てんとう虫 | 地球に舞い降りたドラマたち

地球に舞い降りたドラマたち

ボクが感じたものがたりを載せていきます。

てんとう虫・・・「虹色マラソンで優勝を夢見る。」
クマバチ・・・『てんとう虫の親友。』


今日は、4年に1度、地球に大きな虹が架かる日。
世界中にいる虫たちが、虹の端から端まで飛び抜く
虹色マラソンが行われます。

マラソン会場を盛り上げようと、
スズムシ、コオロギたちの
陽気な音楽が飛び交います。

『よ!てんとう虫、いよいよやなぁー!』

てんとう虫の応援に来たクマバチが、
羽をふるわせて準備体操しているてんとう虫に
話しかけます。

「あぁ、ボクはこのマラソンに優勝して、
ほかのてんとう虫たちに、てんとう虫でも、
あきらめずに頑張ればトンボやハエのように早く飛べるってことを、
見せてやりたいんだ。
まぁ、そんなボクを、自分でも見てみたいしね。」

朝日がにっこり笑う中、
ぶぉーーー!!
というゾウの大きな鼻息を合図に、
虫たちが、一斉に虹の端へ向けて、
飛び立ちます。

一斉に飛び出した虫たちの、羽音が、
虹を揺らし、気持ち良い音を奏でます。

そのなかでも、てんとう虫とトンボが先頭に立ち、
4年間の練習の成果をぶつけ合います。

朝日が、真っ赤な夕日に変わった頃、

トンボと先頭争いをしていた、
てんとう虫がふと横を見ると、
モンシロチョウが、クモの巣に捕まっていました。

モンシロチョウは、クモの巣からなんとか逃げようと、
必死にもがきますが、抜け出せず、
どんどん羽がボロボロになっていきます。

このモンシロチョウを助ければ、
マラソンで優勝することができません。
4年間、待ちに待ったマラソン。
この日のために、さまざまな練習をしました。
泣きました。笑いました。頑張りました。

「少しだけなら、なんとかできる!」

どうしてもモンシロチョウを
見捨てることができなかった
てんとう虫は、モンシロチョウに向けて、
突進しました。

「コンチクショォーーー!!」

ドンッ!

モンシロチョウの手足を絡めている糸は、
なかなか切れません。

「もう一度!」

ドンッ!

「もう一度!!」

ドンッ!

あたりがすっかり暗くなり、満点の星空が広がっている頃に、
やっとクモの糸が切れました。

それは、さっきまで競いあっていた
トンボが1位でゴールしてから、
しばらくの時間が経っていました。

クモの糸と一緒に、今年の虹色マラソンで優勝するという、
てんとう虫の希望の糸も切れてしまいました。

モンシロチョウは泣きながら何度も、
てんとう虫に感謝して飛んでいきました。

満点の星空が、クモの巣だらけの、
てんとう虫の背中を照らします。

朝日が顔を出そうとしている頃、
精神的にも、肉体的にもボロボロになった
てんとう虫が、やっと虹色の端に着きました。

周りには他の虫たちはいませんでした。

まだ明けきらない夜の暗さが、
てんとう虫の背中をさらに暗くしました。


3ヶ月後。


あのマラソンから、一度も、
てんとう虫の羽音は鳴り響きませんでした。

親しかった虫たちは、最初は、
てんとう虫のことを心配しました。
しかし、てんとう虫は心配されればされるほど、
自分が無力だと思い込み、自信をなくしてしまいます。

そんなてんとう虫から一匹、また一匹と
虫たちが離れていきました。

影では、てんとう虫のことを、
夢に敗れた転倒虫とバカにする虫もいます。

「もう空は飛べない。」

「死にたくて、鳥に食べられてやろうと思ったけど、
鳥すらお前は不味いと言って食べてくれない。」

「ボクは、もう何をやってもダメなんだ。」

『いつまでそうやっているつもりなんや?』

3ヶ月間、てんとう虫を黙って見続けた
クマバチが飛んできました。

「来るなクマバチ!
ボクは同情なんか、ちっともされたくない!!」

「ボクは、優勝できなかったんだ。
口だけのダメなてんとう虫なんだ。」

『優勝できなかったのは、事実。
だけど、お前はなんのために
虹色マラソンで優勝したかったんだ?』

「……。」

『自分で言ってたやんか。
てんとう虫でも、トンボやハエのように、
勇気を出して頑張れば早く飛べるってことを、
ほかのてんとう虫に見せてやりたいんやって。
自分でも見てみたいんやって言ってたやんか!』

「……。」

『てんとう虫、オマエは空を飛ばなあかんねん!!』

『それだけお前の空を飛ぶ姿は、勇気をくれるんやで』

『誰のためでもない、お前はお前のために空を飛ぶんやで』

「……。」

「まだボクの空を飛ぶところを、観たい虫っているかな?」

『おるに決まってるやん。少なくてもオレがそうやで!』



「……。」



次の日から、またてんとう虫の羽音が聞こえるようになりました。

もう誰も、てんとう虫のことを、
転倒虫と呼ぶ虫はいません。


その代わり、


何度でも、何度でも挑戦するてんとう虫の姿を見て、
みんなに勇気を灯す点灯虫と呼んでいます。