には適任の選手なのです。
果たして、今回の試合もトンガのキャラクターと高橋のヤングライオンならではのがむしゃらさで大いに盛り上がりました。
第2試合にはあのキラーラビットが登場しました。
新しいマスクマンが登場するときというのは、往々にして声援が集まるものなのですが、CHAOS陣営での出場、微妙なルックス、“うさぎ跳びキック”というあまりにも無理のある戦法などにより、声援は逆コーナーのKUSHIDA・田口(宮城県出身)・ライガー組に集まる展開に。
しかも、国内武者修行中のクッシーに、あまりにも綺麗なミッドナイト・エクスプレスを決められピンフォールを奪われるという体たらく。古くはザ・コブラやヒート、最近ではマスク・ド・ゲノムJr.ばりの残念な感じでした。今後の継続参戦はあるのか!?
第3試合には、タイガーマスクvs石井のマスカラ・コントラ・マスカラ(敗者マスク剥ぎマッチ)が行われました。
大会前に行われたPR番組の中で「この抗争を楽しめているファンはかなりの上級者」と棚橋が語るほどに高尚なものに昇華したこの抗争。
現在のタイガーマスクは日本マスクマン史上で最も正体が割れていないマスクマンだと言えるでしょう。
また、石井は日本マスクマン史上初の本名マスクマンとして今シリーズは活動していました。
もちろん、この試合の注目ポイントは「どちらの素顔が見られるか?石井の素顔は何度も観てきたけど(キャンプ場の双子風)」です。
結果はタイガーが、終盤に「マジか!?」と言いたくなるほどに厳しい攻めを石井の頭部に集中させて勝利。
1月に行われたカベジェラ戦(敗者髪切りマッチ)とは違い、石井がおとなしくマスクを剥がされ、坊主頭を超満員札止め=主催者発表の大観衆の前でさらされることとなりました。
気になるのが石井ちゃんの今後です。金村キンタローからの要求でWEWのタイトルマッチをやるようですし、この敗戦を機に新日本とは少し距離を置くような気がします。
第4試合の青義軍とCHAOSのイリミネーションマッチでは、久しぶりに怖いCHAOSが観れた気がします。
飯塚の狂気、矢野のインサイドワーク、裕二郎のいやらしさ、そして中邑真輔の鋭さと、ヒールというか“嫌なやつ軍団”としての陣容が結成2年目にしてようやく揃ってきたように感じました。
会場で飯塚が近くを通るとマジで恐いんですよ。
そして、最近特に感じるのが中邑の発する言葉の強さ・鋭さです。
自分は、中邑のコメントには真壁とはまた違った意味での“コトバの力”を感じます。
昨年の年内最終シリーズでの小島とのマイク合戦で、中邑の言葉はクローズアップされましたが、そのどれもが聞いてて頷ける内容なのです。
今回のシリーズ中全戦で青義軍とCHAOSの前哨戦が組まれていましたが、毎試合後に中邑はコメントで青義軍の存在意義についてつついてきました。
2/6 岐阜大会 永田&井上vs中邑&矢野戦後
中邑「まぁ別に、お前らに変化求めてもなぁ、俺は自分自身に変化が欲しい。考えろ、敗れた、なぜ? 考えろ、負け同士。悪くない、悪くない、コンディション悪くないって。永田?俺とやりたいって? オイ、つまづいたもんなぁ、いいところで。一騎打ちしても一緒、一緒だよ。考えろ、感じたままだけにやってんだろ。しっかり考えろ」
2/12 府立第2大会 井上vs中邑戦後
中邑「青義軍、いいんじゃねぇの、もうそろそろ。井上、お前いつになったら、それ卒業するんだよ。」
上記の二つは、今シリーズの中で特に気になったコメントです。
もともと青義軍とは、3年前のG1タッグに出場した永田&平澤組のチーム名でした。翌年の9月に永田が、燻っている井上&平澤をレスラーとして引っ張り上げることを目的にS・S・マシンを参謀格に据えて結成し、ユニットとしての活動をスタートさせます。また、昨年の9月にはキング・ファレを加入させました。
結成後は、バックステージで“青義軍劇場”なる熱すぎるやり取りを展開し、“熱血プロレス集団”として注目を集めます。
永田が叱咤し、それに井上が大声で応え、永田が張り手を飛ばし、抱き合うというやり取りが毎日行われていたのです。そして、そのシーンのBGMは必ず麻倉未稀のヒーローでした。
その効果か青義軍は、永田&井上組で昨年は年間を通してIWGPタッグ戦線に絡み続け、1年間に5回もタッグ王座戦に臨んでいます。
しかし、ベルトを取れたのは1度だけ―しかも、次の王座戦ではすぐにベルトを落としています。
なかなかむくわれない青義軍ですが、そのたびに立ちあがり全力ファイトを繰り返す姿にファンの支持も集まり、今や新日本きっての人気ユニットにまで上り詰めました(ちなみに新日本に現存するユニットは青義軍、CHAOS、小島軍(仮)の3つ)
ですが、思うような結果が出ないにもかかわらず、いつまでも変わらない青義軍に中邑は牙を剥いたのです。
ここで、上記のコメントに戻ります。
中邑は執拗なまでに青義軍に変化を求めます。それは彼のレスラーとしての信条が「現状維持は堕落」だからです。
その信条に基づいて、彼はCHAOSを結成し、一昨年のIWGP王座奪取後からは、王者でありながらアグレッシブに動きました。彼の対戦相手は時に前王者であり、時に時代の象徴であり、時に当時最強の男でした。
そんな彼にとって、いつまでも変わらない青義軍は気に入らない存在なのでしょう。
そこが青義軍の良さでもあるのですが、中邑の指摘は残念ながらうなずかざるを得ません。
そういう意味では軍団抗争ではなく、イデオロギー闘争であるとも見て取れます。
結果は、インサイドワークで勝るCHAOSが勝利。最後は、1月の後楽園大会に続いてまたも永田が中邑からボマイェでピンフォールを取られています。
青義軍は青義軍で非常に魅力ある、愛すべきチームですが「いつになったら永田はシングル戦線に打って出るのか、いつになったら井上は真の意味でヘビー級の中心に食い込む動きを見せるのか」と思ってしまうのも事実です。
今後の展開に期待したいと思います。
第5試合のIWGPタッグ戦は細かいことは書きません。
とにかく凄い迫力だったということと、Bad Intentionsの安定感に感心したとだけ書いておきます。
後半戦は次回へ。