地球に舞い降りたドラマたち -6ページ目

地球に舞い降りたドラマたち

ボクが感じたものがたりを載せていきます。

シャカン シャカン シャカン


50年間、動き続けている製麺機機械から、
リズムに合わせて麺が出てくる。


「50年かぁ。
いやぁ、よく動き続けてくれるもんだ。
ろぉ。ばぁさん。 」

「はぁい。」

「ん?! あんらぁ、おじいさん。
こんなところに、 小さなバッタが一匹いますよ。」


「あんりゃぁ、 こりゃ、オンブバッタの雄じゃないかね?」


「でも、メスにオンブされていませんね。
ふられたんでしょうかね? 」


「わっははは、かもな。
じゃが、このオンブバッタ、
えらい体がボロボロじゃの。 」

「ばぁさん、オンブバッタに、
きゅうりをあげておくれ。 」

「はぁい。」


おばぁさんは、台所からとってきた、

みずみずしいきゅうりを、バッタにあげました。

「ふぅ。50年かぁ。」

「長いようで、 振り返れば、ものすごく短いものじゃのぉ。 」

おじいさんは、タバコを吸いながら、

ゆっくりとかみ締めるように、バッタに語りかけます。

「おい、バッタよ。
知っとるか?
あそこにある製麺機はの、
50年間、動き続けてての、
たくさんの人に、麺を届けているんじゃよ。 」

「あの機械はな、
ばぁさんとの結婚した当日に、
家に届いてのぉ。 」

「すでに麺屋をやっていたんじゃがな、
終戦した直後だから、お金が無くてのぉ。 」

「新しい製麺機か、結婚式か。
そんな選択に迫られてな、
わしも、あのときは若くてのぉ、
「麺機なんか、あとで買えばいい。
だから、オレと結婚しよう!!」


とプロポーズしたらの、


ばあさんに、
「結婚はさせていただきます。
だけど、私はあなたと結婚式をしたいんじゃありません。
私は、これからの人生を、あなたと苦しみを分かち合いたい。
あなたの喜びを、一緒に喜び合いたいんです。
だから、私は結婚式なんていりません。」


「って、怒られての。笑
結婚は受け入れられたが、
結婚式はできなかったんじゃ。 」

「かっこ悪くてのぉ。
友達にプロポーズの言葉を聴かれるたびに、
いつもなんも言えなかった。 」


「製麺機が50年間、
わしたちの生活を支えてくれた。 」

「ばぁさんが、
50年間、わしを支えてくれた。
わしも50年間、ばぁさんを支えた。」

「機械も人も、地球さえもな、
大切にすれば長続きするもんさ。」


「さ。 オンブバッタよ。
外に出て、お前のやるべきことをやりなさい。 」




どーも、

バッタです。


実は、おばあさんの言ってたこと、
当たっているんです。


彼女にふられたんです。


あははは。


彼女を探していたら、
クモやら、人間やらに捕まりそうになって、
見たとおり、ボロボロになりました。

ボロボロになったのに、
いまだに彼女に会えていない。

しかも、彼女に会っても、
やり直せるなんて、保障もない。


なんにもない。

あははは。

……。

笑ってくださいよ。



あの日、ボクは、ずっと好きだった彼女に、
震える声で、告白しました。

大好きです?
愛している?
怖くて、そんな言葉なんか出やしなかった。

精一杯、でかい声で叫んだけど、
あのとき、なんて言ったのか
覚えていない。


ただ聴こえたんです。

聴こえるか聴こえないかの、
小さな声で、


「はい。」


って。


嬉しくて、たまらなくて、

ピョン♪ピョン♪

今までにないくらいの高さで飛び跳ねました。


それからボクは、
毎日、彼女の背中に乗っかって
生活していました。


でも、そこからが
ボクの間違いでした。


移動するときは、
いつも彼女の背中にオンブしてもらう。

葉っぱは、いつも、
取りに行ってもらう。


最初は優しいなぁって思っていましたが、
いつしか彼女の優しさが、
当たり前になりました。


彼女のことは、
すべてわかっているつもりだった。

彼女も、ボクのことを、
すべてわかってくれていると思っていた。

いつしかボクは、
本当に彼女の重荷になっていたんです。


突然のさようなら。


ポロポロ、涙をこぼしながら
彼女が飛んで消えていきました。


最初は、実感なんてなんにもなくて。
何も信じれなかった。


だけど、ボクの下にあるのが、
彼女の背中じゃなく、
地面だけで、それがボクに現実を突きつける。


地球が壊れる瞬間でも、
2人一緒にいる。

って思っていました。

それがこんな形になるなんて。
人生って、何が起こるかわかりませんね。


あぁ、悔しいけれど、
今になってわかるよ。


別れ際に流した彼女の涙が
ボクをどれだけ愛してくれていたのかを
教えてくれた。


愛している。

ボクは、それを出すことに一生懸命で、

愛している。

キミのそれを、
ひとつも受け止めていなかった。


さて、ボクはどこにいけばいいんだろう。



「ありゃぁ、おじいさん、
こんなところに、
もう一匹、バッタがおりますよ。 」

「あんりゃぁ、こりゃぁ、
オンブバッタのメスじゃな。 」

「今日は忙しくないのに、
バッタバッタした日ですねぇ。 」

「何を言っとるんじゃぁ、 ばぁさん。」


「この子もボロボロですね。
あ!さっきのオンブバッタと、
何か話していますよ。 」



「ふぅーむ。
ばぁさん、今日は、
ほんにいい日じゃな。 」


「はぁい。
だって、今日は
50年目の結婚記念日ですもの。 」