2011年もすでに5月の終わり。

桜もすっかり散り、木々の枝先に青々とした新緑が力強く並ぶ光景を見ながら、少しの蒸し暑さと時折り吹き抜ける涼やかな風につかぬ間の日常からの離脱を感じるとき、僕たちは思う。


そろそろジュニアの季節だな――-



そう思ったときには、すでに脳内では『スカイ・ハイ』が無限にループされ、かつての名勝負の記憶を巡らせる毎日が始まる。


ボロボロのマスクを首から下げ、素顔を隠そうともせずに戦うサムライ・・・

リング下から睨みつける外道の目からにじみ出る悔しさ・・・

オリジナリティの言葉の本当の意味を教えてくれたミラノ・・・

自他共に認める神になったアニキ・・・

ジュニア新時代を告げたデビットvs飯伏・・・

突然現れ、シーズンが終わっても居着いたタマ・トンガ・・・



僕たちは、彼らの華やかでさわやかな戦いに心を躍らせ、夢を見ました。



そんな一年で最も心が軽くなるシリーズ『BEST OF THE SUPER Jr.』が5月26日から始まりました。
今年は、5月26日~6月10日まで開催され、出場メンバーは過去最多の18名!

参加団体もホストの新日本はもちろん、みちのく、DDT、K-DOJO、CMLL、ROH、スーパークルーなど多岐に渡り、実に参加18名のうち半分にあたる9名が他団体からの参加になります。



大会はすでに3日目を終えており、公式戦は両ブロック合わせて24試合が消化されています。

順当な結果、予想外の結果など様々ありますが、前半戦を軽く振りかえっていきたいと思います。


まずは、Aブロックから、、、


Aブロックは3日目を終えて、9人中5人が4点で並ぶ混戦模様。


中でも存在感を発揮しているのが、みちのくプロレスのフジタ“Jr.”ハヤトです。

これまでの公式戦3試合ではいずれも好試合を展開。相変わらずのバチバチとした攻防で客席を熱くさせます。

特に開幕戦では、念願の“金本越え”を果たし、後楽園ホールに大「ハヤト」コールを巻き起こしました。
ハヤトは、09年12月のSUPER J CUPにて初めて新日本マットに上がり始めてから、何度かスポット参戦してきましたが、その度に彼にとっての標的は金本浩二のみ。

金本は金本でハヤトの攻撃を十分に受け止めた上で、倍返しで勝利してきました。

ここまでは、シングルであろうがタッグであろうが金本の全勝。

今大会の開幕前には、「優勝もしたいが、とにかく金本に勝ちたい」という思いを語っています。

果たして、試合はハヤトの勝利。金本の執拗なアンクルホールドも、顔面に打ち込まれるストレートにも耐え、見事にこだわりのKIDで勝利。

この試合は現時点でのベストバウトです。

2日目のタイチ戦も危なげなく勝利し、勢いは盤石かと思われましたが、3日目のデビット戦ではデビットのハードコア殺法に苦しめられ初黒星を喫してしまいました。しかし、この試合も非常にクオリティの高いもので、試合後にはまたも「ハヤト」コールが巻き起こりました。今後の闘いにも注目です。


他にAブロックではリチャーズとケニーの外国人勢が調子よさそうです。リチャーズは相変わらずのごり押しの攻めで相手を押し切る戦いをし、開幕戦のメインでは現IWGP王者デビットを下すという波乱を起こして見せました。ケニーもパワー・スピードの両面で驚異的な身体能力を発揮しています。



続いてBブロック、、、


こちらは、得点では田口が無傷の3連勝でトップを走り、TAKA・飯伏・サスケなどが4点で追うという状態です。

毎年のように優勝候補と言われ、毎年のように「毎年優勝候補と言われながら決勝戦にも進めない」と言われている田口ですが、今年はコンディショニングもしっかり整え、ミラノコレクションATの遺産であるどどんスズスロウンを繰り出し白星の山を築いています。

今のところ、田口隆祐に死角はなさそうです。


そして、戦前の予想通り圧倒的な存在感を発揮しているのが“東北の英雄”ザ・グレート・サスケです。

開幕戦のTAKA戦こそキャリア通りの地に足のついた戦いをしましたが、2戦目のライガー戦で鉄柱越えのコンヒーロを解禁。エプロンへのミサイルキックなどあまりにもスーサイドな戦いを展開しながら辛勝。

しかし、3戦目の田口戦では、サスケの繰り出す技がことごとく当たらない。特に飛び技はかすりもしませんでした。それでも、ペースを離さないのがサスケの真骨頂です。技が全く当たっていないにも関わらず、ほとんどサスケペースで試合は進み、試合後には戦前の予言通り、田口と共にタグダンス→変なおじさんムーブを披露するというはじけっぷり。勝ったのは田口のはずなのに、客席はもちろんのこと報道陣までもっていってしまいました。全く目が離せません。


また、これまでに行われたBブロックの公式戦の中で屈指の好勝負となったのが、5/28ディファ有明大会でのTAKAみちのくvs外道戦でした。

お互いにユニバーサルを源流に持つもの同士で、プロレスの技術に関しては日本でも指折りの両者だけにテクニックとテクニックがぶつかり合う戦いになることは予想できましたが、軽く想像を超える試合となりました。

2人とも場外への飛び技や雪崩式の技は全く無し、サミング一つ、握手一つでも見るものの視線を集め、たったひとつのヘッドロックにも多くの技術をちらつかせる2人の攻防には素晴らしいものがあります。

当然、2人の歩んで来たキャリアがあってこそのやり取りではあるのですが、いちいちかっこいい。

そして、中盤から終盤にかけてはめまぐるしい切り返し合いが展開されます。これまでのじっくりとした攻防とは裏腹に、


オクラホマロール→マヒストラル→切り返しエビ固め→回転エビ固め→切り返しエビ固め→回転エビ固め→ジャックナイフ式エビ固め→回転エビ固め→逆さ押さえこみ→ジャストフェイスロック→外道エスケープ→ジャストフェイスロック→外道クラッチ→ジャストフェイスロック→切り返しエビ固め→サミング→ヘビーキラー1号


という攻防を、わずか1分あまりの間に、ほとんど互いの身体に触れたまま、あいての技を切り返すことで流れるように繰り出していきました。

中継の解説をしていた棚橋弘至をして「濃厚」や「この試合を見れた皆さんはお得」と言わしめるほどのクオリティです。

飯伏vs田口戦やハヤトvs金本戦、田口vsサスケ戦などもとても素晴らしい試合でしたが、自分はこの試合が今のところ今大会ベストバウトです。非常に高級感溢れる試合でした。



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ここまでざっくりと振り返ってきましたが、どれも熱い試合であることには変わりありません。また、ヘビー級にもNO LIMT分裂や真壁&小島の初合体、中西超元気などいろんなニュースが飛び込んできています。

今後も目の離せない試合・大会が続きそうです!







2月のビッグマッチが終われば、次は『旗揚げ記念日大会』→“春のG1”『NEW JAPAN CUP』(以下:NJC)へと続き、その優勝者とIWGP王者が、鉄板興業として名高い『NEW DIMENTION』で雌雄を決するのがここ最近の新日本プロレスのスケジュールです。


今年のNJCは開幕戦を旗揚げ記念大会で行い、3・20兵庫で優勝者が決まります。



今年のトーナメント表は以下の通りです。


後楽園の天井


真壁vs小島、アンダーソンvsMVP、中西vs裕二郎、後藤vs中邑を3・6後楽園で、天山vs飯塚、井上vs矢野、永田vsバーナード、内藤vs田中を3・13浜松でそれぞれ行い、2回戦は3・19愛知、準決勝・決勝を3・20兵庫で行われます。



所属外の参戦選手は小島・MVP・田中の3人です。田中将斗は1・4ドーム以来の参戦ですので、昨年までの日常的に新日本のシリーズに参戦していた頃を思うと、なんだか久しぶりな気がします。また、MVPは2・20仙台の試合後のコメントでも言っていたとおり、今後、国内では新日本を主戦場にしていくことにしたようです。


NJCはG1と比べると、所属外の大物選手の参戦は控えめで、ほとんど純血メンバーで大会が行われるのが特徴です。純血で行われると、対戦カードの新鮮味や豪華さなどを出すことが非常に難しくなるのですが、NJCは毎年なかなかに興味深いカードをくんでくれます。まさにニュージャパンクオリティですね。


そして、純血で争われるからこそ、この大会の結果如何で団体内の勢力図が大きく変わる可能性も孕んだ注目の大会でもあります。

昨年の大会では、凱旋帰国間も無い内藤哲也が棚橋を破るなどの番狂わせを起こし台頭。ストロングマンの初参戦も昨年のNJCでした。「凄すぎる筋肉」の触れ込みで来日したストロングマンは、1回戦で棚橋に敗れるも、そのインパクトだけでその年のG1にもエントリーされ、年の暮れには中西との筋肉交響楽団でベストタッグ賞まで受賞してしまうという大出世。その原点が昨年のNJCにあるのです。

もう少し遡ると、アンダーソンの初来日も08年のNJCでした。永田の欠場により急きょ決まったことでしたが、持ち味を発揮し、その後はGBH→CHAOS→本隊と渡り歩きながら日本でのキャリアをアップさせ、今では立派なタッグチャンピオンであり、ファンの間でも評価の高いシングルプレーヤーにまで成長しました。

彼らの様に、NJCをきっかけに大きなステップアップのチャンスを掴む選手が毎年現れることから、なかなかに目の離せない大会と言えるでしょう。


ここからはNJCの展望について書きたいと思います。


今年は、1回戦からかなり豪華なカードが並んでいます。まずは、開幕戦の後楽園大会から。
開幕戦のカードで注目なのは、ダントツで真壁vs小島と中邑vs後藤でしょう。

真壁vs小島は何を隠そう先シリーズにて棚橋の持つIWGPへの挑戦権をかけて戦ったカードです。この試合は、試合終盤にエプロンに立ったタイチに真壁が気を取られ、その隙をついて小島がラリアット一閃。いろいろと物議を醸した一戦でした。この挑戦者決定戦が後楽園で組まれたときでさえも「豪華すぎる」と話題になったくらいですから、今回のカードもプレミア感は満載です。これで両者のシングルは昨年10月、1月の挑戦者決定戦に続いてわずか半年間で3回目になります。そして過去2回はいずれも真壁が敗れています。3連敗は避けたいところですが、小島も先日のビッグマッチで棚橋に連敗していますから、シングル3連敗は防ぎたい。2人のレスラーとしての存在感に隠れてしまいがちですが、2人とも実はけっこう崖っぷちなのです。



続いて、中邑vs後藤の方に映ります。このカードは21世紀の新日本において鉄板中の鉄板カードです。昨年は4月にIWGP戦で、8月にG1で、10月に両国で、と3回戦っているのです。そして、そのどれもが外れ無しの好勝負。しかも、このカードのおもしろいところは、IWGP戴冠歴などに代表されるように同期でありながらキャリア・実績ではリードする中邑の方が、最近の対戦では分が悪いというところでしょう。事実、昨年の対戦成績は後藤が2勝1敗で勝ち越しているのです。さらに、中邑はG1やNJCなどのシングルリーグ・トーナメントシリーズでの栄誉にはことごとく縁が無いのです。史上最年少での戴冠、カート・アングル撃破・ベルト統一、連続防衛記録6回などIWGPには心の底から愛されている彼ですが、G1はおろかNJCでも優勝したことがありません。本人の口から公式に「苦手としている」などの発言があったわけではありませんが、実力のわりに実績を残せていないのが現状です。その反面、後藤はシングルトーナメント戦は大得意にしています。キャリア8年にして08年のG1に優勝、09年のNJCにも優勝し“夏・春連覇”を達成。翌10年のNJCにも優勝し史上初の連破をしており、今年の大会には3連覇がかかっています。さらに、後藤は先日のビッグマッチで内藤を撃破していますから、今年のNJCを制覇すると棚橋を除く新日本の全選手の頂点に立つと言っても過言ではない状況を手にし、悲願のIWGP獲得へ向けて万全の態勢を敷けることになります。後藤としては是が非でも今の勢いに乗り勝ち上がりたいところでしょう。

対戦成績の不調・シングルシリーズとの戦績・近頃の勢いなどなどから判断すると後藤の方が優勢に思えますが、どうなるでしょうか。中邑は昨年5月に真壁に敗れてベルトを落としてからはいまひとつ浮上のきっかけをつかめずに、昨年後半は潮崎、後藤、小島と大物相手にことごとく連敗。ドームで潮崎へのリベンジこそ果たしたものの、先シリーズも青義軍との抗争という彼自身にとっては不本意な形の戦いを続けることになっており、現状へのフラストレーションは十分にあると思います。そういうときの中邑真輔は“何か”をしてくれます。`09年に、自身に課した変化を具現化するために、狂気を己の拳と膝に宿し、永田や高山といった時代を象徴する相手にぶつけ、中邑時代を作り上げようとしました。そのときに見せたようなギラギラした、栄光に飢えた中邑が出てくると、この試合は分かりません。

他にも、開幕戦ではMVPvsアンダーソンなどの『アメプロ直輸入』のようなカードもありますので、期待は膨らみます。


そしてもう片方のブロックの1回戦4試合は13日の浜松で行われます。この4試合のなかでの最注目カードは何と言っても内藤哲也vs田中将斗でしょう。このようなシングルのトーナメントでも組まれない限りは、めったに見られるようなカードではありません。


この2人の接触履歴は3年前まで遡ります。当時は新日本とZERO1-MAXがバチバチの対抗戦を行っていた頃です。田中はゼロワンの主力部隊として大森等とともに、中西や金本、永田などとヒリヒリするような戦いを展開していました。田中が対抗戦の中心で輝いていたころに、現在プエルトリコで武者修行中の平澤らと前座のタッグマッチなどに先兵隊として駆り出されていたのが、当時はまだ一ヤングライオンだった内藤哲也です。その当時は田中と絡むのは金本などの先輩選手と組んだときだけで、内藤vs田中という図式はクローズアップされませんでしたし、そこまでの存在感もありませんでした。

そんな内藤は、その後、海外武者修行へ向かい、昨年1月に凱旋。昨年のNJCでの棚橋撃破に始まり、G1では時のIWGP王者:真壁刀義から完璧な3カウントを奪うなどしてシングルプレーヤーとして飛躍。プロレスグランプリ(週プロ読者が選ぶプロレス大賞)の最優秀ニューウェーブレスラーにも選ばれました。また、先日のvs後藤戦でも大熱戦を展開し、敗れはしましたがまたも内藤哲也の評価を上げる結果となり、良い勢いに乗ってこの戦いに臨むことになります。

そして、このカードは内容にも大いに期待していいカードでもあります。田中将斗は日本でも屈指の“名勝負製造機”として名高く、かつて彼がしかけた永田や後藤、真壁達との抗争での試合はどれも大変アツいものでした。内藤も先述のとおりシングルプレーヤーとしての評価を高めつつあり、昨年4回行われた棚橋との試合はどれも年間ベストバウト級の闘いで、G1での各公式戦も非常に盛り上がりました。そんな2人が向き合うのですから、期待感は否が応でも高まります。

そして、もう一つ見逃せないのが、飯塚高史がちゃっかりエントリーしている点です。飯塚は現代の日本プロレス界においては絶滅危惧種ともいえる“狂乱型ヒール”です。ビッグマッチでは実況の野上アナのシャツをびりびりに引き裂き、地方会場ではちびっこを恐怖のどん底におとしめる極悪人です。飯塚の恐いところは言葉が通じないところであり、3年前に悪い人になってからは、試合中はもちろん試合後のバックステージでも唸り声を発するばかりで意味のある言葉を口にすることはなくなりました。飯塚の試合後のコメントを新日本の公式HPなどで見ると「飯塚は意味不明の声をあげながら控え室へ・・・」や「『ウァァァァァ!』(吼えつつ、カメラマンに掴みかかりつつ、控室へ)」や「※飯塚はカメラマンを突き飛ばして帰って行った」などの文言をよく見ることができます。そんな飯塚が、NJCのような大会に出るときは決まって結果度外視の大暴れを見せることが多いのですが、今回はどうなるでしょう。もしも、あの飯塚が勝利を目指してリングに上がるならば、飯塚の今後の展開にも期待感が膨らみます。


最後に、今年のNJCの勝敗予想をしたいと思います。




後楽園の天井

トーナメント表まで引っ張り出してきて、こんなこと言うのもなんですが、あまり自信がありません。


優勝は永田で、決勝は永田vs中邑で先シリーズのリベンジを達成と予想します。

左側のブロックは、まず真壁が小島へのリベンジに成功。アンダーソンがMVPの魅力を出し切った上で玉砕。裕二郎が中西の巨体をジャーマンでぶっこ抜き番狂わせ。後藤は中邑に敗れ、足踏み。

右側のブロックは、天山がアイアンフィンガーを奪い取り大暴れで反則負け。井上が矢野をスピアーで下し勝利

。バーナードは永田に負けてしまい、近頃の勢いにブレーキ。内藤の切り返しを振り切って田中が勝利。ってとこですかね・・・。


2回戦は、まず真壁がタイチの介入にまたも気を取られ自爆。裕二郎が第3試合くらいで敗北。飯塚と井上は、希望的観測を込めて飯塚勝利に一票。永田と田中は、ありえないくらいの熱闘に永田が辛勝。で、ベスト4はMVP、中邑、井上、永田の4人。


MVPと中邑・・・このカードが個人的には悩みの種でして・・・実現した時の絵が見えないので・・・どうですかねぇ。永田が飯塚を危なげなく片づける。で、優勝決定戦は永田vs中邑の鉄板カードが実現し、これまでの屈辱の数々を永田が返上する形で勝利!という予想です。


各公式戦の予想はあまり自信がありませんが、優勝決定戦のカードと永田が優勝するっていうのは実は自信ありです。

そろそろ永田たち第3世代が動いても良い時期にきてる気がしますので、その期待も込めて永田推しでお願いします。







おわりに、前回の記事が新日本プロレス公式twitterアカウントである“ガオ”から「たいへんよく書けましたガオ」と褒められたことが心の底から嬉しかったので、掲載させていただきます。


njpw1972 新日本プロレスリング株式会社
大変良く書けましたガオ。 RT @thieri14ars ブログ更新!20日の新日本仙台大会の感想を3本に渡り書きました。たぶん2万字くらい! http://ameblo.jp/thieri14ars/  #njnb




前回は前半戦までの感想を書きました。今回は残りの試合についてと大会全体の総括を書きたいと思います。



休憩明けの試合は、デビットvsTAKAみちのくのIWGPジュニア戦でした。

現代ジュニアの最先端を行くようなデビットと、ある意味でオールド・ファッションなジュニアの闘いを信条とするTAKAのぶつかりということで、かなり期待していました。


前に他記事でも書いたと思いますが、自分の昨年のベストバウトはカズ・ハヤシvsTAKAみちのくの世界ジュニア戦です。これだけ大技が連発される時代の中にあって、彼らの見せた一点集中攻撃と一撃必殺の攻防を軸とした試合に強く引き込まれてしまったのです。


デビットは昨年6月の丸藤との試合でベルトを獲得してから、青木、ケニー、リチャーズ、飯伏という防衛ロードを歩んできました。青木がかろうじて関節技を得意にするだけで、あとの3人はいずれも“現代ジュニア”と形容されるにふさわしい選手たちです。

デビットは、TAKAのようなしぶ~いジュニアの試合をタッグとしては邪道&外道や論外&FUJITA戦などの職人タイプとの対戦経験がありますが、シングルではあまり経験が無いのです。また、デビットは飛び技や一発逆転の大技などかっこいい技は数多く備えている一方で、グラウンドで主導権を握るような技や相手を苦しめる技というのは意外と持っていません。その辺りから考えてもTAKAの得意とする展開に持ち込まれたら不利になることが予想されました。


試合の方は、終始デビットのペースで進みました。グラウンドよりもスタンドでの攻防に時間を割く展開で、その展開に押されたからか、試合の中盤辺りであっさりとTAKAがケブラーダを出しているのを見ても、明らかにデビットの得意とする試合展開でした。

結局、TAKAは戦前語っていたようなしぶい大人のジュニアを見せることはできずにスピンキックからのブラッディー・サンデーで敗れました。もしかしたら論外の事件のことも少なからず影響していた気もしますが、それは本人にしか分からないことです。試合後のコメントやブログを見ても新日本には継続参戦していくようなので、また彼本来の魅力を見せつけてほしいと思います。


そして、試合後にはKUSHIDAが挑戦をアピールしました。KUSHIDAは良い選手には違いないですし、戦績で見てもデビットとは昨年1勝1敗なんですが、“実績”という部分ではまだ足りないように思います。2/24にNEVERで内藤戦がありますので、そこで勝利するようなことがあればタイトルマッチ実現に向けて一気に動く気がしますが、あまり現実的ではないと感じます。もしくは、2/25にSMASHの興業がありますので、そこで動きがあるのかもしれません。


一つ気になるのが、デビットのパートナーである田口とライガーのCMLL王者コンビです。ライガーはCMLLミドル級とカンペオン・ウニベルサル王座(メヒコ版G1クライマックス)を保持しており、田口もCMLLウェルター級とIWGPジュニアタッグ王者です。実績では十分の2人ですが、IWGPジュニアに向けてはほとんど動きを見せません。ライガーは丸藤政権時代の昨年5月にCMLLミドル級のベルトをネグロ・カサスから奪った際に「実績を作ったのだからすぐにでも(挑戦に)行きたい気持ち」と語っていましたが、スーパージュニアやメヒコへの長期遠征により実現はしておりません。また、田口に至っては昨年のG1のシリーズ中からデビットへの『完全サポート』を宣言。シングル王座への欲は一切口にしません。そこが田口の奥ゆかしさでもあるんですが・・・今後に注目です。



第7試合のGBHvsタイチ&MVPは、MVPの顔見せ的な意味合いが強かったような気がします。タイチが完全に脇役となりMVPをサポート。適度に観客のヒートを買いながら、MVPへと繋ぎます。おかげでMVPは自身の得意ムーブを惜しげも無く披露することができました。しかし、さすがのMVPと言えども、新日本マットにおいては真壁の人気には及ばず、声援はGBHの2人に集まる展開です。1/30の後楽園大会でも感じましたが、最近の真壁の支持率はすごいですね。

週プロによると、MVPはIGFからかなり好条件のオファーを貰っていたようですが、ジョニー・エース(90年代の全日本を主戦場にしていた元レスラー。現WWE人事担当者)のアドバイスから新日本への参戦を決めたようです。このような経緯を考えると継続参戦もあるかもしれませんね。MVPが新日本を選んだ理由は「レスラーとしてのキャリアップを目指して」ということらしいので、次シリーズのニュージャパンカップへのエントリーももしかしたらあるのかも・・・。

元WWEということで、ドームで見たRVDやジェフ、TAJIRIやFUNAKIにも同じことを言えるのですが、彼らは『自分がどうふるまえば最もカッコよく見えるのか』をよく心得ています。言い換えれば自己プロデュース力です。そういうことを考える度に、プロレスラーというのはファイターであるだけでなくエンターテイナーでもあるのだなと感じます。

このカードに関して感じたことをもう一つ。本間のコケシ(コーナーから倒れこむように決めるヘットバット)の自爆はサスケの桶ミコ(和桶へのトペ・アトミコ)並みに痛そうです。



セミファイナルは後藤vs内藤のシングルマッチでした。

世代交代が進まないことが問題として取り上げられて久しい日本プロレス界ですが、内藤が“追う側”になるのは当然として、他団体ではまだ新世代などと呼ばれる世代の後藤を“追われる側”に置いての世代闘争が成立する辺りに現在の新日本の層の厚さが見えます。

以前から後藤は、結果はさておき、シングルマッチの内容には定評のある選手でしたが、内藤もまた昨年、都合4回の棚橋戦を経てシングル戦線での充実度を見せていただけに、アツい試合になることは予想していましたが、この試合はかなりのものでした。

後藤の『昭和のストロングスタイル』と呼ばれる激しいスタイルと、武藤から棚橋、そして内藤へと続く新日本伝統の『“陽”のプロレス』が良い感じにかみ合い、会場の熱気も手伝って壮絶な試合へと昇華し、『何度でも見たい名勝負』となりました。

結果は後藤の勝ちでしたが、内藤にとっても大きな意味のある試合でした。ビッグマッチのセミにラインアップされても何も不思議に感じないほどの存在感を得たことは大きな前進と言っていいと思います。大会終了後に金沢克彦氏も言っていたように、内藤の進化は早すぎます。ニュージャパンカップが楽しみです。

また、後藤にとってはこの試合がIWGPに向けての大きなステップとなるでしょう。ニュージャパンカップで優勝すれば文句なく挑戦権を手に入れられますが、そうでなくともある程度の大物を倒すことになれば、5月や6月には挑戦権が舞い込んでくることになりそうです。



メインはドームの再戦となる棚橋vs小島のIWGP王座戦です。

試合開始前から小島のセコンドにつこうとするタイチに会場が一体となっての「帰れ」コールが起こり、海野レフェリーもマイクで退場を指示。それでも居座るタイチに真壁が出て来て蹴散らしたことで、会場は一気に盛り上がりました。たしかに、煽りVであれだけ悪く映されたらタイチがこうなることは仕方のないことです。セミの盛り上がりを残し、なおかつこのような展開を経てのことですから、会場ができあがっていたのは画面からもひしひしと伝わってきました。そのような状況で、棚橋と小島が向かい合うのですから良い試合になるのは必然です。


ドームと同じように棚橋は小島の右腕を攻め抜きますが、小島は前回の足殺しとはうってかわって、頭部・頸部へ攻撃を集中させる戦法を取りました。特に、厳しかったのが何度か放ったDDTです。あまりに厳しい角度と速度に棚橋の身体が一時的にマットに対して垂直になるほどでした。その後もコジコジカッターや垂直落下ブレーンバスターなどで追い打ちをかけ、左のラリアットを出すところまでは行ったのですが、終ぞ右のラリアットを完璧に炸裂させることは叶いませんでした。

それは棚橋がことごとくラリアットを決めさせなかったからです。得意のスリングブレイドやドラゴンなどの今までのパターンに加えて、脇固めのような形で巻き投げを見せたりもしました。

結果は、棚橋の勝利で王座防衛に終わりました。


小島の敗因は最後まで右のラリアットをベストなタイミングで決められなかったことの1点に尽きます。


序盤は、先述の厳しいDDTをポイントに小島がリードし、中盤もパズルのピースをはめていくように、得意技を繰り出し、頭部にダメージを蓄積させてフィニッシュに向けて試合を組み立てていきます。そして「あとはラリアットを決めるだけ」という段階まで小島は持っていったのですが、そこから棚橋の懐の深さが発揮されます。最後の一手(=右のラリアット)を詰ませません。小島の連続王手のようなラリアットの連発をことごとく切り返します。そして、腕攻めと各種スープレックスで動きを止め、掟破りのラリアットまで繰り出し、最後はきっちりと正調のハイフライフローを決めて勝利しました。

昨年8月のG1決勝で対峙してから、1・4ドーム、そして今回と、どれもすさまじい名勝負でした。向かい合う毎に2人の闘いは進化し、また深化していきます。『自分のフィニッシュにどうつなげるか』と『相手のフィニッシュをどう防ぐか』の高度なせめぎ合いと切り返し合いに目を奪われます。コジコジカッターをファイナルカットで棚橋が返した瞬間のカタルシスったらないです。

本来、プロレスとはこのような攻防の末に勝負を決するものだと思うのですが、派手な大技が飛び交う傾向のある現代の日本プロレスシーンにおいては新鮮に映ります。オーソドックスで、トラディショナル、だけど新しいプロレスを小島と棚橋は見せます。このようなレスリングは一昨年辺りから新日本プロレス全体の試合においてもよく見られるようになりました。自分はこういうプロレス大好きです。

試合後に小島は、今後も新日本に継続参戦することをアピールし、棚橋へのリベンジも口にしました。論外の件もありますので今後はどういう形で動いていくことになるのかは分かりませんが、ニュージャパンカップへのエントリーも固いでしょうし、今後の展開に期待しています。


一方の棚橋は、リングで涙を見せました。リング上で愛を語る棚橋ですが、公の場で涙を見せることは非常に稀な選手なのです。


前々回の記事に書きましたが数年前に行われたある仙台大会で「(会場が)お通夜みたいだった」「(観客が)何を求めているのか分からない」というコメントを試合後にした選手がいました。それが何を隠そう棚橋弘至でした。前々回の記事には、新日本にとってはそれくらい仙台大会が一種の鬼門として存在していたという話を書きましたが、その影響をもろに受けていたのが棚橋などの現世代の選手たちです。

だからこそ、今回の仙台大会の大成功、超満員札止めの観客からの大「棚橋」コールに感極まってしまったのでしょう。

デビュー当時から棚橋は「新日本プロレスは自分が支える」「新日本プロレスを愛している」と声高にアピールしてきた選手です。つい数年前までその声に真剣に耳を傾ける人は決して多くありませんでした。その発言は最近「プロレス界を自分に任せてくれ」「新日本の選手、レフェリー、社員の生活はもちろんのこと、その家族の生活までをも自分が守るんだ」というものに変わっていきました。彼はその発言に沿うように自ら日本全国に出向きプロモーション活動に精を出し、試合でも高品質のものを提供し続けました。その声を嘲る人間の数は年々減っていき、見事なまでのピープルズチャンピオンへと変貌しました。

会場が一体となっての「棚橋」コールと「愛してます」の大合唱。試合後にリングサイドに駆け寄るファンの姿と、ひとりひとりとスキンシップを取るチャンピオン。スクリーンの中からのチャンピオンの呼びかけにしっかり応えるファンの姿――非常にハッピーな空間が現出していました。

プロレスは野蛮なものでも、物騒なものでも、危険なものでも、それこそ有害なものでもありません。プロレスは人を幸せにさせる機能を持った文化です。そう感じるに十分なほどの瞬間でした。



最後に今大会全体の総括っぽいものを書きたいと思います。

仙台という“鬼門”にあえて挑む形でビッグマッチを開催し、選手・スタッフが一丸となってのプロモーションによりチケットの売れ行きも好調で、鬼門打破が見えた大会でしたが、当日に出場予定選手の逮捕というアクシデントに見舞われるも、やはりこの局面も選手、スタッフそしてファンが一丸となって盛り上げ、屈指の名興業へと昇華させました。

自分のTwitterでもつぶやきましたが、この結果は新日本の選手、スタッフ、ファンの勝利であり、プロレスの勝利に他なりません。

プロレスはまだまだ負けません。そんなことを実感させてくれた大会でした。