最小サイズの3列シートを持つミニバンとしておそらくもっとも売れている自動車であるトヨタのシエンタをレンタカーで借りたので、印象を記す。
大きさは十分に5ナンバー枠に入るサイズで、ボンネットは短いが丸みのあるデザインであまり見切りは良くない。デザインはアルファードとは対極にあるような、押し出しの強さがどこにもないものであり、全く目立たない存在感の薄さがある意味潔い。しかしながら他に類似したデザインの車両は見たことがない独自性の高いもの。フランス車のようにも見えて、なかなか秀逸である。先代のシエンタも歌舞伎のようなフロントマスクが冒険的なデザインとして印象的だった。その前の初代も丸いヘッドライトがポルシェ911のごとくクラシカルでかつ親しみのあるデザインとなっていた。このシリーズのデザインは限られた予算やサイズでなかなか力をふるっているようで、トヨタの力量を感じる。
視界はピラーがやや太く、斜め前方の視界はAピラーが邪魔であまり良くないが、最も良くないのはサイドミラーのデザインで、大きさのわりに鏡面の面積が狭い。鏡面の端から3~4センチも外側にミラーの端があるのは何のため大いに疑問。この大きさのミラーならぎりぎりまで鏡面の面積を広げるようにしてもらいたいものだ。Bピラーやさらに後方も窓の面積はそこそこで、あまり広く視界を確保しようと設計している意図がみられない。おそらく車体剛性の確保が優先してしまっているのだろう。
USBポートは標準装備。シガーライターソケットもとい電源ソケットも備えてある。
Blutooth接続したスマホの音源を標準カーAVナビシステムで再生したが、音質は車格相応のラジカセ程度のもの。イコライザーが備えてあり、車速感応型の音量自動調整機能もあり。
最近の車の最新装備について。
・車線逸脱警報や自動ブレーキ・先行車発進追随警報つきオートクルーズが装備。ステアリングを放置の警告もあり。
・車線逸脱警報の警告は表示とアラーム音に加えステアリングへの修正介入あり。
・ガイドライン表示付きのバックモニターあり。
・オートライトの点灯タイミングは即時点灯で適切だが、消灯タイミングはやや遅い。どの車両も消灯が遅いと感じるのはこちらの感覚がせっかちなのか。
・ワイパーを使う機会は無し。
車のつくり全般について。
・四方の視界は普通。車両感覚の掴みやすさはサイズの割には特に優れた感じはない。
・トヨタのハイブリッドということで、よく躾けられており、モーターとエンジンの動力源の組み合わせ・切り替えはほぼシームレス。フラットなトルクが合成されて出るし、低中速域ではモーターのアシストにより相当なダッシュも効くので、快適な街乗りができる。このクラスの車両としては一般道の法定速度内なら、加速力に不足はほぼ感じない。多人数乗車の場合は不足を感じるだろうが、少人数なら気にならない。
減速時も回生ブレーキと油圧ブレーキの切り替えに段を感じさせない制御ができており、ブレーキングもスムーズ。
ただしハイブリッド車の常で、エンジンの音質は特に気持ち良いものではない。まあ、3気筒よりはまだましかもしれない。
・減速は、踏力に対してのリニアさがやや不足しており、トヨタっぽい、ハイブリッドぽいブレーキと言う感じ。
・シートの位置およびステアリングの位置に対して、ペダルの左右位置はやや左にオフセットされているのは、車格からするとよくあるパターン。
・サスペンションの硬さについては、当たりはソフト目で、乗り心地重視な設定。ある程度踏ん張ると、フロントタイヤから外に逃げてアンダーステア傾向になる安全志向の特性であり納得のセッティング。コーナリング速度を競う車両ではないので正解だ。
また直進安定性はそれなりに確保されているので、直進している限りはさほど不安感はない。今回高速道路は乗らず、横風が強く吹くこともなかったので、高速直進安定性や操縦性はよくわからなかったが、ミニバンの割には大きな不安はなく巡航できそう。
なお電動パワステの特性として、微小舵角でのステアリング操作での不自然な感覚は若干あるのが感じられたが、これは車格相応ということだろう。
・ABSは利かせる機会がなかったのでどう作動するか不明だった。
・ATレバーは、プリウス同様のジョイスティック式。パーキングブレーキは電動ボタン式。作動と解除の動作がどちらか直感的にわからない。スイッチ付属のインジケータを見ればわかるが、覗きこまないとわからないのは嫌。制御が楽だから電動にしたいのはわかるが、非常時のことを考えるとコンベンショナルなレバー式でよいのだがね。
・2列目の後席は、前後間隔は十分あり、大人でも不足は感じない。ただし3列目は狭い。大人なら短距離仕様。普段なら畳んで床に収納しておくのが使いやすいのかもしれない。いざという時だけ引き出して座席として使う補助席という感覚なのかも。
・トランクルームの広さは車格相応だが、3列目座席の畳み方次第。畳めば、ステーションワゴンとして十分な広さ。畳み方も覚えれば複雑ではないのはさすが日本のミニバン。
・燃費は給油する機会がなかったので不明。
総じて、5ナンバーをかなり下回る全長の中で3列乗車のスペース効率を最大化した乗用車として作りこんであることがわかる。道具として悪くないし、外観も非凡なセンスがある。アルファードのような醜い車両が目に入るよりはこういった外観の車両が目に入る方が気分が悪くならないので良い。道具としても手ごろなサイズで、売れている理由が分かった。